MDMAの沢尻エリカに「不起訴」処分も!? - 渡邉裕二
※この記事は2019年11月25日にBLOGOSで公開されたものです
合成麻薬「MDMA」を所持していたとして麻薬取締法違反容疑で警視庁組織対策犯罪5課に逮捕された女優の沢尻エリカ容疑者(33)。このため来年、出演を予定していたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」は降板となり、代わりに9歳若い女優の川口春菜(24)が抜擢されることになった。
12月初旬から再収録を行い、沢尻の出演部分は全てカットされることになったわけだが、沢尻容疑者からしたら、察するところ「何で、私の代役が川口なのよ!」の気分だろう。きっと、取り調べを受けながらもプライドから何からズタズタになっているに違いない。
大河ドラマの制作費は1本1億円以上
「沢尻は、斎藤道山の娘で、織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)を演じていました。収録は6月4日から始まり、10話分まで撮り終わっていたといいます。その中でも、第1話では出ずっぱり。その他の回も含め、どう編集し直しても無理だとなったようです。結局は沢尻の役を変更して最初から撮り直すしかなかった。ただ、撮り直すにしても、セットはすでに取り壊してしまったものもあり、何より共演者については改めてスケジュールを組み直さなければならないなど大変なことです。その部分もNHKにとっては巨額な追加予算になります」(放送記者)。
大河ドラマ1本の制作費は1億数千万円だといわれる。つまり、10本分を再収録するとなると軽く10億円を超えてしまうことになる。
「以前、俳優の小出恵介が17歳の未成年者との飲酒騒動を引き起こし、NHKの主演ドラマだった『神様からひと言~なにわ お客様相談室物語~』をお蔵入りさせたことがありましたが、この時も制作費の賠償問題が話題になりました。言うまでもなくNHKのドラマは受信料で制作されていますので、その責任は追及されることになります。小出の場合は所属していたアミューズが賠償に応じ、その後、事務所と小出との間で話し合うことになりました。
それでも金額は1億円を超えていたはずで、沢尻の場合も同じです。最終的には沢尻が被るにしても、まずは所属するエイベックスが賠償することになるでしょう。大河ドラマというのは制作費が半端ではありません。再編集なら小額で済みますが、今回の場合は実費でも過去にはないほどの巨費になると思います」(プロダクション関係者)。
このほかにもCMへの違約金も発生するだけに、その金額は計り知れない。
「ラブ・ドラッグ」の異名を持つMDMA
沢尻容疑者は「有名人が薬物で逮捕されるたびに私も危ないかも…」と注意していたと供述していたというが、その一方では「自分は大丈夫だろう」とも思っていたようだ。要するに甘く考えていた。薬物捜査には密告もあることを知らなかったのだろうか?
供述によれば、これまでにMDMA以外に大麻や覚醒剤、コカイン、LSDなど、薬物という薬物を総ナメしてきたというから、薬物への依存度は高かったと思われる。それも「日常的にブラジャーの中に薬物を隠し持っていたとも供述しているので、常習性と同時に悪質性も浮き彫りになっています」(芸能記者)。
警視庁組対関係者によると、沢尻容疑者が薬物に手を出したのは10年以上前だというから、2007~08年頃だろうか。丁度、主演映画「クローズド・ノート」が公開され、舞台挨拶での態度が問題となった時期である。当時を知る元女優に聞いた。
「よく六本木のクラブなんかで騒いだりしていましたね。GグループのOさんの仕切りだったのですが、その時に、クラブ内では薬物の噂が出ていたような気がします。H女子学園の子が多かったんですが、とにかく沢尻さんは生意気で有名でしたね。クラブには他にも、タレントのAちゃんやYちゃんなんかもいたと思いますが、いつの間にかYちゃんとは連絡が取れなくなったりして…、ちょっと怖かったことを覚えています」。
その後、09年に沢尻容疑者はハイパーメディアクリエーターの高城剛氏(55)と結婚、さらにスペインに個人会社を設立したりして話題になった。特に、沢尻容疑者が行き来していたスペインでは、イビサ島でのランチキ騒ぎが報じられるなどで、たびたび違法薬物疑惑が取り沙汰されたものだった。
そういったこともあってか、当時所属していたスターダストとは契約が解消され、現在のエイベックと契約を結んだが、それから8年、薬物とは立ち切れなかったことになる。薬物に詳しい関係者に聞いた。
「MDMAを服用していた場合は、まず気分が高揚し開放感に溢れハッピーになる。そして周りにいる人達の全てを愛するような錯覚に陥り、家族というような感覚になるのです。効いている間はこの開放感と溢れる愛情をより強く体感するために踊りまくるという人が多いことから〝ラブドラッグ〟と呼ばれるようになったのです。
ただ、その効果は覚醒剤に比べて弱く、集中力が研ぎ澄まされ万能感に酔いアグレッシブな性格になるという事もない、どちらかと言うと平和的なドラッグの部類に入ります。ただ、沢尻の場合は海外で大麻を使用していたという情報でしたが、そういった点からも、今回、覚醒剤ではなくMDMAだったという点は納得がいきます」。
ちなみに、MDMAの依存性はコカイン程度だといい「暇と金を持て余すセレブらが、大麻同様にパーティードラッグとして使用している事が多い」とも。
…とは言っても、覚醒剤の類似成分が含まれていることから「疲れを知らない」という効果もあり、「踊り過ぎて、体温調整が上手くいかなくなったり、脱水症状を起こして死亡する事もある。それに効果が切れた時は、周りの全ては赤の他人となり、踊り明かしていた人はとんでもない疲労感に襲われてしまう」という。
いずれにしても、人間の身体はこのような急激な変化に対応するようには出来ていないだけに、常用すると自律神経をはじめ、あらゆる所で身体のバランスを崩してしまう可能性は大きいということになるという。
尿検査は「シロ」不起訴処分の可能性も
では、今後の沢尻容疑者はどうなるか?
家宅捜索でMDMAは発見されたものの尿検査の結果は「シロ」。したがって、今後は所持の容疑だけでの起訴となるが、押収された量が0.09グラムと微量なため「不起訴処分」となる可能性が高い。
さらに、弁護団に「無罪請負人」との異名をとる河津博史弁護士らが加わったことも、今後起訴された場合の公判にも影響を与えそうだ。検察にとっても公判をどこまで維持できるかが問題になってくる。
沢尻容疑者はMDMAについて「私のものに間違いはない」と所持を認め、入手の経路も「数週間前にクラブのイベントで知人からもらった」としている。MDMAの場合は「所持」だけでも7年までの懲役となるが、裁判で「MDMAだとは知らなかった」と、これまでの供述を一変してくる可能性だってないわけではない。
その一方で、取り調べの中で「司法取引」をしているとも噂されており、入手ルートを含め沢尻容疑者と薬物との関係性を裏付ける人間関係などを全て話しているともいわれる。「喋りすぎている」なんて情報も出てきているだけに、今後の捜査動向も注目されるところだ。
「間違いなく沢尻と交友の深い業界関係者、女優やタレントは今後、容疑がかけられていくでしょうね。薬物の場合は現行犯逮捕が原則ですが、場合によっては別件で逮捕し、その上で任意で尿検査を行う可能性もあります。おそらく警視庁も検察も、沢尻については起訴するよりドラック・ルートの解明を優先しているかもしれません」(芸能関係者)。
いずれにしても、26日には沢尻が出所する見込みだ。
流れとしては「反省している」「社会的な制裁を十分に受けた」とした上で「不起訴(起訴猶予)」というのが私の見立てである。だが、いくら不起訴だからといって「無罪」というわけではない。逮捕後11日間で語り尽くされた「沢尻エリカ=薬物」のイメージは、今後、どうやっても払拭することは出来ないからだ。
不起訴だからエイベックスも契約を解消することはないだろうが、MDMAに限らず違法薬物は沢尻容疑者のように積み上げた物を全て無くすだけではなく、肉体的にも深刻なダメージを与えるだけに、いかなる場面でも拒否する事を心がけるべきだろう。