【佐藤優の眼光紙背】第6回:小沢一郎民主党代表は説明責任を果たせ - 佐藤優
※この記事は2007年11月06日にBLOGOSで公開されたものです
4日、民主党の小沢一郎代表が突然辞意を表明した。9月12日には安倍晋三総理(当時)がやはり突然辞意を表明し、世間を驚かせた。もういい加減にして欲しいというのが国民の本音と思う。国会議員に選挙で当選することは難しい。その先、内閣総理大臣になることも野党第一党の民主党代表になることも相当難しいはずだ。このようにして、要職についた人は、仮にどんなに辛いことがあっても軽々に職を放り出すようなことはあってはならない。国家と国民の運命が政治家に託されているのだ。与党にせよ、野党にせよ、この程度の責任感や胆力の指導者に国家の命運を委ねることはできない。
今般、小沢氏が辞意を表明した理由が、新聞やテレビ・ラジオの報道では、いまひとつつまびらかでない。自民党と民主党の大連立構想に民主党内で反発があったことが大きな要因のようだが、そんなことは辞任の理由にならない。まず、民主党所属の国会議員総会を行い、そこで大連立の是非について議論すればよい。そこでコンセンサスが得られないならば、臨時党大会を行い、徹底的に議論した上で、それでも党としての見解をまとめることができないような状況が生じた場合にだけ、小沢氏に辞意を表明する権利が生まれれる。きちんとした説明責任を果たさずに要職にある人の辞職を認める政治文化を許容してはならない。
それ以外、唯一、辞意表明が認められるのは、健康上の理由であるが、その場合、「あなたはなぜ健康不安があるのに要職を引き受けたのか。見通しが甘かったのではないか」という批判に対して答える義務がある(これは小沢氏ではなく、安倍前総理が果たさなくてはならない義務だ)。あえて厳しい物言いをするが、「健康管理も実力のうち」というのが国際スタンダードでの「政治ゲームのルール」だからだ。
さて、筆者も、そして、この記事の多くの読者も民主党員ではないと思う。本来、政党は有志が集まった結社で、その外部の人々から、内部の人事や方針について云々されるいわれはない。しかし、自民党、民主党、公明党、社民党は、われわれの税金から政党助成金を受けている。国民の税金を用いている以上、説明責任を果たすのは当然のことと思う。国家予算からカネだけ貰って、納税者に対する説明責任は果たさないなどということが認められるはずがない。(2007年11月5日脱稿)
プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。
眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。