コロナ禍で変化する夫婦の関係(写真:【Tig.】Tokyo image groups/PIXTA)

これまでの生活様式を一変させた、新型コロナウイルスの感染拡大。不要不急の外出が制限され、ステイホームが推奨される世の中で、家族と過ごす時間は大幅に増加した人が多いだろう。家族と密に過ごす「新しい日常」のなかで、企業のテレワーク導入や学校の臨時休校措置などの変化にも、柔軟な対応が求められた。

そのなかで夫婦関係はどう変わり、配偶者にどんな感情を抱くようになったのか。今回はリクルートブライダル総研の「夫婦関係調査2021」をもとに、コロナ禍での生活が夫婦関係にもたらした影響を分析していきたい。

全体の約7割は満足だが、年代別に大きな差も

全体的な夫婦関係の満足度をみると、20代から60代までの約7割弱(67.2%)の夫婦が満足と回答している。この結果は4年前と同水準で、大きな変化は見られない。これまでと同じく、夫婦生活を継続する多くの人たちは、夫婦関係に我慢しているのではなく、ある程度満足していることがうかがえる。


しかし、年代別では差が生まれた。満足度は20代の71.7%から徐々に下がり、40代で59.1%と最も低くなる。そこからまた上昇する傾向にあり、60代には72.2%と最も高くなった。V字型のカーブを描くように推移したのだ。加えて、妻を年代別でみると、40代(62.2%)と50代(60.3%)の低さが目立つ。


この背景をたどると、40〜50代で抱える負担が満足度に影響することが見えてくる。40〜50代は仕事面での責任感が強まる中で、家事・育児面での負担も感じやすい世代だ。その後、年代が上がるにつれて、仕事や育児などからは解放され、夫婦2人の時間を確保しやすくなる。その結果、負担感により40〜50代で低下した満足感は、60代に向かって上昇すると考えられる。

コロナ禍での満足度を左右する、専業主婦の負担感

では、2020年から続くコロナ渦は、夫婦関係の満足度にどんな影響を与えたのだろうか。全体でみると、コロナ渦によって「満足度が上がった」と感じる人は、下がった人の10.1%よりも、10.7%と0.6ポイントとわずかながら高くなった。

しかし、夫婦の就業形態ごとにみると、満足度には差があった。共働き世帯では夫と妻の満足度が上がる一方、専業主婦世帯で夫は上がり、妻は下がる傾向がみられる。

この結果になった理由は、コロナ禍で勤務形態が変化したからだと考えられる。共働き世帯はテレワークや時差出勤などの普及により、自宅で一緒に過ごす時間が増えたはずだ。コミュニケーションの量や質が高まったり、家事育児との両立もより効率的に行えるようになったりし、満足度が上がったのではないだろうか。


(注)満足度が「上がった」「下がった」の差は、小数点第2位以下を含めた数値で算出しているため、数値にずれが生じる場合がある。兼業主婦は、家事・育児などの主婦業に加え、パートタイムなどで働いている人のこと

専業主婦世帯で溜まるストレス

一方、専業主婦世帯では、夫の在宅時間が増えることで、妻は負担を感じやすくなる。「コロナ感染拡大の影響による変化」について尋ねたところ、専業主婦世帯の妻は「家事・育児の時間」「心理的ストレス」「身体的疲労感」の増加割合が高い。

一人で過ごす時間が減るなかで、増加した家事・育児をこなすストレスが溜まり、身体的にも疲れることで満足度が下がったと考えられる。さらに、共働き世帯は、夫・妻共に相手への理解度や納得度の項目が上がる人の割合が多いのに対し、専業主婦世帯では、妻の家事分担に対する納得度、および育児分担に対する納得度は下がる人の割合が多く、配偶者への好感度も下がるという結果もでている。

コロナ禍でも満足度が上がった夫婦は普段、どんな生活(行動)をしているのだろうか。満足度が「上がった人」と「下がった人」の行動を比較し、考察していきたい。

夫も妻も満足度が上がった人のほうが、ほぼ毎日、「1時間以上の夫婦での会話」や「配偶者に感謝の気持ちを伝える」ことをしている傾向がみられた。


また、満足度が上がった妻のほうが、ほぼ毎日、「配偶者は家事・育児をする」や「夫婦二人で同じ部屋で一緒に寝る」という頻度が高いこともわかる。これらは満足度が下がる傾向にあった専業主婦世帯でも同じ結果になった。



同じ部屋で寝るという夫婦は?

背景には、日常的なコミュニケーションの重要性がある。コロナ禍では就業形態にかかわらず、家族以外の他者と接する機会が減り、家族と顔を合わせる機会が増えるはずだ。不安や変化が多い世の中で、ストレスが溜まりやすくなった人も少なくないだろう。

その状況下で夫婦間の会話を増やしたり、話し合って家事育児を分担したりするなどして、日常的にコミュニケーションの量を増やしていく。加えて、ポジティブな感情を互いにアウトプットし合うことが、よりよい夫婦関係の構築と満足度の向上に関係している。

もちろん、関係構築ができている夫婦だから、そのようなコミュニケーションができるといった見方もできるが、関係構築とコミュニケーションの関係性は見えており、まずはそれを意識してみてもいいだろう。

コロナ禍が日常になりつつある今、置かれた立場によって夫婦関係の満足度は変わる。しかし、満足度が下がりやすい状況でも、日頃のコミュニケーションを大切にして、価値観をすり合わせる努力をすれば、よりより夫婦関係を維持しやすくなるはずだ。夫婦の時間が増えるwithコロナの時代、相手と向き合い理解し合うことで、夫婦関係はより強いものとなるだろう。

(リクルートブライダル総研)