カシオのワープロで採用された小型ディスク「マイクロディスクシート」:スイートメモリーズ File084

[名称] マイクロディスクシート(MICRO DISK SHEET(SD-1))
[種類] 磁気ディスク
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 約66mm(実測)
[容量] A4 約26ページ、約26000文字(両面、52KB相当)
[登場年] 1985年頃〜

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「マイクロディスクシート」(SD-1)は、カシオ計算機が発売したワープロ機用のフロッピーディスク(FD)型メディア。弧を描いた2つのヘッドウィンドウがあり、中の磁気ディスクが目視できるというのが特徴です。

このディスクが採用されたのは、「カシオワード HW-120」というモデルから。これは、低価格なパーソナル日本語ワードプロセッサー「カシオワード HW-100」に、ディスクドライブを内蔵したモデルとなります。

このHW-100は6万円を切る価格で登場。黒だけでなく、赤や白のカラーバリエーションがあるほか、ACアダプター/乾電池の2電源方式に対応しているなど、一般家庭へのワープロ普及の先駆けとなったモデルです。

後継機にはドライブ内蔵モデルはなかったようで、専用オプションとして外付けドライブ「MD-10」が用意されました。

残念ながら、マイクロディスクシートの詳細は不明。ワープロのマニュアルに書かれていた情報としては、名称「マイクロディスクシート(SD-1)」と、外部記憶「片面につき A4約13ページ(約13000文字)」ということくらいです。

ちなみにHW-120はマイクロディスクシート以外にRAMパックも利用可能。この8KBモデルが「A4 約4ページ(約4000文字)」となっていたことから、マイクロディスクシートの容量を「片面 26KB相当、両面 52KB相当」と推測しています。実際は片面32KBじゃないかな、などと思っていますが。

ということで、実物を見ていきましょう。

中央のハブはプラスチック製。5.25インチFDのようにフィルムそのままのものは、コストこそ安いものの、中央でキャッチするのが難しい、強度が弱いといった問題があります。その点ハブ方式はしっかりと固定できるというメリットがあります。

ドライブは片面ヘッドで、裏返すことで両面使えるというのはクイックディスクに似ています。このヘッド、よくあるFDドライブのように中央で前後に動くというものではなく、HDDのように、斜めの位置から弧状に移動するというものが採用されています。そのため、ヘッドウィンドウも弧状なのでしょう。

片面からヘッドを押し当てるだけではディスクが反ってしまい、安定した読み書きができません。そのためヘッドの逆側には押さえとなるパッドが装備されています。このパッドやヘッドの摩擦はそこそこ大きいようで、ディスク面には擦れ跡が結構残っていました。

光を当てる角度を変えると、一目瞭然ですね。

挿入方向の左右にある穴は、ライトプロテクト用のもの。挿入方向を下にして右側の穴にシールを貼ると、書き込み禁止にできます。

ドライブへの挿入は全て手動。EJECTボタンを押すか、凹み部分に指を突っ込んでドライブを引き上げ、マイクロディスクシートを挿入。再び指で上から押して閉じると準備完了です。

なお、ヘッドウィンドウにはシャッターがないので、保管時はエンベロープに入れるようになっていました。

ワープロからの文書保存は、「外部記憶」機能を使用。この機能を選ぶと「保存/呼出/消去/初期化」の操作ができます。試しに適当な文書を作成し、保存してみたところ、「マイクロディスク処理中」という表示になって保存が可能でした。もちろん呼出も成功。35年以上前の機器がメンテもなしに動くところを見ると、ちょっと感動しますね。

ちなみにこれは、「HW-700」というモデルに外付けドライブ「MD-10」を接続して試したところです。

ところで1985年といえば、その後主流となった3.5インチFDや、3インチと小型のコンパクトフロッピー、そして2.8インチのクイックディスクなどが登場していた頃。通常であれば、このうちのどれかを採用する……となりそうなのに、採用例の少ないマイナーなものが選ばれました。

これは、低価格路線のワープロ機にとって、3.5インチFDとコンパクトフロッピーは当時のドライブが高価だったというのが大きいでしょう。その点クイックディスクは、ドライブも廉価になるよう考えられていたものだけに、候補としてはピッタリだと思うのですが、採用されませんでした。クイックディスクが1984年発表と比較的新しかったこと、またMZ-1500に標準装備され、PC向けという印象があったことから、ドライブの価格が思ったほど安くならなかったのではないかと考えられます。

1986年以降であれば、ファミコン用のディスクシステムで採用された後ですから、ドライブもメディアも価格が下がったと思いますが……タイミングですね。

ドライブを分解してみると、基板に「TEC」のロゴがあり、東京電気製だと判明しました。型番は「MC-32CS0」(MC-32CSOかも)。ただし、このドライブの詳細は分からないままです。他に採用されている製品はないかと探したところ、スウェーデンのFACIT社がタイプライター(Facit 8121)の外付けドライブ用メディアとして採用していましたが、結局、こちらも詳細は不明でした。

ワープロ機の記録メディアは、このマイクロディスクシートのほか、ソニーの「2inch Data Disk」(PD-1)、独自のメモリーカードなどが登場しています。しかし、3.5インチFDドライブの価格が下がるとワープロ機でも採用モデルが増え、やがて3.5インチFDが主流になっていきました。

連載:スイートメモリーズ

参考:

カシオの歴史, カシオ計算機
カシオワードHW-100・HW-120取扱説明書
@BinaryDinosaurs, Twitter