アメリカのスタートアップ企業「VOX Aircraft」の機体案は、これまでの航空機とは一線を画すデザインを採用。4つのプロペラが、なんと主翼の付け根側に埋め込まれているのです。なぜこのような機構になっているのでしょうか。

エコ航空機開発競争のなかで誕生

 CO2(二酸化炭素)を排出しない「脱炭素社会」に向け、航空分野では多くの会社が、従来機とはさまざまな面で異なる新型航空機の開発案を打ち出しています。そのうちのひとつ、アメリカのスタートアップ企業「VOX Aircraft」の機体案は、これまでの航空機とは一線を画すデザインを採用。――4つのプロペラが、なんと主翼の付け根側に左右2基づつ埋め込まれているのです。


VOX Aircraft「M400」コンセプト案(画像:VOX Aircraftの公式サイトより)。

「VOX Aircraft」の機体案は最大9人を乗せることができます。最大巡航速度は時速403マイル(時速約650km)で、3万5000ft(約1万670m)まで上昇可能、2540マイル(約4085km)の航続距離を持つとのこと。

 同機はいわゆるヘリのように垂直離着陸も、飛行機のように高速巡航もできる「VTOL機」で、電気で駆動します。推進に使用されるプロペラは計5基で、前進する際には胴体後部に備えられた1基の「プッシャープロペラ」を使用。そして、垂直離着陸時には、翼に埋められた4基のプロペラを使用し上昇・降下します。

 ただ、上昇降下に使うプロペラを、なぜわざわざ“翼に埋め込む”必要があるのでしょうか。

なぜプロペラ”翼に埋め込む”の?

 VOX Aircraftの機体案における最大の特徴である、エンジンと一体になった主翼は「ストレーキ」と呼称され、特許も取得しています。この機構の設置目的をVOX Aircraftは「狭いところなどへ着陸する際に、ローターがまわりの物体などにぶつかるトラブル『ローターストライク』が発生するリスクをなくすことができる」とアピールします。

 同社では2020年に、実機の10分の1サイズのテスト機を用いたテストフライトに成功し、開発が進んでいる最中です。

 なお、この新型機コンセプトはいわゆるヘリコプターの代替手段として期待されていると見られます。同社は「従来のヘリコプターと比べて速度は2〜3倍速く、最大で50〜70%燃費がよく、航続距離は3倍以上」と、ヘリコプターに対する優位性をアピールしているためです。