ユーザーの好みに合わせて人工知能(AI)が二次元の美少女イラストを自動生成してくれる「Waifu Labs」は、美麗なイラストを作成できるということでモバイルゲームのArrowmancerのキャラクターイラストに採用されるほど。そんなWaifu Labsで自動生成されたイラストの数が2000万枚を超えたということで、開発者のルーウェン・リウ氏が「Waifu Labsがどのように美少女イラストを作成してくれるのか?」について自社ブログの中で解説しています。

Waifu Labs - Welcome to Waifu Labs v2: How do AIs Create?

https://waifulabs.com/blog/ai-creativity

Waifu Labsは2019年にスタートした無料サービスで、実際にどんな美少女イラストを作成できるのかについては、以下の記事を読めばよくわかります。

AIが自分好みのアニメ美少女を自動生成してくれる「Waifu Labs」で「俺の嫁」を作ってみた - GIGAZINE



Waifu LabsのAIは敵対的生成ネットワーク(GANs)と呼ばれる教師なし学習の一種を採用しています。Waifu Labsの場合、「ジェネレーター」と呼ばれる絵を描く方法を学ぶAIと、「ディスクリミネーター」と呼ばれる「AIのイラスト」と「人間のイラスト」を区別する方法を学ぶAIの2つを互いに競合させることで、より精度の高いイラストを作成できるよう学習していきます。

この2つのAIに競合させる際の興味深い点として、リウ氏は「面白いのは、人間のライバル同士のように、同じ速度でAIが成長することが必須であるということです。片方のAIが他方を圧倒してしまうと、どちらのAIも学習を止めてしまいます」と語っています。

以下のイラストはAIが学習過程で出力したもので、ステップを重ねる(学習時間が長くなる)につれ、出力されるものがイラストとなっていくことがよくわかります。

ステップ0:最初、AIはイラストが何かを全く理解していない状態であるため、何の学習もしていないAIが出力するイラストはノイズそのもの。



ステップ1024:学習時間が増えるにつれて徐々にイラストのようなものが出力されるようになり、この辺りから顔のようなものが見えてきます。



ステップ4096:アニメイラストのような髪の毛が出現。



ステップ13516:人間のようなイラストを描けるようになるのはこの辺りのタイミング。



ステップ23961:耳や肩などの表現も可能に。



ステップ40564:全体的にぼんやりしていたイラストの各パーツがより精細に描かれるようになり、「この辺りからイラストに『質感』と『風格』が出てくる」とリウ氏。



ステップ43636:ほとんど完成していたように思えたAIでも、突如学習結果が不安定になり、以下のような恐怖のイラストが出力されることもあるそうです。



ステップ50000:完成!



Waifu LabsのAIの場合、このレベルのイラストを出力できるようになるまで約2週間かかったそうです。

興味深いのは、この時点でAIは単にイラストの見た目を模倣して学習するのではなく、オリジナルの絵を構成するための「形状」や「質感」といった特徴も学習しているという点です。人間のイラストレーターにとっても、イラストの「形状」と「質感」はとても重要な要素であり、意識的な思考の領域を超えて、直感の中で独自の「形状」や「質感」を表現している人も多いかと思います。これらの要素をリウ氏は「Mental Representation(心的表現)」と呼び、「イラストレーターが生涯を通じた実践と人生経験の積み重ねにより成熟させていくもの」と表現しています。

AIの場合、学習を終了した時点でこの「心的表現」が成長しなくなります。そのため、AIがどのような「心的表現」を形成したかを直接確認することも可能です。リウ氏らWaifu Labsの開発チームは、AIが生成した「心的表現」を決定するステータスを「Latent space(潜在機能空間)」と呼んでいます。

この「潜在機能空間」を利用することで、同じキャラクターを別のポーズで表現したり……



同じキャラクターの同じポーズを別のタッチで表現したりすることも可能。



また、「潜在機能空間」の中には奇妙なものも存在しており、以下のような巨大な頭のイラストを生成してしまうものもあるそうです。なお、この「潜在機能空間」はWaifu Labsのスタッフから親しみを込めて「ビッグヘッド」と呼ばれています。



AIが生成する「潜在機能空間」から魅力的なキャラクターを生成できるステータスを特定するために、Waifu Labsはポーズ・色・ディテールなどを制御する数値を抽出し、ユーザーが「自分好みのイラストを生成」できるようなインターフェースを作成。これにより、Waifu Labsはユーザーにとっての「俺の嫁」を作成できるようになったわけ。

なお、AIが出力する画像のクオリティを評価する指標としてFIDというものがありますが、このFIDではWaifu Labsのニーズを十分に満たすことはできていなかったとのこと。そこで、Waifu Labsは独自の評価基準を作成し、自身のAIを評価していると記しています。