羽生結弦「腹をくくってここまで来ました」。全日本公式練習で4回転アクセルを着氷、他のジャンプも驚くべき進化を見せた
12月23日、全日本フィギュアの公式練習に臨む羽生結弦
全日本フィギュアスケート選手権、12月22日の公式練習を欠場していた羽生結弦。23日の昼に行なわれた公式練習では、想像以上に仕上がっている姿を見せた。
曲かけ練習はフリー『天と地と』。冒頭のジャンプはトリプルアクセルにし、続いて4回転サルコウを跳んで、トリプルアクセル+2回転ループ、そして3回転フリップへとつなぐ。だが、軽めにステップシークエンスをなぞって滑ったあと4回転トーループ+3回転トーループを跳び、滑りを止めた。「じつは提出した音源を間違えていたので、途中で止めました」と羽生は苦笑する。
【「今日やるべきことはできた」】
そして練習の終盤には、リンクを縦に滑ってタイミングが合わず跳び上がるだけにしていたアクセルを、跳ぶ位置を反対に移すと、4回転アクセルして手をつきながらも着氷した。
2019年のグランプリ(GP)ファイナルや、昨季の世界国別対抗戦とは違い、スピードを抑えた4回転アクセル。回転不足で両足着氷ではあったが、転倒することなく立つ姿はあまり想像をしていなかったものだ。それを4回繰り返して転倒はなし。
公式練習では4回転アクセルを着氷した
「自分のなかでは軸作りが一番大事だと思っていたので、回転をそんなにかけず、今日やるべきことをやったという感じです。軸を取れれば回転はおのずと速くなる。戦略的にはいろいろありますが、今日この氷でしっかり軸を作るという意味では、前よりスピードを落としています。今日の4回転アクセルは両足でしっかり軸を作りながら降りるというような感じだったのですが、今日は回転をかける日ではなかったので、あれでオッケーだなと思っています」
こう話す羽生によれば、これまでの練習では、全力で回した時にはqマーク(4分の1回転不足)がつくくらいで転倒している状態。まだクリーンな成功はないという。そして、そんな4回転アクセルと北京五輪への思いをこう話した。
「正直言って、おととい(12月21日)の段階では4回転アクセルが決まらなかったら、もう北京五輪で頑張るしかないのかなと思ってやっていました。ただ、自分のなかでは『このくらいのアクセルでいいのかな』という思いもあるし、クリーンでなくてGOE(出来ばえ点)で加点がつかないかもしれないが、形としては4回転アクセルになっているし、この2年間、かなり練習して向き合ってきたなかで、『このくらいならもういいんじゃないかな』という気持ちもありました。
でも、最後の練習の時にギリギリまで踏ん張って、1時間半くらいアクセルをずっと跳んだうえでダメだった時に、いろんな気持ちでグチャグチャになりながらも『僕だけのジャンプじゃないな』と思って。言い出したのは僕だけど、皆さんが『僕だけしかできない』と思ってくださるなら、それをまっとうするのが僕の使命かなと思って。まだこの全日本で(4回転アクセルを)降りることをあきらめていないけど、その延長線上に北京五輪はあるかもしれないと、腹をくくってここまで来ました」
羽生は、さっぱりした表情でそう話した。
【驚くべきジャンプの進化】
右足首の故障は、エッジを研磨したばかりの靴で練習中に普通なら抜けるはずが氷に絡まったために起きたアクシデントだったという。できる治療に努めたと言うとおり、不安を感じさせない状態に戻していた。さらにトリプルアクセルはこれまでより回転のスピード感が増して力も入れないで簡単に跳んでいるように見えた。4回転サルコウと4回転トーループもここまで軽々と跳べるのかと思ってしまうほど、何の無理もなく跳んでいた。
昨季のオフは、4回転アクセルに挑むことでさまざまな影響が出て、他のジャンプが跳べなくなった時期もあったと話していた。だが、この公式練習で感じさせたのは、4回転アクセルの完成が近づいたなかで、他のジャンプもさらに進化してきているのではないかということだ。4回転アクセルの可能性とともに、他のジャンプの進化にも驚く公式練習だった。