秋の醍醐味、イモ、栗、カボチャ。まるごと調理で贅沢な一品に<暮らしっく>
作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。
今回は、イモ、栗、カボチャの3つの秋の味覚についてつづってくれました。
寒くて、10月だというのにもう赤い半纏(はんてん)を出してしまった。そしてもうすぐ、こたつに潜ることになるだろう。こんなことで冬を超えられるのだろうか。妹が新ショウガを送ってくれたので葛湯にして飲むのが毎朝の至福だ。なんだか祖母を思い出す生活。いやいや、物心ついてから愛媛ではずっとこうだったじゃないか。
栗ご飯を炊くのが毎年の秋の楽しみだけど、せっせと皮を剥き続ける作業は修行だなあと思う。食べると一口だが、一口の美味しいを求めて皮をむく時間からレースがはじまっている。手間をかけた分、噛み締めて食べる。ちなみに、家は塩少々と乾燥昆布を何切れか入れるだけで、他の味付けはしない。栗だけの旨味を感じるのが一番の贅沢だなあと思う。
栗と言えば、栗カボチャ。普通のカボチャよりも小さい手のひらサイズで、芋や栗のようなほっくり感がたまらない。数年前、北海道の美瑛のレストランで、まるごとオーブンで焼いた栗カボチャが出てきた。そのおいしいかったこと。本当に栗みたいにほくほくして、素材そのものの美味しさがぎゅっと濃縮していた。忘れられない味というのは、意外とシンプルなものかもしれないな。
家に、栗カボチャがあったので、あのときの焼きカボチャをアレンジしようと考えてみる。お、冷蔵庫に丁度モッツァレラチーズもあるなあ。牛乳もちょっとあるなあ。ふむ、これは合うかもなあ。いや、北国のベストトリオに違いない。
まず、レンジにまるごと栗カボチャを入れて5分ほど温め、頭の部分を切る。種を取り出しそこにモッツアレラチーズを詰めて、塩少々、牛乳20〜30ccほどを真ん中に入れる。さっき切った頭の部分で蓋をして、あとは200℃のオーブンに入れて30〜40分焼けば完成!
緑色が深くなって出てきたカボチャのへたの部分を持ち上げてみる。湯気がふんわり立ち上って、チーズが理想通りにとろけている。オレンジ色と白のコントラストの美しさよ。ほろほろになったカボチャの内側をスプーンで壊し、混ぜながら口に運ぶ。
うわわわ。なんじゃ、この優しい美味しさは!
やっぱり、チーズも牛乳もカボチャに合わないはずないねえ。スプーンで混ぜながら食べると、パンプキンスープのよう。全てが主張しすぎないからこそ成立する黄金コンビ。
あ、もしかして31日ってハロウィンだっけ! これはハロウィンパーティの一品にもいいかもしれないねえ。大きなカボチャだと、丸のまま焼くのも一苦労だけど、栗カボチャは比較的簡単に火が通るので、お試しあれ。
栗、カボチャ、とくると、お次はサツマイモ。サツマイモは2つに比べると地味に思えるかもしれないが、いえいえ。負けず劣らず、魅惑の食材だ。
栗ご飯は面倒だなという方におすすめなのが、サツマイモご飯。これは昔から我が家の秋の定番料理です。サイコロ状にサツマイモを切りまして、ご飯と一緒に炊くだけ! 栗ご飯同様、塩と、乾燥昆布をハサミで切って少量入れ、お水もいつもの分量で大丈夫。
ゴマ塩をふると、またまた引き立つ。
どんなサツマイモも美味しいけれど、私は徳島に住んでいたこともあって、鳴門金時のクールな甘さがサツマイモご飯にはよく合うなあと思っている。
あとは、なんといっても焼きイモだ。ストーブ鍋(フライパン等でもOK)に半分に切ったサツマイモを皮ごと入れて、水を30ccほど入れ蓋をして中火で蒸し焼きにする。時々、芋の焼き面を変え、水がなくなったら少し足しながら、20分ほどで、さいばしを刺して通れば蒸し焼きイモの完成だ!
旬の食材を食べていれば、体もしゃんとする。寒い寒いと思って縮こまっていた体が内側から温められて力が湧いてくるのを感じる。やっぱり体は食べ物でできているんだな、元気の源は食だなと実感させられる冬のはじまり。
1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。最新刊で初の小説集『ぐるり
』(筑摩書房)が発売。旅エッセイ集『旅を栖とす
』(KADOKAWA)ほか、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』
(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』
(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」
(ちくま文庫)、など。翻訳絵本「おかあさんはね」
(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ
今回は、イモ、栗、カボチャの3つの秋の味覚についてつづってくれました。
第57回「イモ、栗、カボチャ」
●栗ご飯は毎年の楽しみ
寒くて、10月だというのにもう赤い半纏(はんてん)を出してしまった。そしてもうすぐ、こたつに潜ることになるだろう。こんなことで冬を超えられるのだろうか。妹が新ショウガを送ってくれたので葛湯にして飲むのが毎朝の至福だ。なんだか祖母を思い出す生活。いやいや、物心ついてから愛媛ではずっとこうだったじゃないか。
栗ご飯を炊くのが毎年の秋の楽しみだけど、せっせと皮を剥き続ける作業は修行だなあと思う。食べると一口だが、一口の美味しいを求めて皮をむく時間からレースがはじまっている。手間をかけた分、噛み締めて食べる。ちなみに、家は塩少々と乾燥昆布を何切れか入れるだけで、他の味付けはしない。栗だけの旨味を感じるのが一番の贅沢だなあと思う。
●「栗カボチャ」はまるごと調理にピッタリ!
栗と言えば、栗カボチャ。普通のカボチャよりも小さい手のひらサイズで、芋や栗のようなほっくり感がたまらない。数年前、北海道の美瑛のレストランで、まるごとオーブンで焼いた栗カボチャが出てきた。そのおいしいかったこと。本当に栗みたいにほくほくして、素材そのものの美味しさがぎゅっと濃縮していた。忘れられない味というのは、意外とシンプルなものかもしれないな。
家に、栗カボチャがあったので、あのときの焼きカボチャをアレンジしようと考えてみる。お、冷蔵庫に丁度モッツァレラチーズもあるなあ。牛乳もちょっとあるなあ。ふむ、これは合うかもなあ。いや、北国のベストトリオに違いない。
まず、レンジにまるごと栗カボチャを入れて5分ほど温め、頭の部分を切る。種を取り出しそこにモッツアレラチーズを詰めて、塩少々、牛乳20〜30ccほどを真ん中に入れる。さっき切った頭の部分で蓋をして、あとは200℃のオーブンに入れて30〜40分焼けば完成!
緑色が深くなって出てきたカボチャのへたの部分を持ち上げてみる。湯気がふんわり立ち上って、チーズが理想通りにとろけている。オレンジ色と白のコントラストの美しさよ。ほろほろになったカボチャの内側をスプーンで壊し、混ぜながら口に運ぶ。
うわわわ。なんじゃ、この優しい美味しさは!
やっぱり、チーズも牛乳もカボチャに合わないはずないねえ。スプーンで混ぜながら食べると、パンプキンスープのよう。全てが主張しすぎないからこそ成立する黄金コンビ。
あ、もしかして31日ってハロウィンだっけ! これはハロウィンパーティの一品にもいいかもしれないねえ。大きなカボチャだと、丸のまま焼くのも一苦労だけど、栗カボチャは比較的簡単に火が通るので、お試しあれ。
●サツマイモもまた魅力的な食材!
栗、カボチャ、とくると、お次はサツマイモ。サツマイモは2つに比べると地味に思えるかもしれないが、いえいえ。負けず劣らず、魅惑の食材だ。
栗ご飯は面倒だなという方におすすめなのが、サツマイモご飯。これは昔から我が家の秋の定番料理です。サイコロ状にサツマイモを切りまして、ご飯と一緒に炊くだけ! 栗ご飯同様、塩と、乾燥昆布をハサミで切って少量入れ、お水もいつもの分量で大丈夫。
ゴマ塩をふると、またまた引き立つ。
どんなサツマイモも美味しいけれど、私は徳島に住んでいたこともあって、鳴門金時のクールな甘さがサツマイモご飯にはよく合うなあと思っている。
あとは、なんといっても焼きイモだ。ストーブ鍋(フライパン等でもOK)に半分に切ったサツマイモを皮ごと入れて、水を30ccほど入れ蓋をして中火で蒸し焼きにする。時々、芋の焼き面を変え、水がなくなったら少し足しながら、20分ほどで、さいばしを刺して通れば蒸し焼きイモの完成だ!
旬の食材を食べていれば、体もしゃんとする。寒い寒いと思って縮こまっていた体が内側から温められて力が湧いてくるのを感じる。やっぱり体は食べ物でできているんだな、元気の源は食だなと実感させられる冬のはじまり。
【高橋久美子さん】
1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。最新刊で初の小説集『ぐるり
』(筑摩書房)が発売。旅エッセイ集『旅を栖とす
』(KADOKAWA)ほか、詩画集『今夜 凶暴だから わたし』
(ちいさいミシマ社)、絵本『あしたが きらいな うさぎ』
(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集「いっぴき」
(ちくま文庫)、など。翻訳絵本「おかあさんはね」
(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:んふふのふ