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「おいしいのに、安い」と、口コミで人気が広がり、全国各地に多くのファンを持つのが山梨県甲府市に拠点を持つ食品メーカーのシャトレーゼ。同社で販売されるケーキやアイス、和菓子の数々は、テレビをはじめとした多数のメディアでも取り上げられ、話題を呼んでいます。


「おいしいのに、安い」と人気のシャトレーゼの秘密とは?

そんなシャトレーゼの不思議といえば、高クオリティなスイーツなのに、価格が通常相場より2〜3割程度安い点。

シャトレーゼのおいしさと安さの秘密に迫る


今回は、同社の広報室・室長の中島史郎さんと原令子さんに、シャトレーゼの創業の歴史から、そのおいしさや安さの秘密を紐解いてもらいました。

●じつは和菓子屋がスタートのシャトレーゼ



アイスや生ケーキから焼き菓子、和菓子まで、幅広いスイーツを扱う、現在のシャトレーゼ。しかし、その創業は、昭和29年。山梨県甲府市にできた「甘太郎」という焼き菓子屋から始まったそうです。


「『甘太郎』は、今川焼き風の焼き菓子を販売するお店で、山梨や長野地域に10店舗ほどチェーン展開していたようです。その頃から、北海道産の小豆や、厳選した砂糖をはじめ、素材へのこだわりが非常に強く、『多くの人においしいものをお手頃な価格でお届けしたい』というスタンスを取っていたようです」(原さん)

和菓子屋から始まったシャトレーゼですが、アイスを販売するようになったのはその10年後。和菓子からアイスや洋菓子を売るようになった理由は、「夏枯れ」にありました。


当時販売していた「10円シュークリーム」

「現在のように冷房がある時代ではなかったので、夏場は温かいお菓子がなかなか売れなかったんですね。そこで、『夏でも売れる商品を』と、冷たくて甘いアイスクリームの製造が始まりました。アイス業界に参入して、衛生管理基準を始めとする乳製品を扱うノウハウが蓄えられたことで、通年いつでも人気のあるシュークリームなどのチルド商品も製造し『シャトレーゼ』という社名で販売を始めたんです」(中島さん)

●社員たちが草摘みまで実施?素材への強いこだわり



創業以来、「よい素材を使って、おいしいものをつくる」というスタンスを持ち続けているというシャトレーゼ。その素材へのこだわりは、現在でも衰えるところを知りません。

「創業期の『甘太郎』の時代も、『小豆はこれじゃないとダメ』『砂糖はこれじゃないとダメ』などという厳しい規定があったからでしょうか。今でも、素材に対するこだわりは、非常に強いですね。なかでも、とくにこだわっている素材は、おいしい洋菓子をつくるのには欠かせない牛乳、卵、小麦粉です」(原さん)


牛乳に関しては、信州の野辺山にある牧場と契約して、毎朝生乳を仕入れ、自分たちで低温殺菌して、牛乳に加工。卵は、山梨県近隣で契約をしている養鶏所から毎朝仕入れて、自分たちで割って中身を取り出し、新鮮なうちにお菓子に使用しています。また、小麦粉は、アメリカやカナダ、オーストラリアなどから厳選した小麦粉だけを輸入してつくられているそうです。


「幸いなことに、シャトレーゼの工場がある山梨県は、自然に恵まれていて、すばらしい生産者さんが近くに多い土地です。とくに、牛乳と卵に関しては、これだけ鮮度のよいものを自社で毎朝手に入れて、加工して使用するというのは、ほかのお菓子メーカーさんにはなかなか難しいかもしれません。そのほか、人気の“草餅”の材料となる『天然よもぎ』も毎年時期になると、山梨県・長野県の高冷地で社員たちが手摘みして収穫しています」(中島さん)

シャトレーゼの社員たちが、自らの目で確かめ、ひとつひとつ丁寧に摘み取られた大量の天然よもぎは、その後、冷凍され、年間通じて「草餅」の材料として使用されているのだとか。これほどまでに手間を惜しまず素材にこだわっているのであれば、高品質なスイーツが生まれるのも納得です。

●シャトレーゼの商品は、なぜ相場より2〜3割は安いのか



しかし、ここで不思議なのが、その安さ。ここまで素材にこだわり、高品質なスイーツを生み出しているのにも関わらず、なぜ価格が相場より2〜3割安く抑えられているのでしょうか?

「それは、『工場直売』というシステムのおかげです。仕入れから製造、配送、販売までをすべて自分たちでコントロールすることで、中間コストをカットし、そこで浮いた費用を、お求めやすい価格や品質アップなどのかたちでお客様に還元しています。だから素材のレベルを上げても、他社のメーカーさんよりも安い価格でお客様にご提供できるんです」(中島さん)

また、低価格を実現できる大きな要因のひとつは、「宣伝広告をしない」という点も大きく関わっているのだとか。

「シャトレーゼでは、『愚直においしいものをつくり続けていけば、きっとお客様は評価してくださるだろう』という信念があります。だからこそ、宣伝広告に使う分のお金を使って原材料の質を上げるなどして、商品のクオリティを上げるようにしています」(原さん)

●SNSで広がった認知度。おいしさをより多くの人へ



宣伝費をかけないという戦略スタイルがゆえに、10年前くらいまでのシャトレーゼは「郊外にあり、店舗数も少ない、知る人ぞ知る店」という存在でした。

しかし、機運が変わったのは、SNSなどが登場しはじめた十数年前。シャトレーゼの商品を食べたユーザーたちから、「『シャトレーゼ』という安くておいしい店がある」という口コミがネットを介して広がっていき、店舗が少ないエリアでも、認知度がどんどん上がっていったのだそうです。


大人気バタどらをはじめ、洋菓子から和菓子。糖質カットシリーズなど幅広いラインナップを展開

「フランチャイズシステムを導入しているので、『お店をやりたい』という店主さんが増えないと、店舗自体は増えることはありません。でも、近年は認知度が広まったおかげで、『シャトレーゼの店舗を運営したい』と手を上げてくださる方も増えて。その結果、また新しい土地でシャトレーゼの味を知ってくださるお客様が増え、口コミが広がり、さらに認知度が上がる…という良い循環が始まっているような気がします」

現在、シャトレーゼの店舗は国内で600店舗。9月には香川県に初出店して、47都道府県のうち、店舗出店していないのは秋田県、徳島県、沖縄県のたった3県になったとか。

「おいしくていいものを、多くの人の手に届く価格で提供したい」。創業以来、抱き続けるこの強い想いがあるからこそ、今もシャトレーゼは多くの人に愛されているのでした。

<取材・文/藤村はるな>