東海道山陽新幹線の車両

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開幕直前に無観客での開催が決まった東京五輪。コロナ禍での開催をめぐる混乱の影響は、鉄道にも及んでいる。

JR東日本の深夜新幹線のとりやめ

JR東日本は2021年7月21日〜31日に行われる東京五輪サッカー男女の試合にあわせ、仙台発の東北新幹線臨時列車の運行を計画していた。

この臨時列車のポイントは深夜帯に運行されることだった。例えばやまびこ422号は7月21日、24日、27日、28日に運行され、仙台発24時45分、東京着4時20分というダイヤで運行予定だった。

車両はE5系10両で全車自由席。深夜時間帯に新幹線が運行されることは珍しく、鉄道ファンの間では大きな話題になっていた。

しかし事態は急変する。

JR東日本が9日、東北新幹線臨時列車の運行とりやめを発表したのだ。当初、有観客で行われるカシマスタジアム(茨城県鹿嶋市)向けの列車だけは運行予定だと発表されていたが、13日になってすべて列車の中止が決まった。

7月17日付の河北新報記事によると、大会組織委員会がJR東日本に対し、深夜の臨時新幹線というレアケースを狙って各地から記念乗車や記念撮影をする人々の存在を指摘したという。五輪観客以外の乗車ニーズが発生する可能性を懸念した格好ようだ。

大阪・関西万博で深夜新幹線は見られる?

今回の運行とりやめのポイントは深夜帯の運行という希少性もあるが、全車自由席にあったと筆者は思う。五輪の観戦チケットと新幹線指定席券を紐づけしていればこのような事態は避けられたのではないだろうか。

しかし先述したように五輪自体が混乱しているため、事前準備は難しかったといえる。

今回の深夜新幹線は潰えたが、今後運行される可能性が高いイベントとしては2025年に開催予定の大阪・関西万博が挙げられる。

実は1970年に開催された大阪万博でも深夜新幹線は運行された。過去の例を考えると否応がなしに深夜新幹線への期待は高まる。

「東京〜新大阪間は約2時間30分だから、深夜新幹線は難しいのでは」と思うかもしれない。が、東北新幹線の深夜新幹線では約1時間30分を要する東京〜仙台間を約3時間30分で走破するダイヤだったので、所要時間や距離は問題ない。

大阪・関西万博で深夜新幹線を運行する際は万博のチケットと乗車券を紐づけにするなどして、無用な混乱が起きないことを望む。むろん、全車指定席にすることは必須要件だ。

(フリーライター 新田浩之)