子供の「食育」に役立つ絵本6選。食への興味やいのちの大切さが身につく

教えてくれた人

絵本ナビ編集部 編集長 / 磯崎園子さん
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。

リトルシェフクッキング(株)代表/子ども料理研究家® 武田昌美さん
料理を通じて子どもの才能を開花させ、挑戦する勇気・失敗への前向きな姿勢を養うことを目的とする料理教室「リトルシェフクッキング」を経営。2歳から19歳まで、のべ3000人以上の子どもに料理を通じた学び「EduCooking」を教えている。

3歳までにおすすめの絵本

やさいのおなか

磯崎さん(以下、磯崎)
「モノクロで書かれた野菜の断面(おなか)。これはなんの野菜だろう?とクイズのように読み進められる1冊です。『子供が野菜を嫌いにならないように』というのは、世の中のお母さんの永遠のテーマですよね。好き嫌いの感情が芽生える前に、色や形から触れて興味を持っておくことも、野菜を好きになるひとつの要素なんじゃないかなと思うんです。

おままごとの野菜が半分にカットできるように、小さい子って断面が好きなんですよね(笑)。『この野菜はこんな風にできているんだ~』とまずは遊びのなかで感じて、本物の野菜に触れたり、食べたりしたらいいのかなと思いました」

武田さん(以下、武田)
「すごく魅力的な絵本ですね。ただ紹介するのではなく、一旦考えさせるというところが素敵。形を観察し、想像力を膨らますことができる点も、子供達にとっては楽しめるポイントだと思います!」

磯崎
「断面だけで判断するのって意外とむずかしく、大人も一緒に『え~この形なんだったかな……?』と楽しめるところもおすすめですよ!」

いちご

武田
「子供達にとって“いちご”は真っ赤な状態で売っているのが当たり前。でも赤くなる前は緑色で、おいしくなるまでにたくさん時間がかかるんだということを教えてくれる1冊です。いちごが色づくまでにかなりのページを読まなければいけないので、子供達は『いつ赤くなるんだろう、まだ赤くならない!』と焦らされ、ワクワクしながら読み進めています」

磯崎
「実際にいちごが育っていく過程を見るのはかなり時間がかかってしまいますが、それを絵本で体験できるのはいいですよね。普段自分たちが食べている“いちご”は、実は一番おいしい状態だったんだ~!と思えるような内容。この本は小さい子からの人気が高いんですが、焦らされている感覚が楽しいのかな?(笑)」

武田
「本を読んだあと、子供達といちご狩りに行ったんですが『これはまだ緑だから食べられないんだよ~』と言っているのを見て、絵本の内容をきちんと理解しているんだな~と関心しました。本で学んだことを自分なりに答えあわせしている感覚で楽しんでいたようです」

3~5歳までにおすすめの絵本

きょうのごはん

磯崎
「クレヨンで書かれた料理の絵が魅力的な一冊。思わずお腹がなってしまいそうなごはんの絵も好きなんですが、この本のおもしろいところは、いろんな家庭の食卓が出てくるところ。当たり前のことなんですが、夜ご飯って家庭によってメニューは違うし、食べる環境や一緒に食べる人もバラバラなんですよね。

あるお家ではお父さんが料理を作っているけれど、ほかのお家ではお母さんと子供たちだけでごはんを食べている……。『食事といってもいろんな形があるんだな~』と子供が気づけるようなお話になっています」

武田
「どの料理も本当においしそう!3~5歳は保育園や幼稚園などに通いだして、ほかの家族と接触する機会が増える頃ですよね。『あの子のお家は自分と少し違な~』と気づいてくる時期にはぴったりの本だと思います!」

ねこのパンヤ

武田
「タイトル通りねこが働くパンヤさんのお話です。この絵本、子供用だからといって侮れず、パン作りの手順がかなり細かく書いてあるんです。生地をこねてバターを入れて、発酵させて……と料理好きな子にとってはこの細かさがドンピシャでハマるよう。絵がとってもかわいらしく、料理が好きなうちの娘もこの本の大ファンなんです(笑)。

小さい子はもちろん、ストーリーがしっかりしているので大きくなってからも楽しめる1冊だと思います」

磯崎
「これ、本当にかなり本格的なパンの作り方が書かれているんですね。二次発酵までもしっかり!パンの絵本はたくさんあるけれど、こんなに詳しく書かれている本はなかなかないかも(笑)。すでに料理が好きな子はもちろん、この本を通じて料理に興味を持つ子もいそうですよね」

武田
「我が家では、この本を読んでからパンを作って、本で得た知識を実際に再現してもらったり『パン作りって本当に大変なんだ~』と子供達の経験に繋げるようにしています!」

小学校低学年~中学年までにおすすめ絵本

はらぺこさん

磯崎
「『はらぺこなのに、なんでおやつはたくさん食べちゃいけないの?』『そもそもどうしてお腹が空くの?』この本はそんな子供の疑問に答える1冊。はらぺこさんになるとき体の中では一体何が起きているのか、どうして栄養のあるごはんを食べなければいけないのか、などを楽しく学ぶことができます。

おいしいご馳走というのは、もちろん料理の技術も大切なんですが、やっぱり“はらぺこ”という要素も大事なんだなと~!大人も気づかされる絵本です」

武田
「体の中の仕組みをわかりやすく解説してくれていて、面白い!小学校低~中学年頃の子は、いろんなことに興味があり『なんで?どうしてだろう?』と思う機会が増える時期。ただ大人に教えられるのではなく、こんな風に絵本で学べるとより納得感が強まりますよね」

磯崎
「実はこの本はシリーズ化されていて、“はなの穴”の話や“かさぶたくん”など子供が興味を持ちそうなテーマの本がほかにも出ているんです!この思わず笑いが出ちゃう気の抜けた絵も魅力的なんですよね~(笑)。」

いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日

武田
「食事は楽しい!ということを伝える一方で、小学生に入った頃からは“いのち”の話をすることも必要になってくると思います。この本は食肉センターで働く坂本さんの体験が書かれたお話。むやみに『ごはんは残しちゃいけません』『食べ物は粗末にしない』と言うのではなく、なぜ粗末にしてはいけないのかを子供たち自身が学べるような1冊です。

牛の屠殺について書かれているので、小さい子にとっては少し衝撃的な内容かもしれません。だからこそ読みっぱなしにするのではなく、親子で“いのちをいただく”ことついて話し合うきっかけになってほしいと思っています」

磯崎
「坂本さんが直面する食肉解体という仕事への葛藤や、息子さんとの会話は大人が読んでもハッとするような内容ですよね。この本では牛が出てきたけれど、ほかにはどんな“いのち”をいただいているだろう、じゃあどうして粗末にしてはいけないんだろう、というその先のステップを一緒に話してあげれるといいですね」

今こそ、食のあり方を親子で一緒に考えてみよう

じつは武田さんに選定していただいた本の中に『モモ』(作:ミヒャエル・エンデ)が作品が入っていました。記事ではご紹介できなかったのですが、こちらもぜひお子さんに読んでほしい1冊。お話のなかで2度出てくる対照的な食事シーンは、誰と食べるか・どんな状況で食べるのかで、心や体の状態は変化するんだということを教えてくれます。

便利なサービスが増え、飽食の時代と言われる今だからこそ、お子さんと一緒にお父さんお母さんも食事、食卓のあり方を見直してみてはいかがでしょうか?

取材・文 / 樋田由香(macaroni 編集部)