コロナ禍で苦境の観光施設 被災の教訓糧に前へ
新型コロナウイルスの感染が拡大していく中で迎えた春の大型連休、集客を期待していた観光施設側は大きな打撃を受けました。
観光施設は本来、遠方からの客も多く、4都県への緊急事態宣言はまさに死活問題でした。
今回、集客への影響を足利市の観光施設に聞きました。
季節ごとに旬の花々が咲き誇り、年間を通じて多くの観光客が訪れるあしかがフラワーパークでは先月15日、大藤まつりが開幕しました。
去年のこの時期は全国に緊急事態宣言が発出され、フラワーパークとしてはトップシーズンとなるこの時期に初めて休園したため、2年ぶりの「うれしい春」です。
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「今回だけはどういう厳しい状況でも徹底した感染対策のもと、営業しようというのは僕自身強く思っていたので本当にホッとはしていますね。なかなか思い通りにはいかないですけど」
フラワーパークでは検温や消毒、密を避けるため左側通行にするなど感染防止対策を徹底。
並々ならぬ決意で今年の開催に臨みました。
しかし、開催10日後の先月25日。緊急事態宣言が東京など4都府県に発出され、団体ツアーが相次いでキャンセル。
全体の3割近くを占める東京からの観光客の姿が見えなくなりました。
シンボルの樹齢160年の大藤棚が見ごろを迎えた最初の日曜日でした。
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「やっぱり宣言前と宣言後では大きく本当に局面は難しくなったなというのが印象としては強くあります。大変な局面でもまずは自分たちで生き抜けるだけの力を付けていかなくてはいけないし、必要であれば大きな変化をしていかなきゃいけない」
危機の中での「生き抜く力」。意識が高まったのはおととし10月の台風19号でした。
近くで氾濫した川からあふれた濁流が花壇や樹木に容赦なく襲いかかり水位が1.7メートル以上に達した場所があるなど園内の全域が冠水しました。
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「あのときはちょっと心が一瞬折れたなというのはありましたけど、イルミネーションの本当に直前だったんですよね。フジに次ぐ2番目の勝負のシーズンの中で大変な状況ではあるけど、だらだらしている暇はないっていう意味ではすぐ頭を切り替えた」
当時はおよそ150人の従業員が園内の清掃や花の植え替えを行い、1週間で営業再開にこぎつけ、その後も営業と同時並行で復旧作業は続きました。
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「本当に多くの支えをいただき、人に対する感謝の思いを本当に強く持てたし、その人たちのためにも必ずそれまで以上の園と魅力づくりを徹底していかないとという非常に大変でしたけど良い経験をさせてもらった」
水害を乗り越えたフジは人の思いが乗り移ったかのように翌年の2020年、これまでにない美しい姿を見せましたが、この時は園内に人の姿はありませんでした。
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「365日、スタッフ1人1人が本当に思いと手をかけてこの園を作っている。それをお客様にご披露するというのがスタッフ1人1人のモチベーションになっているため、経営的なつらさというよりは頑張ってきた人に対する申し訳なさというのは休園をする上で強く感じた部分だった」
園内で大藤などの樹木を20年以上管理している村岡伸朗さんです。
村岡伸朗さん:「去年、咲きがものすごい良かったので去年の姿を見てもらえなかったのは残念ですね。1年頑張ってきた結果、フジが頑張って応えてくれましたけど、我々のやりがいというのはお客様が喜んでくれないと実感が、もう1年頑張ろうというのがないものですから、そのときは悲しかったですよね」
休園でも歩みを止めず育ててきたフジだからこそ、今年何とか来園者に楽しんでもらえたことに喜びと新たな決意を感じています。
村岡伸朗さん:「2年ぶりのお客さんの笑顔を見れたことに対して、やっと春が来たなと思いました。また来年頑張ろうという気持ちですね。どこにも負けないような花を見せられたらいいなと思っています」
園内では今、バラが咲き誇っています。
来園客:「日常の中でちょっとモヤモヤしているのを花を見て少しでも癒やされたらなと思って来たんですけど来て正解ですね。すごく癒やされました」
足利フラワーリゾート 早川公一郎社長:「この1年のなかで我慢してきた人たちが僕らの作ってきた花を見て、癒やしやリフレッシュといったものを感じてもらえるということでお客様の声を聞いて自信も持てたし、より今まで以上に地域のために人のためにお客様のためにやっていきたいという思いは改めて持ちました」