西武・松坂大輔【写真:荒川祐史】

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今季は7月に手術、復帰目指し「少しでも恩返しが出来るように」

 西武は21日、松坂大輔投手と来季の契約を締結したことを発表した。松坂自身は「少しでも恩返しが出来るようにやっていきたいと思います」とコメント。2021年シーズンに41歳を迎える平成の怪物が現役にこだわり続ける姿勢に、球団としての期待もにじむ。

 1年契約で14年ぶりに西武に復帰した今季は、キャンプ、オープン戦を通じて順調な調整を続けていたが、コロナ禍で開幕が延期となったことから雲行きが変わった。3月下旬に右膝の動きを潤滑にする注射を打ち、結局6月19日の公式戦開幕は2軍スタート。7月5日には頸部の痛みや右手のしびれを抑えるための「脊椎内視鏡頸椎手術」を受け、1、2軍を通じて登板なしで終わった。

 一世を風靡したスーパースターで、球団にとって功労者でもある松坂に、中途半端な形で終止符を打たせるわけにはいかない。今季こそコロナ禍の影響で、グッズ販売などは限定的だったが、球団としては、他の選手を上回る松坂の人気、注目度の高さを再認識。来季以降に大きな期待をかけている。

 また西武は現状、チーム野手最年長コンビの栗山と中村が健在で、野手陣に関しては伝統が引き継がれているが、投手陣は現楽天の涌井、岸、現マリナーズの菊池らがFAやメジャー移籍で相次いでチームを去り、ぷっつりと途絶えてしまっているといわれる。一昨年、昨年に続いて、今季もまたチーム防御率がリーグワーストの4.28と低迷した一因ともみられている。

現役として示す手本…40歳の松坂が現役を続ける意義

 球団OBの1人は「監督・コーチが言うのと、現役として見本になる姿勢を示すのとでは、若い選手に与える影響が全然違う」と言う。そういう意味で、14年ぶりにチームに戻って来た40歳の松坂が現役を続ける意義は大きい。

 今年70周年を迎えたライオンズを象徴する存在でもある。メジャー帰りの2015年にはソフトバンクへ。2018年から入団テストを受けて中日に入団した際には、功労者に対して真っ先に手を上げるべきだったと指摘するOBらの声もある。ただ昨年、渡辺久信GMが編成部門トップの座に就いて松坂復帰の流れを作った。松坂に他球団のユニホームを着せた轍を踏むことなく、基本的に本人の気が済むまで現役を全うさせ、指導者としてチームに残す青写真を描いているという。

 日本復帰後は相次ぐ故障に悩まされている松坂だが、前出のOBは「あれだけ満身創痍になりながら、現役を続けようという熱意には頭が下がる。カネは十二分に稼いできたはずだから、モチベーションを支えているのは、それではない。プロ野球選手は誰でも、1年でも長く現役を続けたいと思いながら、ケガや体力の衰えで心が折れていくものだが、松坂にはそれが見えない」と感心する。

 単なる結果だけではない。平成の怪物が自分の衰えと格闘する生きざまを、ファンも見守ることになる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)