体毛には2種類あり、肌を覆うやわらかで短い毛は「軟毛(うぶ毛)」、そして強くて長く、色素の濃い毛は「硬毛」と呼ばれ、まゆ毛やまつげ、頭皮、あご、脇、そしてデリケートゾーンに生えているものを指します。

ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学で皮膚科学の臨床学准教授のゲイリー・ゴールデンバーグ博士によれば、この硬毛の生える量は「基本的には遺伝で決まる」とのこと。

ところが、人によってはあるとき急に体毛が濃くなったり、逆に薄く細くなってしまったり、抜け落ちてしまうなどの急激な変化を迎えることが…! それはもしかすると、あなたの健康状態についてのサインなのかもしれません。

本記事では、体毛の変化があった際に「注意するべきチェックポイント」を<プリべンション>からご紹介します。

【INDEX】


バランスが崩れているかも
「多嚢胞性卵巣症候群」のサインかも
鉄分が欠乏しているかも
甲状腺機能の低下からくる場合も
女性ホルモンレベルが変化したのかも
飲んでいる薬の影響かも
自己免疫の問題の可能性も
腫瘍の兆候であることも
病院に行くべきタイミングは?

ホルモンバランスが崩れているかも

女性の場合、急に体毛の伸びが速くなったり、逆に毛が抜けたりというときは、男性ホルモン、別名「アンドロゲン」のバランスが崩れているために起こることが多いそう。男性ホルモンは男性にも女性にも、量は違いますが自然に存在します。そして、たとえばアンドロゲンの一種であるテストステロンが急に増えると、体毛が濃くなる可能性があるそう。

「これは多毛症と呼ばれ、女性なのに男性型の体毛が生えてしまう症状です」と言うのは、コロラド大学デンバー校の医療センターで医学部教授をつとめるマーガレット・E・ウィアマン博士。

「男性型というのは、おへその上や胸、あるいは背中の上部に生える毛のこと。また、女性の乳首の周囲に8本以上の毛が生えていれば異常とみなされ、多毛症と診断されます」

男性型の体毛と同じく、女性の男性型脱毛症もまた、男性ホルモンのレベルが変化しているサインになるとか。

更年期の女性の場合、女性ホルモンであるエストロゲンのレベルが下がり、その結果としてテストステロンのレベルが上がると、多くの場合頭髪が薄くなる一方、顔の毛が硬くなることが。中にはあごに変な毛が生えてしまう人もいるそう。「初めて見つけたときは衝撃だと思いますが、これは正常なことなんですよ」と、ウィアマン博士。

「多嚢胞性卵巣症候群」のサインかも

米国女性健康局(OWS)によると、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)は生殖ホルモンバランスの乱れから起こる病気で、妊娠可能年齢にある女性のほぼ10人に1人が経験するそう。

月経周期の中で、毎月卵子を作って排出する卵巣に問題が起きることがあるのだとか。多嚢胞性卵巣症候群があると卵子がうまく発達しなかったり、排卵が正常に起こらなくなることも。

これによって生理不順、大人ニキビ、薄毛、あるいは顔やあご、体の濃いムダ毛など、さまざまな症状が起こります。これは「体内でテストステロンが生成され過ぎることが原因の場合もある」と、ゴールデンバーグ博士は説明。

鉄分が欠乏しているかも

誰にでも毛周期というものがあり、人によっては春と秋に毛が抜け、逆に夏と冬に抜けるという人も。けれど、びまん性脱毛症という体毛や頭髪の目立った脱毛の場合、血液中の鉄が不足し、貧血のサインかもしれません。

ベジタリアンやヴィーガンの女性で生理が重い人はリスクが高くなり、毛が抜けたり爪が割れたり、偏食になる傾向があります。鉄不足が原因かもしれないと思う時は医師に相談し、血液検査をしてもらいましょう。

甲状腺機能の低下からくる場合も

アメリカの国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所によると、甲状腺とは首の前側にある蝶のような形をした小さな腺で、体のエネルギー調節を助けるホルモンを分泌するのだそう。甲状腺ホルモンが少ないと、体のいろいろな機能がスローダウンしてしまい、作られる体毛の量にも影響することがあるよう。

「甲状腺に関連する脱毛の場合、特徴的な症状がある」とウィアマン博士は解説。

「もし、まゆ毛の外側3分の1がなくなり、かつ爪の縦の溝が目立つようになってきた場合、自己免疫性甲状腺疾患が疑われます。血液検査を受けて、TSH(甲状腺刺激ホルモン)のレベルが下がっていないかをチェックしてください」

女性ホルモンレベルが変化したのかも

体内のエストロゲン量もまた、体毛に変化をもたらすそう。「エストロゲンのレベルが高いと、普通より体毛が濃くなる傾向があり、低いと抜け毛を起こすことがある」と言うのは、ニューヨーク市マウントサイナイ病院の皮膚科美容・臨床研究長であるジョシュア・ザイクナー博士。エストロゲンのレベルが急に変わったという場合(たとえば産後や避妊用ピルをやめたなど)、一時的に体毛が抜けるという現象が起こることがあるとのこと。

飲んでいる薬の影響かも

ゴールデンバーグ博士によると、直接体毛に影響をあたえる薬物もあるとのこと。ある種の抗うつ剤や抗凝固薬で一時的に体毛が抜けてしまうことがあり、これを「休止期脱毛」と呼ぶそう。産後や大きな手術後、急激な体重減、過度なストレスなどでも起こるのだとか。

逆に、毛髪や体毛の成長が強まる薬も。たとえばテストステロン、ダナゾール(これもアンドロゲン=男性ホルモンの一種)、フェニトイン(抗けいれん剤)、グルココルチコイド(ステロイドの一種)など。薬が理由の場合、ほとんどの体毛の変化は一時的なもので、断薬すれば元に戻るそうです。

自己免疫の問題の可能性も

めったにないケースだけれど、自己免疫疾患の一種では免疫系がおかしくなってしまい、自らの毛包(毛根を包んでいる皮膚組織)を攻撃することがあるのだそう。このため、頭髪が丸い形に抜けたり(円形脱毛症)、髪が全部抜けてしまったり(全頭脱毛症)、頭髪も体毛も抜け、ひどいときには、まゆ毛やまつげまで抜けてしまうことも(全身性脱毛症)。

このような症状は通常、全身性ステロイド薬で治療し、毛が再び生えてくるようにするのだそう。ただし、治療の効果が永続しない場合もあるのだとか。

腫瘍の兆候であることも

もし多毛症が突然、それも急激に「たとえば半年ぐらいの間」で起こり、さらに血液検査でテストステロンのレベルとDHEA-S(副腎アンドロゲン)がとても高い場合、体内のどこかに腫瘍がある可能性が。それが男性ホルモンを分泌してホルモン量のバランスを乱し、その結果として体毛の伸びが速くなるケースもあるのだとか

「この場合、医者は副腎と卵巣、どちらかの腫瘍を疑います」とウィアマン博士。

「あまり頻繁に起こることではないですが、ドクターが判断し、必要なら検査してくれるはずです」

病院に行くべきタイミングは?

体毛の変化は隠れた健康問題を知らせている場合があるものの、必ずしもどこか“悪いところ”があるとは限らないよう。「顔や体の体毛が増えた言って私の元に来た患者さんのほとんどは、正常の範囲内でした」とゴールデンバーグ博士。

ただし、「もし新たな毛が生えてきたり、変化が激しい、あるいはとても気になる体毛が顔やあご、胸に生えてきた場合は、念のため皮膚科医に診てもらい、何らかの異常がないかはっきりさせておくといいでしょう」とザイクナー博士はアドバイス。

検査してもらえば、可能性のある問題を突き止められ、必要な治療もはじめることができます。不安を感じたら、そのタイミングで診てもらうのがよさそうですね。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation:Sasaki Noriko (Office Miyazaki Inc.)

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