金与正氏(平昌写真共同取材団)

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韓国青瓦台(大統領府)は26日、海洋水産省所属の漁業指導船に乗り組んでいた男性が北朝鮮軍に射殺された問題で、北朝鮮側にさらなる調査を要請する方針を明らかにした。

青瓦台は、双方の状況説明に食い違いがあるとし、必要なら合同調査を求める考えを示している。

この問題を巡っては、事件発覚後に与野党含め、北朝鮮の行動を糾弾する声が大きかった。その後、金正恩党委員長が謝罪の意を表明したことで、青瓦台や与党の反応はトーンダウンしているが、野党「国民の力」は金正恩氏の謝罪は誠実ではないと主張し、国際司法裁判所か国連安全保障理事会で本件を処理すべきだと主張している。

韓国政府・与党としても、対応を誤れば世論と北朝鮮の板挟みになりかねないだけに、慎重にことを進めているもようだ。

事件発覚当初、韓国側が強調していたのが、射殺の責任の所在を明確にせよというものだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は8月18日、北朝鮮が新型コロナウイルス対策で設置した中央緊急防疫指揮部が格上げされ、中央緊急防疫司令部に名称が変更されたもようだと報じた。司令官には、金正恩党委員長が自ら就任したという。

指揮部が司令部となり、その責任者の肩書が「司令官」ならば、新型コロナウイルス対策の防疫組織が軍隊式の編成に移行したと考えられる。北朝鮮は以前から、新型コロナ対策の防疫ルール違反者には軍法を適用しているとされ、北部国境地帯では、立ち入り禁止区域に入った人が射殺されたとの情報も出ている。今回の韓国人男性のケースも、北朝鮮側としてはルールに準じた行動を取ったということなのかもしれない。

一方、韓国紙・朝鮮日報は8月31日付で、北朝鮮内部の事情に詳しい消息筋の話として、「北朝鮮は海上および国境の封鎖など、コロナウイルスが流入し得るあらゆるルートについて物理的に完全遮断措置を実施している」「金与正がコロナ防疫司令官を務め、指揮を取っている」などと伝えた。

RFAと朝鮮日報の報道には微妙な違いが見られるが、北朝鮮の新型コロナ対策を「司令官」が指揮しているという点では一致している。そして、最近の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長の出世ぶりを踏まえれば、兄から防疫対策の指揮を任されていても不思議ではない。

さらに、韓国に強硬姿勢を示す役どころを考えてみれば、同氏が件の韓国人男性の射殺に対して責任を負うべき立場にいる可能性も小さくはない。

(参考記事:金正恩氏ら兄妹、対北ビラで「不倫関係」暴露され激怒か

今後、この問題がこじれた場合、金与正氏の毒舌が再び火を噴く展開があるのだろうか。