上場ホームセンター20社の最新四半期別売上高・利益合計推移

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DIY用品などが「巣ごもり」需要拡大で大幅伸長、課題は店舗の販売力向上

 ホームセンターが活況だ。上場ホームセンター(HC)20社を対象に、2020年度の最新四半期(20年3-5月と同4-6月)業績を集計したところ、16社で前年同期比増収を確保。売上合計は7851億円となり、前年同期比で約1割増加した。

 損益面では、20社中19社が営業利益ベースで前年同期比で増益となったほか、利益合計は680億円に達し、前年同期比7割超の大幅増加となっている。

 HC業界は、2019年10月に施行された消費増税に伴い、客単価の大きいリフォーム工事需要などの反動減に直面していた。しかし、新型コロナの感染拡大を機に、郊外を中心に広大な駐車場を持つ大型店が多いHC業態は、ソーシャルディスタンスを保ちやすい買い物空間として注目を浴びた。

 加えて、もともとの強みであった品揃えの良さと安価な値段を背景に、マスクやアルコール除菌商材など新型コロナ対策商品をHCに求める消費者が増加。緊急事態宣言が解除された5月以降はアクリル板やビニールシートなどの感染防止資材に加え、外出自粛によりガーデニングなどの需要も高まり、DIY資材などHC業態が得意とする商品の販売が一段と伸長した。

 総じて、新型コロナ外出自粛や在宅勤務の広がりが各社にとって思わぬ追い風となり、各社好業績となった。

多くが増収・増益を達成、 DIY用品などが「巣ごもり需要」で追い風

 「DCMホーマック」などを運営するDCMホールディングスは、20年3-5月期の売上高は1258億円となり、前年同期比8.6%の増収。本業の儲けを示す営業利益は同70.4%増の116億円だった。外出自粛などにより、園芸用品やDIY用品など幅広い商材で前年同期比1割超の販売増となり、全体の売上を押し上げた。

 上位5社のうち、前年同期比で最も売り上げが拡大したのはコーナン商事。日用品のほか、ペット用品や薬品、インテリア用品などの販売が堅調に推移したことで、20年3-5月期の売上高は前年同期比29.5%増となる1137億円を確保した。

 「スーパービバホーム」などを展開するLIXILビバは、20年4-6月期の売上高が501億円で前年同期比で増収となったものの、増加率は上位5社の中では最も低かった。。新型コロナの影響で営業時間の短縮や5月の大型連休中での全店休業措置などを取ったものの、日用品や家具などの商材で販売が好調だった。しかし、売上高の4割近くを占めていたリフォーム事業が振るわず、伸び率は低位にとどまったとみられる。

「新型コロナ特需」はしばらく続く見込みも、 店舗販売力の確保が課題

 今後も、新型コロナの感染拡大に伴い「巣ごもり消費」が続くとみられ、DIY用品の販売などを中心にHC業界にとっては引き続き追い風となることが予想される。ただ、他業態との競争激化に対する対応や、“コロナ特需”後も維持可能な、店舗の販売力確保が課題となるだろう。

 HC業界では近年、店舗当たりの販売力が漸減傾向にある。経済産業省の商業動態統計では、HC業界における商品販売額は2020年4-6月で約9500億円と高水準を記録。店舗当たりの販売額平均も前年同期に比べ大きく伸長した。しかし、2019年以前では、消費増税前の駆け込み需要が多かった2019年7-9月期を除いてほとんどが前年同期から下回るなど、実店舗の集客力は年々低下している。

 背景には、各社の新規出店攻勢が続くなか、ひとつの商圏に複数のHCが進出。また、日用品などの商材では低価格を武器に顧客の囲い込みを進めるドラッグストアやディスカウントストアなど他業態と、DIY用品などは利便性の高いEC業態と競合しやすい。そのため客足が集まるHC業態に対し、他業態から顧客獲得の動きが本格化していることも要因に考えられる。

 そのため、各社ともDIY資材など「すまい」関連の商品を起点とした巣ごもり消費へのさらなるアプローチのほか、実店舗の販売以外にECサービスなどの拡充、プライベートブランド(PB)商品の開発注力など、HC業態での顧客の囲い込みが今後主要なテーマになるとみられる。