医療機関の倒産は減少

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 新型コロナウイルスの感染リスクを回避するために通院を控える人が増えたと言われている。

 実際、5月に日本病院会などの3団体が発表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」によると、4月の一病院あたりの医業収入は前年同期比10.5%減となるなど事態は深刻だ。

 さらに7月2日には都内で新たに107名の新型コロナウイルス感染が確認され、第2波への警戒感が一気に高まりつつある。

2020年上半期は12件

 そうしたなか注目される医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産(法的整理)は、今年上半期(1月〜6月)で12件発生。2011年以降の10年間で見ると2016年上半期(11件)に次ぐ少なさとなった。内訳は病院3件(負債総額11億4500万円)、診療所6件(同19億7500万円)、歯科医院3件(同1億4000万円)。なお、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産(新型コロナ関連倒産)は、2日までに全国で310件確認されているが、医療機関の関連倒産は確認されていない。

 2000年以降の上半期の件数推移を見ると、最多は2009年の33件。2018年は歯科医院の急増で27件、2019年は診療所の増加で23件にまで増えたが、今年は特徴的な動きは見られず半減している。今年発生した倒産で負債額が最大となっているのは、眼科クリニック「神戸神奈川アイクリニック」を運営していた医療法人社団稜歩会(東京都新宿区、2月破産、負債10億円)で30億円を超える大型倒産は発生していない。

 これまで新型コロナウイルスの影響によって医療機関の経営悪化や医療スタッフの疲弊などが各メディアによって伝えられてきたことを踏まえると、想像よりもかなり少ない件数で小康状態が続いていると言える。

診療科目によって影響に差が

 新型コロナウイルスの影響は診療科目によって異なるようだ。医療機器リース事業などを手がける大手企業の担当者は、取引先である医療機関の現状についてこう話す。「なかでも保護者の意向が反映される小児科の受診者減少が目立っています。また、不急の患者が比較的多い眼科や耳鼻科の減少幅も大きいようです。一方、人工透析や産婦人科は目立った変化は見られないようです。もちろん同じ科目でも総合病院と専門のクリニックとでは状況は異なるでしょう」。

 また、検診車を所有して企業や団体の健康診断を専門に行う医療機関は、緊急事態宣言以後のスケジュールが真っ白になってしまった先が多かったようだが、法定検診のため需要が消えることはないので、時間の経過とともに収入は回復していくようだ。

 新型コロナウイルスは、医療従事者の安全確保・補償が大きく見直されるきっかけをもたらすと同時に、医療機関の経営者に保有する医療施設・設備を十分に稼働させるための人材確保・維持という将来に向けた大きな課題を改めて突き付けている。