8日の33節、アウェイでのアスコリ戦で2−1勝利を飾ったインテルに思いがけない悲劇が待ち構えていた。試合後の同日夜、ファルコナーラ空港から出発したインテルは翌日午前2時15分にミラノ・マルペンサ空港に到着した。同2時半、荷物受け取り所で待っていたのは疲れた選手達をねぎらうサポーターではなく、欧州CL敗退に冷静さを失った過激な暴徒達だった。

嫌な流れは試合前から漂っていた。ユベントス、インテル、ACミランが欧州CLでベスト8進出を果たした時点で現地マスコミは“イタリア勢、欧州CLベスト4に3クラブ進出濃厚”とこぞって書きたてた。優勝候補バルセロナとの対戦がなかったことが影響したのも事実だが、アーセナル(ユベントスと対戦)、ビジャレアル(インテルと)を格下クラブと決定付けていたのだろう。インテル監督マンチーニは試合前に「ベスト8まで来たチームはどこも本当に強い」と警戒していたが、サポーターの抑制にはならなかった。敗退後、監督は選手間の不和など問題の多いチームに「クラブ内にスパイがいる」と発言していたことも災いした。

最も被害を受けたのはチームバスに乗らず、自家用車に乗り込んだDFサネッティ、DFミハイロビッチ、MFザネッティ、FWマルティンスら。中でも来季ユベントスへの移籍が決定しているザネッティは“スパイ容疑”をかけられサポーターから殴られ、またコインを投げ付けられるなど軽傷を負った。暴力こそなかったがある女性サポーターは「私は月給1000ユーロ(約14万円)しかもらっていないのに、お前はいくらだ!!」と筋違いの暴言を吐く始末の悪さ。

“人種差別発言”“暴行事件”“八百長問題”など今季のセリエAは問題続き。世界最高峰と謳われたかつての面影は微塵もなく、多くのスタジアムで閑古鳥が鳴いている。「負けても良い」と考えて試合に臨む選手などいるわけもない。観客あってのプロスポーツだが、“サポーターなら何をやっても良い”と勘違いしてはならない。今回の事件ではクラブに対し罰金が課される予定だが、クラブ側も暴行を働いたサポーターに対し損害賠償などの面を含めすぐに訴えるべきだろう。次節ACミランとの“ミラノ・ダービー”となるインテルだが、現時点でACミランと協力し万全の態勢を取る模様。