家具上場大手3社の月次売上動向(既存店ベース)

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在宅勤務でホームオフィス家具需要が急増、 ニトリ・ナフコは前年同月から売上拡大

 新型コロナウイルスの影響による在宅勤務の拡大などで、家具・インテリア需要が高まっている。月次販売額が判明した、ニトリHD(東京)・ナフコ(福岡)・島忠(埼玉)の家具上場大手3社がまとめた5月の売上動向(既存店ベース)によると、ニトリとナフコは前年同月を上回る水準を確保。島忠もほぼ前年同月並みの売上を確保した。いずれも外出自粛などでテレワーク対象となった人が増え、自宅で使用する仕事用のデスクやイスといったホームオフィス家具や、巣ごもりによる収納用品などの需要が急速に増えたことが要因だ。

 ニトリの5月度売上は、前年同月比で100.6%だった。新型コロナの国内流行が顕在化した2月以降、緊急事態宣言の発令による外出自粛の影響を大きく受けた4月度を除く3カ月でいずれも前年同月を上回った。家具専門の業態「ツーワンスタイル」を展開するナフコも、5月度の売上高が前年同月比115.7%と1割超の増加。消費税率が引き上げられた10月以降、前年同月を割り込む状態が続いていたが、20年2月には5カ月ぶりに上回るなど、売上が持ち直していた。島忠は同98.2%とやや減少したものの、ほぼ前年同月並みの売上を確保した。

 家具業界では、昨年10月に引き上げられた消費税率の影響で、利幅の大きい中高価格帯の家具の売れ行きは良くなかった。こうしたなか、1年で最も需要が高まる3〜4月の新生活シーズンに新型コロナが直撃。店舗の臨時休業や時短営業を余儀なくされ、売上が減少していた。しかし、国内で在宅勤務が急速に浸透したことで、多くの人が仕事用デスクやワークチェアなどホームオフィス家具を買い求めたほか、巣ごもりを機に収納や整理用品の需要が拡大したことで一転、大手3社の業績に追い風となったようだ。

EC家具のLOWYAは単月で過去最高の売上

 外出自粛要請で実店舗へ出向く事ができなったなか、家具EC各社では売上急増がより鮮明となった。総合通販のベルーナ(埼玉)では、家具・雑貨類の5月度の売上高は前年同月比128.1%と大幅に増加した。ベガコーポレーション(福岡)もEC専売ブランド「LOWYA」において、3月における受注金額が7億円を突破。単月の受注金額としては過去最高を記録した。同社は、21年3月期の経常利益を前期比3.4倍の5億円と急拡大する見通しを示しており、EC市場における家具需要を大きく取り込んでいる。

 過去には通販大手のニッセンHDが2016年に大型家具の通販事業から撤退するなど、もともとEC販売には不向きな商材とされてきた家具。他のインテリアや雑貨類と比べ、家具を買う際に大きなポイントとなるサイズ感や色味、質感などはEC上で確認できず、現物を見ずに購入する事に対する消費者の抵抗感は根強かった。

 現在では、EC販売は中間コストを圧縮した低価格性に加え、自宅で気軽に購入でき、幅広い製品やデザインについて簡単に調べられることが最大の魅力。加えて、近年はAR(拡張現実)技術を活用し、スマホで簡単に家具の配置を疑似体験できるサービスも普及。サイズや色味を伝えられないといったECの弱点克服も進んだ。在宅勤務化の普及を受け、迅速かつ安価にホームオフィス家具を揃えたいといった需要をより取り込む下地が整っていたことも、EC家具が伸長した大きな要因とみられる。

受注増で配送能力の限界も 中高価格帯の家具店などでは引き続き厳しさ続く

 ただ、家具以外にも宅配需要が拡大する中、特にデスクなど重量が重く嵩張る家具の輸送が増える事で、一時的に運送業界のキャパシティに限界が来ないか、指摘する声も上がっている。また、大塚家具(東京)などをはじめ、元々中高価格帯の商品が主力だった家具店などではこうした需要の取り込みは難しく、需要一巡後の消費落ち込みといった動きも懸念される。

 テレワークの定着などで引き続きホームオフィス家具の需要が高まると見られ、家具業界にとって引き続き追い風が続くと見られるものの、企業や取扱商品によっては業績に明暗が分かれそうだ。