――クルピ監督の下、まとまっていたわけですね。

「僕が30歳で一番上やったんです。その次が2個下の茂庭(照幸)や羽田(憲司)という超若いチームやった。平均年齢25歳以下じゃないですかね。でもレヴィーはブラジルでの監督経験も豊富だし、強化部長にはセレッソの初代キャプテンだった梶野さんがいて、新参者やけど僕が入って、若くて活きのいい奴らがいて、すごくバランスが良くてまとまってましたね、今思うと」

――フォワードとして、香川、乾、家長、清武(弘嗣)という4選手が揃った中盤をどう見ていた?

「フォーメーションが1トップだったので、その中盤の選手を見た時に、『これは、真ん中から動かんとこ」と思いましたね。後ろに香川、乾、家長、清武というトップ下と言われるところで実力を発揮する選手が揃っていたので、そいつらの好きなようにさせて、僕はもうゴール前にいて、ペナルティエリアから絶対出ない、ゴールエリアで仕事する、『ワンタッチゴールが俺の仕事や』と。あとは、彼らのために、ポストになったり、潰れたり、壁になったり、しようと。最後の仕上げだけしようと思ったのに、あいつらみんな上手いから自分でゴールを決めちゃうんですよ。特に真司はシュートも抜群に上手かったからね。乾はシュート下手やったけど、めっちゃ打ってた」
 
――古巣の神戸戦(第12節)は覚えている?

「覚えてます覚えてます。しかも、解説のために、色々な選手に電話取材をしたので、さらに甦ってきましたね。シーズン序盤は、そんなに良い感じで勝てなかったんですよね。古巣の神戸戦やし、なおかつ真司がドルトムントに旅立つ試合やった。みんな、真司のためにも絶対勝たなあかんという気持ちで臨みましたね」 

――播戸さんは途中出場が多かった中で、この試合はスタメンでした。

「アドリアーノが怪我か出場停止で僕にチャンスが回ってきたんです。セレッソで初スタメンの試合だったと思います。『ここで点決めないと、ここからもうチャンスはないぞ』と意気込んで臨んだ試合でした」

――0−1で迎えた前半アディショナルタイムに、右サイドからのクロスに飛び込んで同点ゴール。得意の形でしたね。

「そうですね。高橋大輔からのクロスでした。彼とはなかなか試合で合わなくて、練習で『ここに出してくれたら、絶対に決めるから』とずっと言ってたんですよ。昨日も話したんですけど、『やっとバンさんが言う所に出せて、決めてくれて嬉しかった』と言ってましたね」
 
――その直後に香川選手が直接フリーキックを決めました。

「練習でもあいつがフリーキックを蹴るのを見たことなかったんですよ。『え、真司が蹴るの?」と誰もが思ってました。いつもは基本的にマルチネスが蹴っていたんですが、この試合はいなかったんです。この時の出場メンバーでいえば、左サイドバックの尾亦(弘友希)が蹴るはずだったんですよ。フリーキックが上手かったので。

 なのに、ようわからんけど真司がボールをセットしてると。ベンチでクルピが怒ってたらしいいんですよ。『何してんの』『誰が香川に蹴れと言うたんや』『最後の試合やからって王様気取りか』『もし外してたら交代だ』と。だから、もしあのフリーキックを外してたら、真司はハーフタイムに交代させられてたんですよ。

 でもそれを決めるわけですよ、あいつは。“持ってるな”とみんな思いましたよ。俺が1点目決めたけど、結局は真司に持っていかれたなと。やっぱり持ってるやつはこうやって成長していくんだなと。その後、ドルトムントに行って、日本代表の10番を背負う選手になっていくわけじゃないですか」