米国では、さまざまな企業がBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)への支持を表明している。雇用のダイバーシティと公平性が満たされているか話し合いが行われており、それは美容ブランドやインフルエンサーにおいても例外ではない。

モデル業界と同様、インフルエンサーキャンペーンにおけるダイバーシティの欠如はこれまでも指摘されてきた。だがここにきて、有色人種のインフルエンサーたちが一斉に自分たちの体験について語りはじめている。平等とは名ばかりの差別で、白人インフルエンサーと比べてチャンスが限られていたり、白人インフルエンサーより報酬が少なかったりといった問題があるという。さらにはそれについて公に語ってはならないといった業界内の暗黙の了解について指摘する声もある。

インフルエンサーのリア・ミシェル氏は、複数のインフルエンサーイベントに参加したなかで「私は唯一の黒人だった。まるでアリバイのように感じた」と振り返っている。「黒人インフルエンサーたちにとっては非常に気になっている点だが、ほかの人はほとんど気にかけていないようだった」。

SNSおよびインフルエンサー分野が専門のストラテジストであるウンサ・マリック氏は、ある美容ブランドでインフルエンサーのパーティーを開催したところ、その様子を撮影したインスタグラムの写真がまるで「黒人パーティー」のようだとCEOから苦情をつけられたという。マリック氏は、このCEOに「インクルージョンやダイバーシティは良いことだが、白人のことも意識する必要がある」と言われたという。マリック氏はこのコメントが「極めて不適切だ」と述べている。

また、インフレンサーはブランド製品のインクルージョンという問題にも直面している。ミシェル氏はガルニエ(Garnier)のヘアカラーリングキャンペーンにも参加したが、製品が自分の髪質にあわなかったという。その結果、同ブランドからは当初の報酬が得られず、より少ない業界標準の「不採用報酬」を受け取ることになった。

白人よりも報酬が少ない

そして、問題は採用数だけではない。有色人種のインフルエンサーは、フォロワー数が同程度以下の白人よりも報酬が少ないという。

「悲しいことにこうした問題は非常によく起きている」と、ライフスタイルインフルエンサーのアフリカ・デイリー・クラーク氏は語る。「私たちは無料で製品が送られてくるだけなのに対し、白人インフルエンサーは金銭の報酬を受け取ったりする。同じキャンペーンで私たちへの金銭報酬があったとしても、白人より大幅に少ない場合が多い」。

美容インフルエンサーのJ・マリー氏は、IGTVの15万9000人のフォロワーに向けて「美容ブランドの私たちへの報酬は白人インフルエンサーより少ない」と投稿している。

インフルエンサーのメリッサ・シャテーニュ氏は自身の経験として「2年前にあるエージェンシーを通じて化粧品会社と提携した。報酬があまりにも少なく愕然としたのを覚えている。そして後に、同じブランドがキャンペーンでほかのインフルエンサーにはるかに多い報酬を提示していたと聞いて非常にショックを受けた」と明かしている。

同氏はこの不平等問題について「私自身も体験したことであり、問題があるのは明らかだ。だが自分の身に起きたときは何も言わなかった」という。同氏は、あるアルコールブランドと提携したキャンペーンではフォロワーが3000人のインフルエンサーへの報酬が自分の倍近かったとも述べている。

「協力して助け合っている」

ほかのインフルエンサーへの報酬を知るには本人から聞くほかないが、こうした行為は強く止められることも多い。ミシェル氏はこれまで何度か、報酬額を公開しない契約を求められたことがあるという。もし、その内容を公開した場合、インフルエンサーに法的責任が発生しうるという契約だ。

これまでも、美容分野のインフルエンサーからこの問題を訴える声は上がっていた。たとえばジャッキー・アイナ氏が2019年9月に投稿した動画もそのひとつだ。そのなかで同氏は「業界標準のようになってしまっている」と語っている。「私たちが気づかないとでも思っているのだろうか。私たち同士では話をしない、大丈夫だと考えているようでなおさら腹立たしい」。

モデル兼インフルエンサーのアイサタ・ディアロ氏は、有色人種のインフルエンサーはFacebookを通じて報酬の情報を共有し、各社の慣習について知見を得ているという。「私たちは協力してお互いを助け合っている」。

エージェンシーにも批判の声

またインフルエンサーは、美容キャンペーンで自分たちとブランドを結びつけているエージェンシーも批判している。6月8日、有色人種のインフルエンサー6名が、インフルエンサーマーケティングプラットフォームのフォール(Fohr)に対して送った要求を公開した。この6名、バレリー・イグアボン氏、ディアロ氏、デニス・マイリック氏、ケリー・オーガスティン氏、デイナ・ボールデン氏、イベット・コリン氏、マーチ・ロビンソン氏、アイサットー・ボールド氏は、同社に白人と黒人インフルエンサーに対する報酬、人材のダイバーシティなどについて情報公開を求め、次のように記述している。

「黒人女性とそれ以外とのあいだで明らかに報酬に開きがあるという証拠がある。もはやそれに口をつぐんでいることはできない。御社のチームメンバーによる人種差別への対処を拒否している以上、黙っていることはできない。もはや我慢の限界だ」このキャンペーンはインスタグラム上の幅広いグループから支持を受けている。

フォールの創業者、ジェームズ・ノード氏はインフルエンサーへの報酬額は基本的にフォロワー数に応じて設定されているが、エンゲージメント率、リーチ、試供品の額、出張費、撮影費用、編集時間といったさまざまな要素も考慮して決まるとしている。

また同氏は「もちろん人間としての要素も加味される」としており、需要と供給の関係がインフルエンサーへの報酬に影響していると述べている。この需要と供給のメカニズムによって白人インフルエンサーへの報酬が高くなる可能性について尋ねられた同氏は、「間違いなく起こりうるだろう。市場の仕組みを見れば、そうした可能性は否定できない」と回答した。

標準化された価格設定の欠如

インフルエンサー業界には標準化された価格設定がない。また報酬の開きについても透明性が欠如している。

人材エージェンシーG&Bの創業者、カイル・ジェルメセス氏は「個人に対する報酬額と、その理由には大きな開きがある。標準となるものがないのだ」と語る。また「もしブランドが本当にその人のルックスを求めているのであれば報酬は高くなるだろう」とも指摘する。ディアロ氏もまた、不均衡な報酬を設定するのはブランドにも責任があるとしており、メッセージにはフォールと提携する美容ブランドもタグで列記されている。

「エージェンシーだけでなく、ブランドもまた低い額を提示している」と、同氏は語る。

「私たちが求めているのは透明性であり、これは第一歩となるだろう」と、イグアボン氏は主張する。「本当のところを知らずに、この問題は解決できない」
「『市場は公平、公正なのか?』という点について、私もはっきりさせたいと思っている」と、ノード氏は語る。「私たちは市場開拓者の一員として、よりフェアな市場を実現するために取り組みたい」。

ノード氏によれば、同社はデータに基づいて設定されている「全オファーに対する監査」を実施しているという。「バイアスはないだろうというのが私の予想だ。だが、間違いなくバイアスがないことを確認したい」と同氏は語る。また同社が過去6カ月にインフルエンサーに支払った金額は700万ドル(約7億5000万円)で、そのうち25%が黒人に、39%が白人に、36%が黒人を除く有色人種に支払われているという。

業界のターニングポイントに

イグアボン氏は、ここ数週間でインフルエンサーたちが次々に報酬の開きについて声を上げるようになっており、これが業界のターニングポイントになるのではないかとしている。

「扱いの悪さや人種差別について公に声をあげると、自分への報酬がますます下がるのではないか、仕事が来なくなるのではないかという恐怖は非常に大きい」と同氏は語り、次のように締めくくった。「だが、もし私たちが皆で行動を起こせば、全員の契約を解消はできない。全員をブラックリストには載せられないのだ。皆でこの問題に立ち向かえば、変えることができるはずだ」。

LIZ FLORA(原文 / 訳:SI Japan)