馬鹿げているほど楽しい―新型EV、ホンダeに米国版記者がいち早く試乗。欧州版の詳細仕様も明らかに 
ホンダが期待の新型電気自動車「ホンダe」について、欧州で詳細なスペックを発表しました。米国版Engadgetの記者はいち早くこれに試乗しています(米国でホンダeの発売予定はないのですが...)。なお、数字のみに興味がある方は、ずずっとスクロールして文末をご覧ください。

欧州では既に予約受付が始まっているホンダeですが、日本でも2020年内に発売が予定されています。昨年秋の東京モーターショーで実車をご覧になった方も多いでしょう。ちなみに欧州のドイツにおける価格は、標準モデルが2万9470ユーロ(約354万円)、上級グレードの「アドバンス」は3万2470ユーロ(約390万円)となっています。

今回の発表では、これらのグレードによる装備や性能の違いも明らかになりました。



まず、モーターの最高出力が異なります。標準モデルのホンダeが136psであるのに対し、ホンダe アドバンスは154ps(最大トルクはどちらも315Nm)。これによって0-100km/h加速も9.0秒から8.3秒に短縮されます。

駐車時にドライバーがハンドルやペダルを操作しなくても、4つのカメラと12個のセンサーを使ってクルマが自動的に駐車スペースに収まる「ホンダ・パーキング・パイロット」が装備されるのもアドバンスだけです。



サイドミラーの代わりにカメラとモニター画面を使ったサイド・カメラ・ミラー・システムは全車に標準装備されますが、ホンダe アドバンスはさらに、中央のバックミラーもカメラ式となります。

他にもアドバンスには、死角に危険があると知らせる安全機能や、フロントガラスのディアイサー、ヒーター内蔵ステアリングホイールが標準装備され、オーディオもアップグレードされます。オプションで2トーンの17インチ・ホイールを選択することもできます。



しかし、内外装のデザインや素材などはグレードによって差別化されません。(少なくとも欧州で発売される当初は)両グレードともシート表皮はファブリックのみ。ステアリングホイールは革巻きとなります。

床下に積まれたリチウムイオン・バッテリーの容量も変わりません。両グレードとも35.5kWhと、現行型日産リーフの標準モデル(40kWh)と比べてもやや少なめ。WLTCモードによる航続距離は222kmですから(17インチ・ホイールを装着したホンダe アドバンスは210km)、ちょっと遠くまで行こうと思ったら途中で充電は欠かせないでしょう。

ホンダによれば、CCS2方式の急速充電器を使えば30分でバッテリーの80%まで充電できるとのこと。一方、タイプ2コネクタを使った普通充電では7.4kWでフル充電まで4.1時間。2.3kWでは18.8時間もかかるので、家庭用充電器を選ぶ場合は注意が必要です。



昔のシビックあたりを思い出させる2ボックス型のボディは、全長3895mm × 全幅1750mm × 全高1512mm。全長は同じホンダの新型フィットより10cmほど短いですが、全幅は5cm以上ワイド。ホイールベースは(より全長の大きな)フィットと同等の2530mmと長いため、車内の広さは「1クラス上のモデル並み」とホンダは言っています。



しかし、確かに足元は広いかもしれませんが、後部座席は(フィットより外寸が幅広いのに)2人乗り、つまり定員は4名となります。荷室容量も171リットル(VDA基準)とかなり小さめ。後部座席を倒せば861リットルに拡大できますが、米国で販売予定がないことにも頷けます。一方で開口部の下辺にでっぱりがないので、楽に荷物の出し入れができるとのこと。



クラシックな"丸目"を再解釈したというヘッドライトは、通常のヘッドライトとハイビーム用プロジェクターのみならず、デイタイム・ランニング・ライトやウインカーとして12個のLEDが点滅するリングも統合されています。リアのコンビネーションランプも1つのユニット内にテールランプ、ブレーキランプ、ウインカーが内蔵されています。



キーフォブまたは専用アプリをインストールしたスマートフォンを持ったドライバーが近づくと、自動的に展開する格納式ドアハンドルも全車に標準採用。従来のようなドアミラーやドアハンドルの出っ張りを減らしたクリーンでミニマリスティックな外観は、空力の改善にも役立っています。



ボンネットの黒いフタは強化ガラス製で、キーまたはスマートフォン・アプリによって自動的に開閉。中には充電ポートが備わります。ボンネット中央に充電ポートを設置した理由は、クルマの左右どちらからでもプラグをつなぐことができるから。ガソリンスタンドで給油口の位置を間違えた経験のある方は、合理的と納得できるはず。



ホンダが「ラウンジのようにくつろげる」というインテリアは、ダッシュボード全面に搭載されたスクリーンが目を引きます。8.8インチのデジタルメーターパネルをはじめ、スマートフォンのように操作できる12.3インチのデュアルタッチスクリーン、左右のサイドカメラの映像を映す6インチモニターを含めると、全部で5つものディスプレイが搭載されています。



ただし、木目調のパネルには、エアコンやオーディオを操作するための物理ボタンも残されています。こうしたボタンに関しては、独立していた方が使いやすいというのがホンダの判断です。最新モデルには珍しくなくなった音声認識AIパーソナル・アシスタントももちろん搭載。ホンダのシステムでは「OK、ホンダ」と呼びかけます。



車載インフォテイメント・システムは、Bluetoothを介してスマートフォンと接続できるだけでなく、前席と後席に2口ずつ備わるUSBポートで充電も可能。さらにHDMIや12V電源、そして欧州仕様では230V(最大1500W)のAC電源も備わります。車載バッテリーを利用して家電製品を使用することもできるというわけです。



駐車時(充電時も含む)には、モバイル・デバイスから車載スクリーンに動画を映して、今や懐かしいドライブイン・シアター気分も味わえます。標準グレードのホンダeは6個のスピーカーと180ワットのサウンド・システムを装備。ホンダe アドバンスでは後部座席下のサブウーハーを含む8個のスピーカーを装備する376ワットのプレミアム・オーディオにアップグレードされます。



スペインのバレンシアで試乗したEngadget米国版のスティーブ・デント記者は、ホンダeに乗り込んだ時、ハイテクなダッシュボードを見て心配になったと書いています。短時間の試乗で使いこなせるだろうかと思ったからです。

しかし、それは杞憂だったようでした。その先進的なインフォテインメント・システムは「称賛に値するほど簡単に操作できる」と評しています。「ホンダeのナビゲーション・アプリは、とても簡単に複数のルートを検索し、設定することができる」とのことです。

ステアリングホイールやダッシュボードには物理ボタンが備わっているため「タッチスクリーンのみで操作しなければならないテスラ・モデル3や、これまで運転したことがあるどのEVよりも、ホンダのインフォテインメントは人間工学的に優れている」と書いています。



運転席と助手席の前に1つずつ備わるタッチスクリーンは、表示内容を簡単に交換することが可能。例えば運転中に助手席の乗員にナビゲーションを設定してもらい、完了したら運転席側のスクリーンと入れ替えることができるため、デント記者も「これは非常に便利」と言っています。



ホンダはこのEVの「運転の楽しさ」と「優れたハンドリング」についても強調しています。内燃エンジンよりも瞬時に強力なトルクを発生するモーターは、多くのスポーツカーと同様に後輪を駆動。床下に重いバッテリーを積むため重心が低く(地上50cm)、前後の重量配分も運動性能的に理想とされる50対50。サスペンションはマクファーソン・ストラット式の4輪独立懸架。デント記者は「僅かにボディを傾けながら、レールの上を走るようにコーナーを走り抜けていく」と書いています。

さらにステアリングには、可変ギアレシオが採用されています。つまり高速走行時と低速走行時では、同じ角度だけハンドルを回しても、前輪の切れ角が変化するというわけです。街中や駐車場では少しハンドルを切るだけで比較的大きく曲がってくれる一方で、高速道路をクルージングしているときは安心してゆるやかに車線変更できます。



センターコンソールに用意されたスイッチでは、通常の「ノーマル・モード」から、レスポンスと加速がアップする「スポーツ・モード」に切り替えることが可能です。デント記者は「街中のみならず、高速道路の追い越しでも十分な加速を発揮する」と書いています。



標準の16インチ・ホイールは、バランスに優れたヨコハマ「BluEarth-A」タイヤ(前185/60R16、後205/55R16)を採用。ホンダe アドバンスにオプションとして用意される17インチ・ホイールでは、高速コーナリング時のグリップがより強力なミシュラン「PILOT SPORT 4」タイヤ(前205/45R17、後225/45R16)を装着します。ただしこれは欧州仕様の場合。日本仕様は異なる可能性もあります。

ブレーキはフロントが15インチのベンチレーテッドディスク、リアはソリッドディスク。街中ではブレーキ・ペダルを使わずに、アクセル・ペダルの開閉だけで加速・減速が事足りるのみならず、完全に停止することまで可能な「シングル・ペダル・コントロール・システム」も搭載。回生ブレーキの強さは、ステアリングホイールに備わるパドルで選択できます。



サイド・カメラ・ミラー・システムについては、「ミラーよりクリアで死角も減る」けれど「故障が心配」とデント記者は書いています。アドバンスのみに装備されるカメラ式のリアビューミラーは、試乗中に「雨がカメラのレンズに付着し、ぼやけて後方が見えなくなった」ものの、幸いこちらは一般的なミラーと切り替えることができるようです。



ホンダは新世代の先陣を切る新型EVを開発するにあたり、注目されがちな(そして内燃エンジン搭載車に比べると現在のEVでは不利となる)航続距離や価格でライバルと競うのではなく、用途を街乗り中心に絞り、代わりに先進的なテクノロジーや洗練されたデザインを投入することで、新たな価値観に基づくEV体験を人々に提案しようとしました。

それについてデント記者は個人的な意見として、「ホンダはとても上手く成し遂げたと思う。ホンダeは馬鹿げているほど楽しい。運転して楽しく、車内にいても、外から見ても楽しい」と書いています。



ホンダは、2022年までに欧州で販売する全車種に電動モデルを設定すると宣言しており、まず今後36ヶ月以内に6車種の電動モデルを投入する予定です。既に発表済みのホンダeとデュアルモーターの新型フィット・ハイブリッドが発売された後は、「スタイリッシュな新型SUV」と、そしてホンダeに続く新たなバッテリー駆動電気自動車の登場も予告されています。

日産やルノーやマツダではなくどうしてもホンダのEVに乗って、1度の充電でもっと遠くへ、そしてもっと多くの荷物を積んで5人家族で出掛けたい方は、もうしばらく待ってみましょう。