AV出演強要、未だに続く被害を本気で止めろ! 業界の取り組みに「成果」と「限界」
「タレントにならない?」「モデルにならない?」とスカウトされて、プロダクションと契約したところ、アダルトビデオへの出演を余儀なくされる――。
若い女性が望まぬかたちでアダルトビデオへの出演を迫られる「AV出演強要」が、大きくクローズアップされてから、4年近くの歳月が流れた。
この間、AV業界内の自主的な取り組みもはじまったが、被害者の支援団体が提案しているような法規制は、議論も含めてすすんでいない。
業界内外の関係者から嘆息も聞こえてくる。現在、どんな状況にあるのか。これまでの動きを簡単にまとめた。
●2016年3月、調査報告書発表NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)が2016年3月、AV出演強要の被害実態をまとめた調査報告書を公表した(http://hrn.or.jp/news/6600/)。
暴力的な撮影がおこなわれたケースや、AV業界から長年ぬけ出すことができないケース、自殺に追い込まれたケースなどが記されている。
この報告書をめぐっては、現役AV女優など業界関係者から、反発する声があいついだ。一方で、メディアで顔をさらして、被害告白する人たちもあらわれた。
こうした状況を受けて、元AV女優の作家が、業界の健全化をうながす団体を設立するなど、業界内の動きもはじまった。
●AV業界の自主的な取り組みがおこなわれている「重大な人権侵害だ」(菅義偉官房長官)。政府は2017年3月、街中で女性に声をかける「スカウト」に対する取り締まりを強化するなど、AV出演強要に関する緊急対策をまとめた。
一方、AV業界では、有識者でつくる「AV業界改革推進有識者委員会」(現、AV人権倫理機構)が2017年4月発足して、改善に向けた自主的なスキームを立ち上げた。
同機構は2018年2月から、AV作品の販売停止の手続きをスタートさせた。2019年11月末までに、1万13作品の申請があり、8570作品が販売停止されている。
こうした販売停止などの取り組みは、被害者の支援団体から「一定の成果がある」という評価もされているが、根本的な「被害の防止」につながっていないと批判もされている。
●職業安定法で有罪判決になったケースもAV出演強要をめぐっては、労働者派遣法や職業安定法の適用によって、摘発されるケースがある。およそ1年前のクリスマスの日(12月25日)、注目の判決もあった。
大手AV制作会社に、当時19歳だった女性を紹介して雇用させたとして、職業安定法違反の罪に問われた男性について、東京地裁は、懲役1年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。
男性は、スカウトと共謀して、AVに出演させる目的でモデル志望の女性と面接した。大手AV制作会社に、女性を紹介して雇用させたとして、職業安定法違反(有害業務の紹介)の罪に問われた。
東京地裁は、女性とAV制作会社との間で雇用関係があったなどとして、職業紹介にあたると認定した。さらに、男性がマネジメント契約の締結に重要な役割を果たしたと判断した。
●いまだに被害はつづいている被害者の支援団体によると、いまだに被害はつづいている。スカウトだけでなく、パーツモデルの求人サイトに応募したことがきっかけの被害もあるという。
ヒューマンライツ・ナウなど、3団体はことし12月、AV出演強要の被害実態を報告する院内集会を開いて、AV出演に関する相談件数が39件だったと発表した(1月〜11月)。
ヒューマンライツ・ナウは、(1)監督官庁の設置、(2)労働者派遣法や職業安定法違反の厳格な適用、(3)真実を告げない勧誘・虚偽広告による勧誘の禁止――などをもとめている。
内閣府・男女共同参画会議の専門調査会が2017年2月、法規制のあり方などについて検討して、報告書をまとめたが、その後、法規制の議論はほとんどおこなわれていない。
一部の社会学者からは、法規制について「慎重論」も出ているが、AV業界の自主的な取り組みには限界もあり、業界内外の関係者から「何も変わっていない」という声も漏れてくる。
さらには、違法アップロードなど、作品が残りつづけるような状況もあり、被害防止以外の観点からもどのような対策がとれるのか、2020年こそ真剣な議論をはじめるべきだろう。