大阪府堺市にある、どことなく懐かしい雰囲気の喫茶店がツイッターを賑わせている。その名も「テレ茶店(さてん)」だ。


懐かしいと思ったら...(馬場卓也@takuyazさん提供)

どう見ても1970年代に一世を風靡した台湾出身歌手のテレサ・テンさんを意識したとしか思えない店名。ツイッターでは、

「邦画で時間が戻る喫茶店的なやつがあったんですが、ここはそれなのでは...」
「ここでお茶したカップルは『別れの予感』しかないな」

と、ユーザーたちが想像を膨らませている。

おそらく店主がテレサ・テンのファンで、店内も楽曲が無限ループしているのだろう。記者はそう予想しながら店に電話をしてみたが、実際は全く異なっていた。

付けたのはシャンプーハットのあの人


店名が変わっても常連客の憩いの場(画像はイメージ)

テレ茶店は10種類以上ある豊富なモーニングのメニューが人気。10年ほど前から現在の店主が引き継ぐ純喫茶で、来るのは常連客が中心だという。

店主の青木善法さん(45)が店を引き継いだ際、店名は「コーヒーハウスケニア」だったとのこと。大阪には同じ名前の店がいくつかあるが、事業縮小の際に青木さんに経営の話が舞い込んだようだ。現在、元の運営会社はもうなくなってしまったという。

青木さんはネットで話題になっていることを近所の人に聞いたようで、

「店主がテレサ・テン好きとか言われてますけど...」

と困惑した様子。このリアクションを聞く限り、どうやら熱心なファンというワケでもないらしい。

そう、この店名は青木さんが付けたものではないのだ。

店を引き継いだ当初は「常連の人が困惑するから」といった理由で、店名は「コーヒーハウスケニア」のままにしていた。しかし約1年後、転機が訪れた。

「(お笑いコンビの)シャンプーハットが街をぶらぶらする番組でやってきて。クイズの企画で『店の名前を変えたいんですけど』と相談したら、こいちゃん(こいでさん)が『テレ茶店』と名付けてくれたんです」

7月いっぱいで閉店

テレ茶店はこいでさんが吉本興業の別の企画で出し、却下されていた名前だといい、ずっと付けたかった名前のようだ。看板の筆跡もこいでさんのもの。店の口の部分がハートマークになっている。思わぬところにチャームポイントだ。

こいでさんはテレサ・テンのファンなのか...? もしやと思い聞いてみると、青木さんは「違うと思う。絶対ダジャレですわ」。


看板は、なんとこいでさんの筆跡(馬場卓也@takuyazさん提供)

こうして「テレ茶店」になったわけだが、常連客は特に困惑した様子もなく「人は増えてもないし減ってもない」。気づかない人もいるくらい、馴染んでいるという。店内は有線放送が流れ、テレサ・テンもたまに流れるようだ。

ここ数日でネットではかなり有名になってしまったテレ茶店だが、残念なことに7月いっぱいをもって閉店する。

理由はいろいろあるようだが、青木さんの休みが月1回ほどしかとれず「いったん飲食業を離れたい」とのこと。しかし冗談か本気か、取材中に「閉めなきゃよかったかな」とポツリつぶやいた店主だった。