マウンテンデュー(Mountain Dew)がゲーマーに注目している。

ペプシコ(PepsiCo)の炭酸飲料ブランドであるマウンテンデューは、レッドブル(Red Bull)の手法と同様にニッチな分野に切り込み、エクストリームスポーツ関連のゲーマーやeスポーツへの支援を行っている。

同社のマーケティング部門のバイスプレジデント、ニコール・ポートウッド氏は今年のマーケティング予算の40%をゲーマー向けに使う予定だ。

ゲーマー向けに予算投入



カンター・メディア(Kantar Media)によると、2018年度にマウンテンデューは、ペイドメディアだけで1億1950万ドル(約131億円)の支出を行っている。2017年度の8900万ドル(約97億円)と比べて大幅な増加だ。同社はゲーマー向けに本年度予算の40%を投じる計画を明らかにしており、具体額は伏せているが微増となっているという。

同社はeスポーツのリーグでスポンサーを募る計画を立てている。対象となる団体はチームオプティック(Team OpTic)、カウンターロジックゲーミング(Counter Logic Gaming)、イモータルズ(Immortals)、チーム・ディグニタス(Team Dignitas)、SKゲーミング(SK Gaming)などだ。さらにTwitch(ツイッチ)とのブランド提携や、ゲームやeスポーツファン向けに広告を行っているFacebookとの提携でも予算を使う予定となっている。また、昨年発売したマウンテンデュー・アンプゲームフューエル(Mountain Dew Amp Game Fuel)に引き続き、今年もゲーマー向けに新フレーバーの飲料を開発する予定だ。

ポートウッド氏はさらに、eスポーツ専用のスポーツTVチャンネルを有するチェダー(Cheddar)との提携も模索していると明かした。

いち早く大規模参入



RQエージェンシー(RQ Agency)のクライアントサービス部門でシニアバイスプレジデントを務めるケイト・ウォルフ氏は、マウンテンデューのeスポーツやゲーム業界における取り組みは「ユニークなものだが、その手法は新しいものではない」と語る。

同氏は次のように指摘する。「マウンテンデューはいち早く大規模参入を行ったことでエクストリームスポーツと非常に強い結びつきを確立した。エクストリームスポーツ自体が同ブランドの延長だと表現する人すらいるほどだ。今回も、マーケティングや商品で大規模かつ迅速に展開することで同様の効果を狙っている」。

マウンテンデューがこのようにゲームへ注目したのは、今回がはじめてではない。2007年に同社は、マウンテンデューがゲーム文化の一部としてゲーマーたちに受け入れられていることに着目した。

「ゲームは消費者関連でもっとも急速に成長している分野のひとつだ」と、ポートウッド氏は語る。「先駆者として大きなビジネスチャンスがあると感じている」。

ニールセン(Nielsen)の公開した「eスポーツ・プレイブック・フォー・ブランド(Esports Playbook for Brands)」によると、世界的に見てeスポーツファンの5人に1人が同分野に来て日が浅いという。また、ニールセンは昨年、ゲーム分野ではないブランドによるeスポーツのスポンサー提携が前年比で13%増加しており、Twitchを利用する米国のeスポーツファンのうち、ゲーム関連企業ではないeスポーツのスポンサー企業を挙げられるユーザーの割合が90%に達すると発表している。

マウンテンデューへの追い風



マウンテンデューにとって追い風となっているのが、ゲームをとりまく文化となっているプラットフォームの登場だ。米DIGIDAYが取得したTwitchの営業資料によると、ツイッチはいまや1日あたり約1500万人が集まるプラットフォームとなっている

ウォルフ氏は米DIGIDAYに向けたメールのなかで「eスポーツが台頭して、スポーツ愛好家と同じようなオーディエンスが生まれている。eスポーツのマーケティングへの投資はブランドとして賢い戦略だ」と語る。「マウンテンデューはすでにディグニタスやスプライス(Splyce)、SKゲーミング、イモータルズといったチームとのスポンサー契約を開始しており、ESLと提携してeスポーツのアマチュア選手が参加するマウンテンデューリーグ(Mountain Dew League)を開催している。ゲータレード(Gatorade)が選手の肉体的な栄養補給をサポートしているように、マウンテンデューはゲーマーを精神的に支える飲料ブランドとして共存できるだろう」。

ウォルフ氏はさらに、ゲーマーとマウンテンデューはそもそも相性が良いと指摘する。同ブランドはとりわけXゲームズ・デュー・ツアー(X Games Dew Tour)のスポンサーをはじめ、eスポーツに貢献してきた歴史がある。

「ブランド知名度を確立するためには宣伝は重要だ。だが、もっとも重視しているのは、我々が長期的な視点でeスポーツを支援していくということをファンやプロたちにしっかりと理解してもらうことだ」と、ポートウッド氏は語る。

96%が好意的に見ている



昨年冬にマウンテンデュー・アンプゲームフューエルを立ち上げて以来、同ブランド商品の消費者認知度は47%に達し、ポートウッド氏によると商品の「リピート率は約40%」で、ソーシャルメディア上の96%のオーディエンスが取り組みを好意的に見ているという。

「いついかなるときも重要なのは、最終消費者に焦点をあわせることだ」と、ポートウッド氏は語る。「提携や投資、イノベーションを行うときでも、それを常に念頭に置いていれば、将来に向けて良い形で進んでいけるだろう」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)