「人間関係は東京のほうが楽」――“子育てのために地方移住”を実際にやってみてわかったメリット・デメリット
少し前に「保育園落ちた日本死ね」なんていう言葉が日本中を駆け巡りましたが、依然として待機児童問題は解消されていません。その反面、地方では子供の数が減り、自治体はどうやって移住してきてもらうか頭を悩ませています。
「保育園入れないなら地方に住めばいいんじゃない?」という簡単な問題でもなく、都心部には都心部なりの良さもあり問題もあり、地方には地方なりの良さや問題があるのです。
筆者は東京で生まれ育ち、結婚後も8年ほど子供を東京で育てたのち、現在は妻の故郷の福井県で子育てをしていますが、地方では住んでみないとわからないような"空気感"みたいなものに気づくことが多々あります。果たして地方での子育ては吉なのか?それとも凶なのか?移り住んで気づいたことが色々とありました。(文:ちばつかさ)
「きっと地方にはゆるやかな時間が流れて、子育てに向いているはずだ!」と移住するも……
都心部といえば容易に想像できることが人の多さです。人が多いのに土地は少なく、当たり前ですが人がひしめき合って生きている。子供の数ももちろん多く、子供が多いのに遊び場は狭くて少ないし保育園も狭くて少ない。待機児童が増えるのは当然!の環境が揃っています。
一方で地方はというと、人が少ないけど土地が多くて広い。わがままを言ってしまえば人が多くて土地も多くて広い。人が少ないなら土地は少なく狭いだったら一番いいし問題もなさそうですが、そんなことは現実問題無理な話。この都心部と地方を表面だけでみると「やっぱり地方は環境が整っていて子育てには最高やね」って思われがちですが、そう単純な話ではないのです。
厚労省の調査では、都道府県別の年収ランキングでやはり東京はダントツでトップ。そんな東京で暮らしていると自分も勝利至上主義ならぬ、経済至上主義的な感覚になっていました。稼いでなんぼ、働いてなんぼ。そして、森や林、空き地はどんどん住宅に変わり自然環境も減っていく。忙しない東京に疲れてしまい「きっと地方にはゆるやかな時間が流れて、子育てに向いているはずだ!」と思い地方に移住しました。
地方は自然環境も子育て環境も充実していて、住んだ地域は待機児童もゼロ。経済活動も緩やか。そして周囲の人とも仲良くできて……なんて思っていたのですが、人間関係という、人がもっとも悩む部分で違和感に気づきました。
子どもが不登校になると隠そうとする親
地方では都市部よりも人間関係が濃いことが多く、何をするにも周囲との協調性が求められがちです。そして、協調性を求める傾向が強ければ強いほど、協調性がない人を排除する動きを作り出します。裏を返せば「協調性ってなに?」って思っているほうが実は多様性があったりします。
地方独特の部落や集落において"一般的な標準を満たさない"とか"標準から逸脱している"と異質物として扱われるようになります。教育の現場でも、同じことをできない子供は"他と違うもの"としてみられてしまう。
しかも、世間が狭く人が少ないからよりそれが目立ちます。東京のような都心部では目立たないものでも妙に目立ってしまう。目立ってしまうからどうするかというと、それを隠そうとします。
例えば、子どもが不登校になったり、障害を持っていたりすると、そのことを隠そうとする親もいます。隠すことは前向きではないからそこに人間関係の軋轢が生まれます。地方に住んで感じた"住みづらさ"はそんな"合わせなきゃいけない人間関係"にあったんです。
こんなこともありました。仕事のため車で家を2週間ほど空けたのち帰ると、妻から「どうやら離婚したんじゃないか、病気で入院したんじゃないかって近所で噂になってるよ」と。世間が狭く人間関係が密接であるがゆえに、なにか普段と違うことが起きると噂になりもします。これが子供に対してだったら……やっぱり隠したくなるのが人間の心理なのかもしれません。
妻は地方で生まれ育ち東京に8年住んだのちにまた地方に戻りました。そんな妻も「人間関係は東京のほうが楽だね」と言っていました。待機児童問題や生活苦などの問題は確かに都心部にはあるかもしれません。だからといって地方での子育てがベストかというと、実は人間関係の問題があったりもする。
結局「どこがいいのか?」ではなく「どのようにしていきたいか?」が子育て環境を選ぶ一番のキーワードになるのかもしれません。都心部には都心部なりの、地方には地方なりの良さや悪さがある中でみなさんはどう子育てを考えていきますか?
【筆者プロフィール】ちばつかさ
柔道整復師、メンタルケア心理士、元プロ野球独立リーガー。東京と福井で投げ銭制の接骨院「小道のほぐし接骨院」を経営しのべ10万人近くの体と心と向き合う。野球経験を活かし都内で"野球を教えない"野球レッスンも運営。【公式サイト】