これまで宇宙開発は、先進国が国を挙げて取り組むプロジェクトだった。それが民間のエンターテインメントに利用されるようになる。衛星やロケットの開発コスト低減とあいまって、多くの人が宇宙を利用できる時代に突入している。

費用・回数、課題に突破口
 重量100キログラム以下の超小型衛星が世界中で開発され、宇宙ビジネスへの敷居は低くなった。次にネックとなるのは、衛星を宇宙に運ぶロケットだ。小型固体燃料ロケット「イプシロン」は、やはりこの点でも突破口を開く。

 イプシロンの最大の強みは打ち上げ費用の安さ。日本の基幹ロケット「H2A」の打ち上げ費用は約100億円。これに対し、18日に打ち上げたイプシロン4号機は約55億円。H2Aの半額だ。

 イプシロンの打ち上げ費用は、まだ下がる。機体システムを開発・製造するIHIエアロスペース(東京都江東区)は、全工程管理を担うことでさらなるコスト削減に取り組む。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年度の打ち上げ予定の新型基幹ロケット「H3」との技術共用をし、イプシロンの打ち上げ費用30億円以下を目指す。

 打ち上げ費用が2分の1、3分の1と下がっていくにつれ、打ち上げはこれまでよりも頻繁にできるようになる。打ち上げのスケジュールも立てやすい。

 H2Aをはじめとする大型ロケットは大規模なプロジェクトには適しているが、実は、小回りの利く宇宙実証の環境やチャンスを求める宇宙ベンチャー(VB)には必ずしも適していない。小型衛星を宇宙軌道に投入するには、別の衛星を載せるロケットに相乗りすることになるが、主衛星の計画に左右されることになる。大型ロケットでは、搭載する主衛星は多くが大規模なプロジェクトで、プロジェクトに参画していない宇宙VBは大変な“待ち”を強いられる。その間、VB経営者は、事業費用の調達をどう投資家に説明するのだろうか。

 山川宏JAXA理事長は「イプシロンは国のロケットとして、小型衛星をタイミング良く打ち上げることが使命。打ち上げ時の機体環境は世界最高レベルに達した」と胸を張る。

 イプシロンをタイミングよく打ち上げる体制を国が整える。宇宙VBは、それに沿って事業計画を描く。計画を成功させられるかはVBの領域だ。イプシロンは、国とVBが互いに作用しながら新たな産業を切り開く第一歩となる。

(文=冨井哲雄)