韓国を追いつめたU-21日本代表を英国人記者が称賛 「東京五輪への記念すべき第一歩」
アジア大会決勝での初の日韓戦で、一世代上の相手に勇敢な戦いを挑む
アジア大会男子サッカー決勝が1日に行われ、U-21日本代表はU-23韓国代表に延長戦にもつれ込む死闘の末に1-2で敗れ、銀メダルに終わった。
インドネシアの地で勇敢な戦いを見せた東京五輪世代の戦いぶりを、ワールドカップを6大会取材し、“アジアサッカー通”としても知られる英国人ジャーナリストのマイケル・チャーチ氏が総括。約半月に及ぶ大会期間中に見せた“森保チルドレン”の、チームとしての進化を称賛している。
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アジア大会の開幕前に、この光景を誰が想像しただろうか。日本よりも上のU-23年代で構成され、さらにイングランドの強豪トットナムのレギュラーを張るソン・フンミンらオーバーエイジ3選手も招集した韓国に、21歳以下の日本がここまで勇敢な戦いを見せるとは――。
彼らは銀メダルを胸にインドネシアから去ることになった。だが、俯く必要はどこにもない。
韓国はロシア・ワールドカップのメンバーを4人も擁していた。そして、選手は“兵役免除”という特権を獲得したい情熱に突き動かされていた。今大会開幕時に韓国の金メダルへの挑戦を阻む存在はないように見えた。
森保一監督のチームは圧倒的な経験値を誇る韓国に対し、規律と気持ちの入ったパフォーマンスを見せた。ソン・フンミン、イ・スンウ(ヴェローナ)らヨーロッパのクラブで活躍する実力者たちに問題を突きつけた。
原輝綺(アルビレックス新潟)、板倉滉(ベガルタ仙台)、立田悠悟(清水エスパルス)の最終ラインは統制が取れていた。訓練され、運動量も絶大だった。ハンブルガーSV移籍の決まったファン・ヒチャンの中盤からの飛び出しにも上手く対抗していた。
そして、延長戦まで日本の中盤もソン・フンミンを遮断し、彼とチームメイトに決定機を作ることを許さなかった。最終ラインの手前で、松本泰志(サンフレッチェ広島)と渡辺皓太(東京ヴェルディ)の守備陣は韓国の攻撃陣にフラストレーションを与えた。
“森保チルドレン”にとっては何ものにも代えがたい財産に…
残念ながら、試合のエンターテイメント性は著しく欠いていた。大半の時間帯は流動性を欠いたが、韓国の攻撃陣を抑え込もうとする日本の決意とともに、森保チルドレンの守備は非常に機能していた。
三好康児(北海道コンサドーレ札幌)と岩崎悠人(京都サンガF.C.)は韓国守備陣に問題をもたらすプレーを見せるシーンもあった。三好のトリッキーさとスペースを見つける能力は、韓国DF陣にとって厄介な存在だった。だが、どちらもわずかなゴールへの兆しを希望に変えることはできなかった。
それでも、完全に本気モードだった一世代上の韓国を相手に日韓戦を120分間戦った経験値は、森保チルドレンにとっては何ものにも代えがたい財産になったはずだ。大会初戦のネパール戦ではどこか頼りなげで、連動性も見られなかったチームは格段に機能性を高め、ソン・フンミンを抑え込んだ守備面の組織作りと向上は見事だった。
2020年東京五輪に向けて、大きな期待を抱かせてくれたインドネシアでの記念すべき第一歩になったと思う。
[記者PROFILE]
マイケル・チャーチ。英「PA通信」のアジア支局長、AFC機関紙「フットボール・アジア」編集長を歴任。ワールドカップとアジアカップをそれぞれ6大会取材したスポーツジャーナリスト。かつては東京在住で、現在は香港に拠点を置き、アジアサッカーを20年間カバーしている。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)