たった一行で全てを伝えるコピーライティングの「技」
-ネットやデジタルツールが普及した今のコミュニケーションに関する問題意識を教えてください。
「良い仕事」と「文脈」の関係
「速くて短いコミュニケーションは前後の文脈が疎かになる。例えば裁判で判決を下す時は前後の文脈が基準になる。「盗んだ」という現象だけで量刑は決められない。飢えて魔が差したのか常習なのかで量刑は変わる。「この場合はこういう判断がふさわしい」ということを作っていくのが法律という学問。法律ですら文脈を重視するのに人同士のコミュニケーションは法律よりも条文主義的になっている。言葉の背景や文脈を見ないで、その一言で判断してしまいがちだ」
-どのような弊害が生じていますか?
「仕事の質に悪い影響を及ぼしている。最近は仕事で要望を伝える時に「理由は不要」「単に用件のみを伝えれば良い」という風潮が目立つ。「気持ち」が抜けている。要望が生まれた背景まで伝えるべきだが、そのやり方では良い仕事はできない」
「良い仕事をするためにはコミュニケーションの中に文脈が必要。「ここを大事にしようという話になったので、こう修正したい」と言われれば、「だったらこうした方がもっと良くなりますよ」とより良い提案を返せる。クリエイティブディレクターとしてスタッフにディレクションする時も機械的な依頼は極力しない。「なぜそう考えたのか」という気持ちを語る。それを怠ればちぐはぐな企画が出て来てしまう」
かつての名作コピーは今でも通じる?
-コピーライティングで重要なことは何ですか?
「広告コピーは一行の世界。コピーとは一行で文脈を伝える技。色々な要素を一行に込め、色々な連想をしてもらう。最も重要なことは、読み手に「そのコピーは自分に向けたものだ」と思ってもらうこと。自分事として受け取ってもらい「自分にとって価値がありそうだ」と感じてもらうこと。付け加えるならば、広告主がどんな気持ちで商品やサービスを提供しようとしているのかまで感じ取ってもらいたい」
