ベルギー戦は1点差の「惜敗」。しかし、「惜しかった」で済ませてはいけない。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 決勝トーナメント1回戦で日本は、ベルギーに2-3で敗戦。ベスト16で大会を去ることになった。「惜しかった」「感動をありがとう」。そんなふうに世間は、今大会の戦いぶりを称えるかもしれないけど、それで終わってはいけないよ。
 
 たしかにベルギー戦は1点差で、いわゆる「惜敗」というやつだけど、「惜しくも負けた」というのはなんの慰めにもならない。そこに差があることを認識しなければならないんだ。
 
 冷静に分析すれば、相手のほうがチャンスを圧倒的に作っていたし、2点目、3点目なんて完璧に崩されていた。あれだけ必死に守っていても3失点してしまったんだ。ギアを入れられると完全に後手を踏んでしまっていたよね。
 
 露呈したのは、経験不足だった。カウンターからうまく2点を先行したのは良かったよ。ただ、2-0になってからの試合運びは非常にもったいなかった。西野監督が試合後に「もう1点取れた」と言っていたように、“いけるかも”と思って欲が出てしまったようだ。あそこでは、2点を守り切る試合運びをすべきだったよ。流れに沿った選択ができるかできないか。そこに世界とのレベルの違いがあるね。
 
 逆にベルギーの対応は素早かったね。2点のビハインドになると、フェライニという高さのあるカードを切って押し込もうとしてきた。それなら日本は、植田など長身のCBをもうひとり入れて、そのポイントを消すべきだったんだ。つまり、柔軟性という点で完全に劣っていたわけだ。
 
 たとえ攻めるにしても、本田の投入は得策ではなかった。原口のゴールの場面でも分かったように相手の5番(ヴェルトンゲン)は足が遅かった。それなら左サイドには武藤のような足の速い選手を入れるべきだったね。本田はプレースキックでチャンスを作ったけど、流れのなかでは仕事ができていなかったよ。
 
 ここまでの試合で交代策が当たっていたこともあって、采配がパターン化してしまったんだ。ベルギーはこれまでの相手よりもレベルがもっと高くて、シチュエーションも違うことを踏まえなければいけなかった。

 今回は、パスを回すテーマはなかったのかな。2点リードしていた場面こそ、ボールを回して時間を稼ぐべきだったのではないかな。
 今大会を振り返ると、結局10人のコロンビアとの初戦に勝っただけで、セネガル戦では追いつくのがやっとだったし、メンバーを落としたポーランド戦ではレベルの差が明らかだった。そして、ベルギー戦も力負けだ。
 
 たしかに精一杯戦っていたことは認めるけど、これまで実績を積んできた選手たちでも、1勝しか挙げられず、ベスト8への壁は越えることはできなかった。
 
 今後の日本の課題は、世代交代だよ。
 
 今大会はフランスやブラジルなど若返りに成功したチームの勢いを感じる一方で、メッシ擁するアルゼンチン、クリスチアーノ・ロナウドのポルトガル、その他にスペインやドイツなど、「今大会がラストチャンス」だと言われる選手を中心に据えたチームは、早期敗退する傾向にある。世界でも「世代交代の大会」だと言われているようだ。
 
 日本も今大会が終わって、メンバーの多くが変わるだろう。本来なら、今大会までにもっと若い選手が出てきて、どんどんベテランに取って代わらなければいけなかった。ここからさらに上を目指すには、4年というスパンではなく8年とか長期的な対策を練る必要があるよ。
 
 その点では今回のワールドカップは良い勉強になったのではないかな。例えば、ベルギー戦の最後のカウンターのシーン。エリア付近でボールを受けて日本のゴール前まで運んだのは、ゲームメーカータイプのデ・ブルイネだった。これを見て柴崎は何を思っただろうね。ロングパスを捌くだけでなく、自らドリブルで仕掛けて数的優位を作れなければいけない。そういう進化の必要性を感じていたとしたら、彼はもっと良い選手になれるはずだ。
 
 日本代表は、この大会をもって、積み上げてきた多くの“在庫”を失う。新たに日の丸を背負うことになる若手の台頭に期待したいね。

【日本代表PHOTO】日本 2-3 ベルギー|原口、乾のゴールで2点リードも…。 試合終了間際に逆転を許しベスト8進出ならず