NHK「アスリートの魂」では、バスケットボール男子日本代表の富樫勇樹を特集。身長167センチと小柄なバスケットマンがいかにスタイルを確立させたかを伝えた。

1歳を過ぎたころから自宅の中で小さなバスケットゴールを使い遊んでいたという富樫。父・英樹さんは、息子にほとんど助言しなかったという。ただ、自身と夫人の身長から、勇樹に高さは見込めないと考え、小学校3〜4年生のときに「大きい選手と戦うにはボールを浮かせ」と教えたそうだ。

実際、富樫は背が低くてもシュートを積極的に放ち、中学時代に全国制覇を果たしたときも、身長165センチながらチームの得点王に輝いた。だが、高校時代にアメリカに留学すると、大男たちに囲まれ、シュートを打つ機会がなくなり、パスを回す役割に徹するよう求められたという。

帰国後、プロ選手となり、秋田ノーザンハピネッツに入団した富樫には、シュートを打てる場面でもパスを選択するなど、アメリカでのスタイルが染みついていた。だが、小学生のときから富樫を知る当時のヘッドコーチ・中村和雄氏にしっ責される。「シュートを狙わなければお前ではない」。

守備を考えるならもっと大きい選手が良いのは当たり前と指摘する中村氏に、富樫は「点数のとれないチビはただのチビ」と言われていたという。「ひどくないっすよね」とクレームをつけつつ、富樫は「それが本当に刺さって、自分のこういうプレースタイルが徐々にできあがった」と明かした。

中村氏の指導を受けるうちに、「小さいからこそシュートにこだわる」が信念となった富樫。英樹さんは、息子があえて「身長167センチ」と公表していることが、「チビを売り物にしている」証であり、「小さくてもやれるっていうのはアピールしている」のだと述べている。

富樫自身も「この身長でやっているだけでハンデがかなりある」と強調。「それをどうほかのスキルで補えるか」「身長のマイナスをプラスに変えていきたい」と述べ、そのためにシュートを常に打つ気持ちでいると明かした。

そんな富樫は子供たちからも人気だ。身長で悩んでいる子供は「いっぱいいると思う」という富樫は、そういう子供から声をかけられると明かし、「小さいから諦めるのではなく、富樫ができるなら自分もできると思ってもらえたら、やっぱりうれしいかなと思う」と述べた。

日本男子は東京五輪出場を目指している。年齢的にも経験を積んだ「すごく良い時期」に五輪があるだけに、富樫は「何としてでも出たい」と意気込んだ。