ローソンの生鮮宅配サービスが失敗に終わりそうなこれだけの理由
コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回のローソン「まちかど厨房」の話題に続いて今回取り上げるのは、同じくローソンが新たに始めた生鮮宅配サービスについて。当日朝に注文した生鮮食料品が、その日の夕方に近所のコンビニで受け取れるということで注目を集めている当サービスですが、定着するのは難しいのではと日比谷さんは分析しています。
ローソンの新サービス「生鮮宅配」、定着は難しいと断言する理由
ローソンは3月6日、生鮮食料品の注文をネットで受け、コンビニ店頭で決済と商品の受け渡しを行う、「ローソン フレッシュ ピック」という新たなサービスを始めました。
ユーザーが午前8時までにアプリで予約をすると、その日の午前中にEC物流センターで商品がピックアップされ、昼頃には出荷。指定された店舗に商品が納品されることで、当日の午後6時以降には予約した商品を店頭で受け取ることができるそうです。
販売されるのは、野菜・果物・豆腐・納豆などの食品や調味料のほか、食材と調味料などがセットになったオイシックスドット大地の「Kit Oisix(ミールキット)」、くわえて成城石井などのスーパーや専門店の商品など約500種類。なお、1回あたりの購入金額1000円以上となっています。
米国で伸びているピックアップサービス
今回、ローソンが新規事業として参入してきた生鮮食品の宅配(今回は、店頭ピックアップサービス)市場は、どのような市場なのでしょうか?
実はアメリカのスーパーでは、この手のピックアップサービスが大きく伸びており、ウォルマートでは「ピックアップタワー」と呼ばれるインターネット購買商品を店頭で引き取るサービスを拡充させています。既存のスーパーとしては、Amazon等のネットショッピングに対抗するために、リアル店舗の強みを活かしたこのようなサービスを、今後大きく伸ばしていきたいと考えています。
というのも、ネットショッピングは商品を自宅まで配達してくれる点では良いサービスなのですが、昨今の女性の社会進出もあって、配達される時間に在宅するのが難しいというのが現実的な問題として存在します。この「家にいなくてはいけない」というネックをクリアしたのが、この店頭ピックアップサービスなのです。
注目集める「働く女性」という客層
日本の働く女性(ワーキングママ)の現状を調べてみると、昭和60年の働く女性の数は1548万人だったのに対し、平成27年には2474万人(+926万人)と大きく増加。くわえて、待機児童等の問題を抱えている潜在的な就業希望ニーズが、約300万人いると推計されます。人口減少が叫ばれるなかで、働く女性というのは唯一といっても良いマーケットが伸びている客層になります。
この客層を獲得することが、都市部で食品を扱う小売業にとって今後の躍進のカギを握っているのでしょう。これまではコンビニがそのニーズを少しずつ獲得してきましたが、ワーキングママは主婦でもあるため、コンビニの弁当・おかずで家族の夕食を提供することには、抵抗感があると想像されます。よって、生鮮食品を必要な分だけ素早く購入できるこのようなサービスは、高いニーズがあると思われます。
もちろん、これまでにも食材の宅配サービスを行う企業は多く存在しました。
代表的な2社の営業数値を確認してみたところ、食材にこだわりを持つOISIXは、近年順調に売上を伸ばしています。また生協も、大きく落ちることも伸びることもなく安定しています。
ローソンの宅配は成功するのか?
このように見てみると、「ローソン フレッシュ ピック」は今の世の中のニーズにマッチしているのは間違いなさそうなのですが、実際に普及するのでしょうか。
近所にある食品スーパーやドラッグストアに行けば、食料品が安価で販売されており、消費者の考える買い物価格の値頃感は低めに設定されています。いっぽうで、Oisixのようにこだわり食材を中心に販売すると、一定の客層はつかめますが、比較的割高ということもあって、大多数の主婦客を獲得することは簡単ではありません。
低価格を実現しているネットスーパーに対して、「ローソン フレッシュ ピック」は近所のコンビニで受け取れるという利便性で対抗するしかなさそうですが、それが価格の差を超えるほどの魅力として、ユーザーに受け入れられるかどうか。筆者としては、はなはだ疑問に感じます。
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