都内で開催された黒坂さんと矢口さんの被災地支援コンサートに出席された(10月8日)

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「コンサートが終わってから15分間、美智子さまとお話ししたところ、“たいへん素晴らしかったです。どの曲も心に沁みました”と、感想をいただきました。

エレガンス感じる美智子さまの写真

 “特にアンコールの『一本の樹』は、私もついつい一緒に歌ってしまいました”と、おっしゃってくださいました」

 そう話すのは、オカリナやリコーダーに似たハンガリー生まれの笛である「コカリナ」を日本に紹介し、その演奏家でもある黒坂黒太郎さん(68)。

 10月8日、美智子さまは東京都中央区で開かれた、東日本大震災被災地支援を目的とする『矢口周美「ありがとう」コンサート』に臨席された。

 この会では黒坂さんがコカリナを演奏し、妻の矢口さん(65)が歌手として出演。ふたりはコンサートの終了後に美智子さまと懇談したという。

「美智子さまは、“アンコールの『一本の樹』をきちんと歌ってみたいので楽譜が欲しいです”と、おっしゃったあと、私がつけていた“奇跡の一本松”からできたストールに興味を持たれ、感触を確かめておられました」(矢口さん)

 岩手県陸前高田市の高田松原に7万本もあった松の中で、東日本大震災の津波後も唯一、残った“奇跡の一本松”。その松からストールに生まれ変わったことを聞いた美智子さまは感慨深いご様子だったという。

 そもそも、黒坂さん夫妻が美智子さまと交流を持つきっかけとなったのは、'98年に長野県で行われた冬季五輪。

「冬季五輪のときに、道路を整備するために伐採された木で作られたコカリナの演奏を聴いて、コカリナに興味を持たれたそうです。

 それから長野市長を通じてご連絡をいただき、美智子さまにコカリナをご教示することになりました。

 とはいえ、教えるというほどではなく、妻と一緒に伺って音楽談議をさせていただいている程度です」(黒坂さん)

 交流が始まってから約18年の間、年に1回のペースでお会いしている黒坂さんが、美智子さまがコカリナに魅入られた理由を明かしてくれた。

「美智子さまがご興味のあるものとコカリナがぴったりと合っているんです。“樹木”や“音楽”がお好きだったり、子どもに対してもお心を配られていることもあり、長野五輪でコカリナを演奏する子どもたちを見て“吹きたい”と思われたそうです。

 しかも、お出かけされる際には、いつもハンドバッグにコカリナを入れて持ち歩いていて、お時間があれば吹いていらっしゃると女官の方からお聞きしました」(黒坂さん)

 今回のコンサートでは、戦前や戦中に生まれた“戦争体験”のある72歳以上の人たちで構成されるコカリナ合奏団『LIFE』の演奏もあり、美智子さまも楽しまれた。

「『LIFE』については、“シューベルトのアベマリアがとてもよかったです。私も吹いてみたいです”と、おっしゃっていました。

 『LIFE』の方々は戦争を体験しているので、平和の大切さを感じながら演奏されています。

 当時を知る美智子さまも“平和への思い”を強くお持ちでいらっしゃって、“平和な世界にならなければならない”と、常におっしゃっています」(黒坂さん)

「平和」「被災者」への揺るぎないお気持ち

 黒坂さんがそう話すとおり、太平洋戦争中は疎開のために各地を転々とされていた美智子さま。神奈川県藤沢市の鵠沼や群馬県館林市、その後、軽井沢で終戦を迎えていて、疎開中と戦後の3年近くの間に5度の転校を経験されている。

 '14年のお誕生日に際してのおことばでも、「平和」への強いお気持ちを述べられている。

《平和の恩恵に与っている私たち皆が、絶えず平和を志向し、国内外を問わず、争いや苦しみの芽となるものを摘み続ける努力を積み重ねていくことが大切ではないかと考えています》

 そのおことばを体現されている美智子さまは、陛下とともに先の大戦での戦没者への慰霊のため、'05年にサイパン島、'15年に西太平洋の島国・パラオ、'16年にフィリピンを訪問されている。

 そんな“平和への願い”を持たれる一方で、国内の自然災害による被災者に対しても“特別な思い”を抱かれていると黒坂さんは話す。

「今回のコンサートも被災地支援ということで開催したのですが、たいへん興味を持ってくださり、ご来場していただくことになりました。

 美智子さまは被災者に対する思いも強く、東日本大震災や熊本地震での被災者のみなさんに寄り添っていらっしゃると感じます」

 10月末には、今年7月上旬に豪雨によって被害を受けた福岡県を訪問される予定。

「両陛下は『全国豊かな海づくり大会』に臨席するため福岡県を訪問予定でしたが、予定を1日早めて出発し、九州豪雨の被災地をお見舞いされることになりました」(宮内庁関係者)

 かねてから豪雨被害を心配して、被災地へのお見舞いを希望されていたおふたりは、過去にも震災が起こるたびに現地に足を運ばれている。

「東日本大震災だけではなく、全国各地で自然災害などがあると、今でも被災地にお見舞いに行かれています。

 恵まれない境遇になった方々がいると、ご自分が現地を訪れることで少しでも元気になってほしいというお気持ちがあるのだと思います」

 そう話すのは、近著に『美智子さまに学ぶエレガンス』があり、皇室を長年取材するジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡邉みどりさん。

 美智子さまは、10月20日に83歳の誕生日をお迎えになる。地方への被災地訪問は、お身体の疲労も大きいと思われるが、その「原動力」を渡邉さんはこう話す。

「もうすぐ83歳になる美智子さまが地方へ行かれるのは身体へのご負担が大きいです。

 それでも地方を訪れるのは、皇后として象徴天皇に寄り添い、国民を励ましたいというお気持ちがあるからなのでしょうね」

 年月がたっても、美智子さまの被災地への「思い」はずっと変わっていない。

「奇跡の一本松からできたストールをご覧になっているときに、“陸前高田でこのストールができたことが、復興の手がかりになればいいですね”と、おっしゃっていただきました」(矢口さん)

「平和」と「被災者」への揺るぎのない“お気持ち”をお持ちの美智子さまは、これからも国民の心のよりどころになっていくことだろう。