さまざまな分野でAI・IoTの活用が本格化する中、エンジニアや事業開発を担える人材の獲得競争が激しくなっている。AI・IoT分野専門のコンサルタントを擁し、クライアントの採用を支援しているエグゼクティブ・サーチ会社、兆(きざし)の近藤保代表取締役にコンサルティングの特徴や採用事例などを聞いた。

三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)で支店営業、本部でデリバティブ商品の営業推進、全社ウェブビジネスを企画・推進。2000年、大手エグゼクティブ・サーチ会社に入社。大阪拠点を立ち上げ、西日本責任者、取締役ヘッドハンティング事業部長を歴任。2011年に兆を設立。通算約500件以上のヘッドハンティング実績(うち上場企業の代表取締役ポジションに20件余、取締役・執行役員ポジションで約100件)がある。名古屋工業大学大学院生産システム工学修士。 当社は、経営者、経営幹部およびプロフェッショナル人材を対象としたリテイナー型のサーチ会社です。技術者や社外取締役などのサーチ実績も豊富で、クライアントの要請を受けて探し出す候補者は、コンサルタントが現職で活躍中の人材にアプローチします。

 当社のサーチは単純なスペックの追求ではなく、候補者の価値観とクライアントとの相性を重視した“摺り合わせ型”が特徴です。ほとんどのコンサルタントが10年、20年以上の経験を持ち、広範な人脈と独自のネットワークが強みです。

 また当社は世界トップ5のエグゼクティブ・サーチ・グループで世界35カ国に展開する「Alto Partners」の日本代表会社であり、グローバルなエグゼクティブ・サーチ協会(AESC)の会員として世界最高水準のサービスを提供しています。 AI・IoT人材のサーチで相談を受けるパターンは主に二つあります。

 一つは、経営トップが様々な機会を通じてAI・IoT関連の情報を得て、「我が社も本格的に取り組まなければならない」という考えを持たれて動き出す場合です。経営企画や人事の方から連絡が入る場合は、経営トップからの指示であることが多いです。

 もう一つは既存のサービスや保有技術にAI・IoTを組み合わせて新しい事業を創り出すという狙いで、この場合は事業部門や研究所などからの相談が中心です。

 AI・IoT人材の獲得競争は過熱していますので特に注意が必要なのですが、獲得した人材の能力をどのように活用して事業を成長させたり、組織を変革させていくのかという具体案がないまま採用に動いてもうまくいきません。 これはAI・IoT人材に限らず、外部から人材を獲得すること全般に言えることですので、当社のコンサルティングでは人材サーチに動く前工程の部分を非常に大切にしています。

 AI・IoT人材の採用を検討する場合、まずはAI・IoTの活用事例や企業ニーズについて整理した内容(図参照)を確認しながら、基盤構築や目的の具現化において採用する人材に求める役割や知識・スキルを整理していきます。

 その上で、求める人材が実際にどこにいるのか、具体的な社名や組織名を挙げて人材獲得へのしっかりとした道筋をクライアントと共有しています。 AI・IoT人材の採用でクライアントが当社にサーチを依頼する理由は、そもそもAI・IoT人材が限られている上、求職者が中心の転職市場には企業が求めるような候補者が存在しないからです。

 特に技術系の人材は積極的に転職に動いたり、人材紹介会社に自ら登録するようなことは少なく、現職で活躍している優秀な人材ほど転職市場には現れない傾向があります。

 そのため、この領域に限らずスピーディーかつ的確に人材を発掘し獲得するためには専門的なサーチノウハウを持つコンサルタントとの共同作業でなければ困難です。