視野が広くて、キックも正確な手塚の存在感は、試合を重ねるごとにますます大きくなっている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 7連勝で迎えたホームでのレッズ戦。今の勢いがホンモノかどうか。真価が問われる一戦で、レイソルは中川のゴールで1-0の勝利を収めた。まだ何も手にしたわけではないけど、勢いだけじゃない揺るぎない強さを十分に感じさせる勝点3だった。
 
 世界のサッカーを見渡しても、強いチームは縦に速い。つなぐ時はつなぐけど、基本は手数をかけずにフィニッシュまで持ち込む。そして、徹底的なサイド攻撃。レッズ戦でも、小池のクロスに武富がヘッドで落として中川がヘッドでねじ込む。まさに“してやったり”のゴールだったんじゃないかな。
 
 そんなレイソルの快進撃を支えているのが、ボランチの手塚だと思う。彼が中盤に入って、明らかにレイソルは変わった。細くて小さいけど、そんなのは関係ない。よく言われる“サッカーを知っている”選手だ。
 
 ユース時代は4-1-4-1のアンカーを任されていた手塚は、コンダクターとしての才能を十二分に備えている。確かなテクニックでボールを落ち着かせて、CBの間に入って巧みな配給力も見せる。

 視野が広くて、キックも正確。どこに出せば最も効果的かを瞬時に判断して、確実にパスを通す。全体のバランスを取れる大谷のサポートを受けながら、持てる才能を存分に発揮し、チームを動かしている手塚の存在感は、試合を重ねるごとに大きくなっている。現在の好調ぶりを支える最重要人物は誰かと聞かれれば、なんの迷いもなくこの21歳のレフティの名前を挙げるよ。
 
 チームトップの5ゴールを決めているクリスティアーノもいいね。身体の強さはもちろん、すぐにシュートに持っていける能力は、Jリーグでも屈指だろう。以前はサイドで使われていたけど、CFでの起用が見事にハマっている。
 
 最前線にいるけど、相手ゴール前で張っているタイプではない。特に評価したいのが、あの“フラフラ”としたポジショニングだ。真ん中に陣取らず、ほんの少しだけ右サイドの伊東のほうに近づいていく時がある。ある意味、非常に中途半端な位置取りだけど、相手からすれば捕まえづらい絶妙な場所にいる。
 
 敵のDFにとっては、伊東を見ればいいのか、クリスティアーノをケアすればいいのか、判断が難しくなる。伊東が中央に絞ってから、サイドに飛び出してフリーになれるのも、ウロウロしているクリスティアーノが相手をひきつけているから。

 その振る舞いは、バルサのメッシに通じるものがあると思う。今後も抜け目なくゴールに直結する仕事が期待できそうだね。
 レッズ戦でゴールを奪ったトップ下の中川の貢献度も高い。彼も小柄だけど、トップ下のプレーエリアに留まらず、運動量豊富に走り回って前線を活性化させている。

 とにかく、ボールの引き出し方が抜群に巧い。そして前を向く力も凄い。このふたつをストロングポイントとして兼備するから、狭いスペースでも難なく自分の好きなプレーができていると思う。

 味方が生きるようなフリーランも厭わないし、90分間通して、フルプレスをかける献身さもある。守備面では、中川の頑張りによって後ろはだいぶ楽になっているというか、ボールの取りどころが限定されているはずで、それがチームとしての守備力の高さにつながっているはずだ。
 
 その他では、右SBの小池もハイパフォーマンスを見せていて、いまや欠かせない戦力になっているよね。
 
 そんなレイソルの今後のさらなる進化を考えると、“中途半端な”ロングフィードを意識したほうがいいように思う。
 
 長いボールを使う時、一発で裏を取って相手陣内の深いところまで運ぶのもいいけど、それだとゴールラインを割ってしまう可能性がある。受け手がボールを保持できたとしても、選択肢としてはクロス一択になるケースが多い。
 
 それでは崩しのバリエーションは広がらない。ではどうすればいいか。ロングフィードにせよ、サイドチェンジにせよ、狙うのはサイドのセンターラインに近い場所。縦方向の“いってらっしゃい”のロングフィードではなく、なるべく手前というか、相手のSBとサイドハーフの間ぐらいだ。
 
 受け手は、そこからカットインしても良し、中に絞ってSBの攻め上がりを促しても良し、FWが外に流れて、そこで何人かが絡んで崩しても良し、だ。
 
 縦に速いサッカーも、いずれは研究されるはず。その時に、次の引き出しをすぐに開けられるように準備をしておきたい。縦ばかりでなく、横。攻撃の起点作りが10メートルから15メートルほど後ろに下がるけど、その距離感を上手く使い分けられたら、レイソルはもっと強くなると思う。