WHO(世界保健機関)が「世界禁煙デー」に定めていた5月31日、喫煙者解放総決起集会「全部、吸っちゃうね。」が高円寺パンディットで開催された。

登壇したのは、作家の中村うさぎさん(59)、『日本会議の研究』で知られる菅野完さん(42)、「やや日刊カルト新聞」総裁の藤倉善郎さん(42)。もちろん3人とも愛煙家だ。行き過ぎた喫煙規制に対し、「国家がライフスタイルに口出しするのはおかしい」と反対の声を上げた。

「全面喫煙可のレストランに妊婦が来店し、周囲は煙草を我慢するはめに」

会場となった高円寺パンディットには、喫煙者と非喫煙者合わせて30人ほどが来場。この日だけ特別に全面喫煙可となった店内には、来場者のくゆらす紫煙が立ち込めていた。

イベントは、「喫煙者差別」への問題提起で始まった。イベントを主催した藤倉さんは、国家の規制とは別に一般の人々の間で「喫煙者差別」が蔓延していると指摘。マナーを守れというならともかく、喫煙者を人格攻撃するのはおかしいと語った。

藤倉:喫煙者のポイ捨てや歩きたばこを批判するのはわかります。それはマナー違反ですからね。それに受動喫煙の問題がある以上、分煙をしてほしいというのももっともな主張です。しかしそうしたマナー違反への批判を超えて、喫煙者の人格を否定するような人も少なくないんです。

例えばツイッターには「喫煙者全員死ねbot」というものがあります。このアカウントは「喫煙者は病気」「わざわざ早死するために税金払ってまで吸うの?頭大丈夫?」などとツイートしています。他にも「喫煙者には人権がない」「ホテルに喫煙者用の犬小屋を立てましょう」「喫煙者は低学歴の貧乏人ばかり」……などと言う人がいるんです。

また、ある大学では、「喫煙者との交際が無理だと思っている人は70%、結婚が無理だと思っている人は80%に上る」というポスターを学内に掲示してあったそうです。医療系の大学の中には、喫煙していると入学資格や出願資格を付与されない大学までありますからね。ここまでくると「喫煙者差別」だと思います。

菅野:喫煙者というのは自らの意志で煙草を吸っているわけです。人種や民族とは異なり、自らの意志でやめることもできる。だから「差別」とは言えないとは思います。

ただ喫煙者に対するこうした発言は確かにおかしいと思いますよ。ナチスと同じなんですよね。ナチスって巨大な禁煙運動なんです。ヒトラーは酒も煙草もやらない菜食主義者。それに対して僕らは酒も肉もセックスも好きな快楽主義者です。でも僕らの方が健全ですよ。人を殺したりしませんから。きっと禁煙を勧める人というのは、自分が間違っていると思う人を殺すのが平気な人たちなんじゃないでしょうか。

中村:煙草が嫌いなら嫌いでいいと思うんです。喫煙者と非喫煙者できちんと住み分ければいい。それなのに喫煙者は悪であり、悪には何を言ってもいい、悪はこの世から締め出してしまうべきだと思っているんでしょうね。

以前、新宿のイタリア料理店に行ったときのことです。喫煙できるということを食べログで確認した上で、予約をするときにも電話口で確認したんです。それなのに店に行ってみたら『今日は妊婦さんが来たので煙草はご遠慮ください』というんです。この妊婦はわざわざ全面喫煙の店に来て、他の客に我慢を強いたわけです。

どうしてそんなことをする権利があると思っているのだろうと考えたんですが、やはり喫煙者は悪で自分が正義だと思っているんでしょうね。本当は快・不快の問題にすぎないのに、それを正義の問題にすり替えているんじゃないでしょうか。

リオ・オリンピックのときは路上で煙草も煙草以外のものも吸っていた

喫煙規制は2020年の東京五輪を理由に推し進められてきた。しかし海外の五輪を取材してきた菅野さん、藤倉さんによると過去の大会は必ずしもクリーンではなかったという。

菅野:リオデジャネイロでは、煙草も煙草以外のものもみんな路上で吸っていましたよ。路上で注射をしている人までいましたからね。そもそも外国では普通に街中で煙草を吸っています。喫煙にうるさいのは、韓国とアメリカと日本と中国の北京くらいですね。イギリスにも規制はありますが、ロンドンでは誰も規制なんて守っていません。パリも煙いですしね。

藤倉:僕も北京オリンピックには行きましたが、結構吸っていましたね。日本人は縛られることで安心を感じるんでしょうか。中国では規制があっても、それをいかにかいくぐるかを考えていると思います。

煙草の次にはお酒やジャンクフードが規制される恐れがある

東京都の小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」の喫煙規制にも話は及んだ。同団体は、子どもを受動喫煙から守るため家庭内や自家用車の中での喫煙を規制する条例を検討している。

藤倉:各家庭によって状況が異なっているのに、一律に規制するのはどうかと思うんです。家族構成も家族の中に喫煙者がどれくらいいるかもまちまちです。それにマンションに住んでいる人もいれば、2階建ての一軒家に住んでいる人もいる。換気扇の下で吸えば、他の家族が受動喫煙をしないで済むという場合もあるでしょう。

菅野:都民ファースト的なものは、すなわちファシズム路線だと思います。「官」の手が「民」に入ってくるのを阻止する必要があります。アメリカには性行為のときの体位を規制する法律がありますが、この条例はそれと変わりませんよ。

藤倉:ジャーナリストの斎藤貴男さんは、ご自身は煙草が嫌いでしたが、煙草への規制には警鐘を鳴らしていました。煙草の次は酒が規制され、その次にはジャンクフードが規制されると警告していました。日本でも厚生労働省が飲酒の規制を検討する部署を立ち上げたそうです。(※1) 煙草への規制は世の中がおかしくなる始まりだと思います。ただ単に俺たちが喫煙者だから煙草を吸わせてくれという話ではないんです。

菅野:ライフスタイルに国家が口出しをするとろくなことがないという話ですよね。店舗の規制についても、国家が決めるのではなく、お店が決めればいいと思いますよ。本当にいい寿司屋はいまでも喫煙可です。寿司と煙草は本当に合いますからね。お店側が煙草と一緒に料理を楽しんでもらいたいと思えば喫煙可にすればいい。そうでないなら禁煙にすればいいと思います。

今後、喫煙規制に反対していくためにはどうすればいいのか。藤倉さんは「霞が関で歩き煙草をしながらデモをやりたい」「(ダイナマイトのように)体中に煙草を巻き付けてライター片手に厚生労働省に行く」と冗談交じりに語り、会場の笑いを誘っていた。デモを実施する際は、歩き煙草に課される罰金2000円分を参加者からあらかじめ徴収しておくという。

(※1)4月1日に開設されたアルコール健康障害対策推進室のこと