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●5GやAIなどの基盤技術で2大巨頭が協力
トヨタ自動車とNTTが「コネクティッドカー」向けICT基盤の研究開発で協業に合意した。クルマの「知能化」をキーワードに、自動車メーカーは業種を超えた連携を拡大させているが、国内の動きとしては、ついに両巨頭が手を組んだといった印象だ。

○協業の対象分野に5G、AIなど

協業の狙いについて両社は、「クルマから得られるビッグデータを活用」し、事故や渋滞といった社会問題の解決や、顧客への新たなモビリティサービスの提供に必要となる技術を研究していくとしている。トヨタに問い合わせてみると、新たなモビリティサービスの具体像は今後の研究で詰めるという。

協業の対象分野は(1)データ収集・蓄積・分析基盤、(2)IoTネットワーク・データセンター、(3)次世代通信技術(5G、エッジコンピューティング)、(4)エージェントの4つ。詳しくは下に掲げる通りだ。

NTTグループからはNTT、NTTデータ、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモが参加。2018年には国内で実証実験を行う予定だという。

○既存の協業相手との兼ね合いは?

対象分野の(1)と(2)はビッグデータに関する項目だが、トヨタは米マイクロソフトともビッグデータ関連で提携しており、米国に「トヨタ・コネクティッド」という会社を設立している。この2つがバッティングするおそれはないかトヨタに聞いてみると、マイクロソフトとは個別のビッグデータ解析で手を組んでいるが、NTTとは「基盤技術」の研究を進めるので、関係性は重ならないとの回答だった。

バッティングといえば、気になるのは対象分野の(3)だ。次世代のモバイル通信方式である「5G」技術でNTTドコモと協力するというトヨタだが、同社はすでに、コネクティッドカー分野でKDDIと協力関係にあるからだ。

●排他的ではない両社の協業
○自動運転技術の進化にも“間接的に”役立つ協業

トヨタはDCM(車載専用通信機)を用いたコネクティッドカーの実用化に早くから着手している。代表的な車種は「レクサス」や「プリウスPHV」などだ。この通信にはKDDIのLTE回線を使っている。

プリウスPHVはトヨタがコネクティッドの先陣と位置づけるクルマ。音声対話サービスの「エージェント」など、ネットとつながることで何が可能になったかは以前お伝えした通りだ。

DCMの回線が5Gになれば、当然ながら通信容量は拡大するし、できることも増えるのだろう。それを見据えた今回の協業だと思ったのだが、トヨタがauからdocomo、ではなくKDDIからNTTに乗り換えた、という単純な話でもなさそうだ。

5Gは2020年頃の実用化を目指す中長期的な開発を必要とする技術であり、トヨタは「基盤の技術」(同社広報)を研究・開発するためにNTTと協力するとのこと。すでに実用的な部分で協業しているKDDIとは、あくまで関係性が違うということらしい。もっとも、KDDIも5Gの導入に向けた取り組みは進めているので、両社の住み分けがうまくいくかどうかについては今後の展開を見守るしかない。

コネクティッドカー分野におけるトヨタとNTTの協業で、対象分野に「AI」の文字が見えるところから考えて、両社は自動運転も視野に入れて協業に合意したのだと予想したのだが、トヨタ広報によれば、今回の協業で自動運転は対象に入れていないとのこと。ただし、ビッグデータ、通信技術、AIといった要素は自動運転と密接に関わるものなので、今回の協業が自動運転技術に「間接的に」役立つことはあり得ると含みを持たせた。

○両社を核とする企業連携は進むか

これから検討するとのことで、具体的な将来像については不明な点の多い今回の協業だが、トヨタとNTTが手を組むという事実が与えるインパクトは大きい。トヨタは以前から、あらゆる異業種・IT企業と連携し、“つながるクルマ”のプラットフォームを構築したいと言っているが、将来のプラットフォーマー化に向け、国内の協業相手としてNTTは申し分のない存在といえるだろう。

「(この協業は)排他的なものではない」とトヨタ広報も話していたが、両社を核とする企業連携が進めば、業種を超えた合従連衡が進む自動車業界でも、このグループがひときわ目立つ存在になることは間違いない。

(藤田真吾)