都筑中央ボーイズ「元プロの会長、監督のもとで初のベイスターズカップ制覇を目指す!」
神奈川県中学野球特集の第6回は、都筑中央ボーイズを紹介!
3月4日に開幕する第5回横浜DeNAベイスターズカップ。ここでは神奈川県の予選を勝ち抜いた8チームが出場する。その中でも優勝候補として期待されるのが、2006年創部の都筑中央ボーイズだ。福岡第一時代甲子園準優勝投手となり、その後、千葉ロッテ、中日、巨人で活躍した前田 幸長氏(野球解説者)が創設した都筑中央ボーイズ。現在は会長を務めながらノックバットを振り、そして打撃投手も務めながら指導にあたる前田氏は、どんな思いでチームを作り、選手を育て上げているのだろうか。
前田 幸長会長(都筑中央ボーイズ)
横浜地下鉄ブルーライン・仲町台駅から約2キロ離れた場所に、都筑中央ボーイズのグラウンド(通称:都筑ジャイアンツ球場)がある。グラウンドは内野ほどの狭さしかなく、グラウンドの隣には鳥かごが2つあるだけ。しかし、それでも恵まれた環境だと前田会長は説明する。「横浜市、川崎市と人口が多い地域で、硬式の専用グラウンドで練習ができるチームはなかなかありません。自前で持つとなるとさらに厳しくなります。うちのグラウンドはグラウンドと呼べるかわかりませんが、それでも毎日練習ができる環境がある。それは幸せなことだと思います」
狭いグラウンドの中でも、A、B、1年生チームと3つのチームに分かれて練習メニューを組む。3学年になると80人になる時もあるが、それでも工夫次第で、効率よく回すことができるという。「うちはボール拾いを作らないようにしています」(前田会長)
会長である前田氏も、練習の準備をしたり、ノックバットを振り打撃投手を務めて選手のサポートにあたっている。その前田氏が指導理念で大事にしていることは、「正しい野球の考え方、技術」を伝えること。その想いはチーム設立のきっかけにもなっている。10年前、前田氏の長男がちょうど中学生になるという時、いくつかシニアやボーイズなどを見て、自分で指導したいという思いが沸いてきた。
「僕も引退して、野球を伝える側になりましたので、子供たちに野球を覚えてもらい、彼らの将来に役立てればと思いました。プロで長年やってきましたが、やはり野球は我流のやり方ではうまくなりません。上手くなるためには原則があり、そこへ向けての練習法や技術的に意識しなければならないことなど、覚えなければならないことがたくさんあります。それを教えたい思いでチームを作りましたし、そこをしっかりと教えることができるのが、わがチームの強みです」
前田氏がチームの指導力に自信を持っているのは、元プロ、強豪大学、社会人野球でプレーしてきた方々が指導者になっているからだ。
現在の監督は、都築 克幸氏。日大三時代、2001年に甲子園優勝した時の1番打者といえば、覚えている方も多いだろう。高校卒業後、中日ドラゴンズでプレーし、2005年に現役引退した後、2011年から都筑中央ボーイズの小学部の監督を経て、昨年から監督に就任している。そしてBチームの監督には、作新学院卒業後、三菱日立パワーシステムズ横浜で19年間プレーした塩澤 信之氏、読売ジャイアンツでプレーした大須賀 允氏が小学部の監督を務め、三菱日立パワーシステムズ横浜の投手として18年間活躍した門西 明彦氏が投手コーチと、錚々たる顔ぶれである。
都築監督は、「僕が教えているのは、それほど特別なことではないんですけど、高校野球で活躍できるための土台作りとして、基礎基本を教えています。うちのチームの選手たちは意欲的な選手が多く、3年間でかなりうまくなるのが特徴ですね」と指揮官の目から選手たちの成長ぶりを語る。
選手たちが意欲的の取り組めるのは、やはりコーチたちへの憧れがあるからだ。浅見 祥羽主将は、「入部するまでは実は知らなかったんですけど、あとあと、コーチの方々の経歴を聞いて凄い!と思いました。そういう方々から教えをいただけるのはありがたいです」と語る。事務局の西ノ坊さんは、「前田さんは練習の準備もしていただきますし、打撃投手を務める時は、何百球も子供たちに投げているんですよ!我々からすると子供たちはとても贅沢だと感じることがありますね」と笑う。
「甲子園っていけるよ」の言葉を胸に、甲子園出場を成し遂げたOBたちティー打撃の様子(都筑中央ボーイズ)取材日は平日だったこともあり全員が練習に合流とはならず、自主練習がメイン。ある選手はテストで授業が午前中で終わったということで、指導者が来ていなくても、鳥かごにマシンを起動させて黙々と打ち込みを行っていた。指導者に言われずとも、自主的に自分でメニューを組んでトレーニングを行っていた。「これまで活躍している選手を見ていくと、自分で考えて取り組む姿勢が備わっていて、さらに練習量が多いですね」と都築監督は語る。
選手たちはその後高校野球に進み、活躍することを目指している。そこで前田氏が選手たちに伝えているのは、甲子園に行くイメージをすることだ。「甲子園って行けるよと言います。現に僕は甲子園準優勝しているので、決勝まで行けるよとも言います。だからできないことはないんですよね。確かに行くのは難しいですけど、甲子園に出る学校は春32校、夏49校あるのですから、自分は甲子園に行くというイメージを立ててやることが大事です。もちろんそこに苦しさはありますけど、苦しい先に楽しいことがあるじゃない、と選手たちに言い聞かせています。僕は甲子園での楽しさを選手たちに伝えて、なるべく前向きな気持ちにさせて、日々の練習に取り組ませるようにしています」
その前田氏のアドバイスを受けて巣立ったOBの中に、甲子園出場を果たしている球児がいる。まず2011年の東海大相模の選抜優勝時のベンチ入りしていた松木 秀一選手、2013年夏に甲子園出場を果たした三口 直哉選手(立正大淞南)、2014年夏と2015年春に甲子園出場を果たした俊足巧打の内野手・三口 英斗選手(二松学舎大附)の三口兄弟と、わずか10年で、高校野球で活躍できる選手を育てる組織へ進化していったのだ。
初優勝のカギを握るキーマンたち上段左から高松屋 翔音選手、鈴木 朋也選手、下段左から枯木 拓渡選手、浅見 祥羽選手、山田 和選手、才津 紘大選手(都筑中央ボーイズ)今回が3回目のベイスターズカップ出場となる都筑中央ボーイズ。今年は投手力が高く、さらに打力が高い選手が揃っているのが特徴だ。エース・鈴木 朋也は、176センチ63キロと上背は平均的だが、まだ中学生ということもあってさらに身長が伸びる可能性があり、なで肩の投手体型。キャッチボールを見ていても、上半身と下半身が連動していて、綺麗なスピンがかかったストレートを投げる。球速は常時120キロ〜125キロ前後(最速128キロ)だが、コントロールも良く、完成度の高さが光る投手だ。都築監督やチームメイトからも評価は高い。
その鈴木と二枚看板を組む高松屋 翔音は、178センチ65キロとすらっとした体型をした左腕。持ち味は独特のテイクバックから繰り出すストレートとカーブだ。そのストレートは微妙に動き、さらに離す角度も独特なので、115キロ前後だが想像以上に打ちにくい。そしてカーブの曲がりも大きく、低めにしっかりと決まる。正統派の鈴木と、嫌らしさを存分に発揮する高松屋の二枚看板は大きな武器だ。
野手では、163センチ63キロと小柄だが抜群の強肩とパンチ力ある山田 和(そら)。腕っぷしが非常に強く、毎日筋力トレーニングを欠かさない。主将の浅見はチーム一の俊足を誇る内野手だ。4番に座る枯木 拓渡も、攻守でバランスが取れた右打者で勝負強い打撃に期待がかかる。そしてセンターを守る才津 紘大にも注目。177センチ60キロと細身だが、直近の春季大会で本塁打を放っており、取材日の練習でも鋭い打球を連発していた。もともと守備力が高かったが、一冬で打撃が大きく伸び、周囲の関係者からの評価も高くなっており、長打が打てる大型外野手を目指そうとしている。
今大会へ向けて、手ごたえを大きくつかんでいる都筑中央ボーイズ。元プロ、甲子園経験者、社会人野球経験がある豪華な指導者たちの指導で伸びた選手たちが、初の栄冠をつかみにいく。
(取材・文=河嶋 宗一)
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