中本牧リトルシニア「史上最多の3回目の優勝へ」
神奈川県中学野球特集の第5回は、中本牧リトルシニアを紹介!
リトルシニア日本選手権大会、リトルシニア全国選抜大会、ジャイアンツカップと、名だたるタイトルを獲得し日本一に輝いてきた中本牧リトルシニア。1978年に創立し、これまでには森野 将彦選手(中日)、乙坂 智選手(DeNA)、小池 正晃選手(元DeNAなど)らを育て、今シーズンからは日本女子プロ野球リーグの京都フローラに長尾 朱夏選手が所属するなど、男女合わせて11名のプロ選手を輩出してきた名門だ。
村上 林吉監督(中本牧リトルシニア)
自身でチームを立ち上げ、約40年に渡って指導にあたっている村上 林吉監督は「日本の野球は礼に始まり礼に終わりますから、野球を通して礼儀を教えてきました」と、話す。また、野球の面では「中学野球をしっかりとマスターして、いかに高校野球に結びつけるか」を理念にし、進学時は選手、父兄と三者面談をしているという。「やはり各々の能力や性格に合った高校でプレーするのが一番だと思うので、高校を選ぶ段階からいろいろと話を聞いて協力しています」
中本牧リトルシニアは本牧ふ頭にある専用グラウンドで日々の練習に励んでおり、練習日は土曜、日曜、祝日と平日の水曜、木曜。これに夏休みや春休みが加わる。「特別な練習というのはありません。一通り、総体的なことをしています」という村上監督だが、様々なプレーのなかで重視しているのがカバーリング。「ピッチャーであろうが野手であろうが、どのポジションでも送球が逸れた時に備えてカバーリングをしなければいけないシチュエーションがあります。これは上のレベルに行っても当然やらなければいけない基本中の基本ですが、カバーリングを意識することで実際の試合での動き方が身に付けられると思っています」
チーム作りにおいては「守備を中心に考えていますが、守るだけでは勝てませんから、外野手には多少のミスに目をつぶってバッティングの良い選手を入れています。1試合7イニングで21個のアウトを取ることになりますが、割合でいえば一つのポジションにつき2〜3個アウトを取ればいいわけですから、『イージーフライだけでも捕ってくれれば』と、思って使っています」と、村上監督。また、選手には「野球は『投げる、打つ、走る、捕る』の4つの要素でできている。その要素の中で、自分が得意なものは何なのか。どこを強化すれば試合に出て活躍できるのかを考えて練習してほしい」と、よく言って聞かせているという。
この冬のテーマは「パワーアップ」守備練習の様子(中本牧リトルシニア)そして、この冬は「パワーアップ」をテーマにトレーニングに励んできた。立川 太一選手は「練習は1時間ほど走ってから始めて、最後も30分ほど中距離のタイム走をしました。全体的に走り込みの量が増えて、きつかったです」と振り返る。また、バットを振る力をつけるために「バットトレと称して、バットを剣道のように縦にして50〜100回ほど振らせるトレーニングをやらせていました」(村上監督)。
さらに、練習が毎日あるわけではないので、自宅などで筋トレをするように推奨。「選手には腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットをするようにプリントを渡したのですが、腕立て伏せが20回できる選手なら一度にやるのは10回でも15回でもいい。数は少なくして良いので、その代わりにきちんと毎日やるように伝えました」(村上監督)。こうした指導を受けた中村 心胤選手は「オフシーズンは下半身を鍛えてきたので、バッティングに活かしたい」と、意気込んでいる。
現チームについて、村上監督は「投げるのも打つのも走るのも、全部10段階評定で5点くらい」と評しているが、その一方で「ツキがあるチーム」とも感じている。「先日の春季大会で三島リトルシニアと対戦し2点リードで無死満塁のピンチを迎えたのですが、普段だったら内野を前進させてホームゲッツーを狙うところを、1点は諦めて内野を下げセカンドゲッツーを取りにいったんです。すると、注文通りにセカンドゴロでダブルプレーが取れ、そのまま1点差で逃げ切ることがでました」
3年ぶり3回目の出場となるDeNAベイスターズカップも「出場権が懸かったクラストカップの神奈川予選で海老名リトルシニアに敗れてしまったのですが、その前の秋季大会で既に海老名リトルシニアが出場権を確保していたので、運良く出場することになったんです」。もちろん運の良さだけに頼っているわけではない。「足の速い選手はいませんが、その中でもストレートは打って変化球は見逃すストレートエンドランをやってみたり、バスターをやったりして、できるプレーの幅を広げるようにしています」(村上監督)。
村上監督が期待する4人の逸材たち左から 宮田 知弥選手、立川 太一選手、庄子 雄大選手、中村 心胤選手(中本牧リトルシニア)そんな現チームの中心選手を村上監督に4人挙げてもらった。まず、キャプテンの庄子 雄大選手は「遊撃手から投手にコンバートしたのですが、非常にテンポが良く打たせて取るピッチングができます」と、投球のリズムを高く買っている。その庄子主将は「ピッチャーはまだ1ヶ月ほどしかやっていませんが、バッターのタイプを見極めながら、とにかく低めに投げることを意識しています。バッティングは、初心に帰ってフルスイングをするようになってから調子が上がってきました。打順は1番を打つことが多いので、出塁してムードを良くしていきたいです。そして、キャプテンとしてはプレーでチームを引っ張り、今シーズンは打率4割を目標にして、投げる試合は全部勝ちたいと思います」と、抱負を語った。
「体が小さいもののパンチ力がある選手」と村上監督に評価されているキャッチャーの立川選手は「配球を組み立ててバッターを打ち取るのが楽しいです。そして、セカンド送球には自信があるので、走者を簡単には走らせないようにしたいです。バッティングでは引っ張る打球が多いので、右方向にも打てるように練習していきたい」と、課題を挙げた。
「体が大きく4番らしい雰囲気を持っている」(村上監督)という中村選手は「当たれば飛びます」というバッティングが一番の長所。「最近はバットが下から出ていたので、上から振るようにフォームを修正したところ当たりが出てきました。今シーズンは状況に応じたバッティングで打率を上げつつ、場面によっては長打を狙っていきたい」と、4番らしい打撃を目標に掲げた。
「まだ1年生ですが要所をしっかりと抑えてくれる頭の良いピッチャーで、昨秋はエース格として活躍してくれました」と、村上監督も信頼を寄せているのは宮田 知弥投手。「コントロールを重視したピッチングが持ち味で、バッターとの間合いを意識して投げています」。昨年11月にヒジを故障し、「冬はノースローでランニングやストレッチ、スクワットなどのトレーニングに費やしてきました」。今年2月に入ってからボールを投げる許可が出たばかりのため、DeNAベイスターズカップでは代打のみと出場となる予定だが、「パワーは上級生に負けますが、サインを守ってヒットを狙っていきたい」と、意欲的だ。
そのDeNAベイスターズカップでは第1回、第2回と連覇をしている中本牧リトルシニア。今大会の目標も、もちろん「優勝です。そして、1年生が実力を付けてきているので、試合を経験させながら今後につなげていきたい」と、村上監督。また、初戦は都筑中央ボーイズとの対戦になるが、立川選手は「ボーイズのチームには負けたくない」と、ライバル意識を燃やしている。運を持ったチームがゲンの良い大会でどのような活躍を見せるのか。そして、村上監督の采配にも着目したい。
(取材・文=大平 明)
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