横浜旭峰ポニー「練習で泣いて試合で笑え」

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 神奈川県中学野球特集の第3回は、横浜旭峰ポニーを紹介!

 中学生年代の硬式野球にはいくつかのリーグが存在しているが、そのひとつが1950年にアメリカ合衆国で発祥したポニーリーグである。ポニーとはProtect(守る)・Our(我々の)・Neighbor’s(近隣の)・Youth(青少年)の頭文字を取ったもので、日本では75年に日本ポニーベースボール協会が創立。神奈川県内では現在3チームが活動しており、その中から予選会を勝ち上がってDeNAベイスターズカップに5年連続5回目の出場を決めたのが横浜旭峰ポニーだ。

人間的成長なくして、技術的成長なし

齋藤 一也監督(横浜旭峰ポニー)

 09年に設立した横浜旭峰ポニーは、15年にポニーリーグの全日本選手権大会を制した強豪。昨年9月には横浜高校OBで85年春に甲子園の土を踏んだ齋藤 一也氏を新監督に迎え、新たなスタートを切っている。「これまで社会人や高校生のチームでコーチや助監督を務めてきましたが中学生は初めてなので、私自身も試行錯誤しながら指導にあたっています。『人間的成長なくして、技術的成長なし』という言葉もある通り、選手たちには嫌なことでも率先して行い、目配り、気配りができるように指示しています。そういうことができる選手は高校に行っても好まれますからね」

 横浜旭峰ポニーの部員数は現在、2年生(4月から新3年生)8名、1年生(4月から新2年生)18名。「ウチは毎日、練習をしているので、週末だけでなく、毎日、野球がやりたいという野球好きが集まったチームです」。もちろん学習塾にも通っている選手もいるので、各々でスケジュールを調整しているが、小松 大樹主将や主砲の岩堀 夢叶選手らは「毎日、練習ができるチームに入りたかった」と、口をそろえている。

 練習は曜日によってグラウンドと室内練習場を使い分けている横浜旭峰ポニー。「グラウンド練習は守備練習にあてていて、3時間ほどひたすらノックをしています。グラウンドは長方形の形をしているので、内外野の連携プレーの練習ではノックを打つ位置を変えて、工夫しながらやっていますね。室内練習場では5〜6人ずつの班に分けてバッティング練習をしています。同時に3ヶ所で打てるので、それぞれにテーマを持たせてバスターをやらせてみたり、変化球を逆方向に打ってみたり、外野フライを狙って打たせてみたり。それ以外の班はウエイトトレーニングや素振り、坂道ダッシュなどをやらせています」(齋藤監督)。グラウンド練習の予定日に雨が降った時も、この室内練習場が使えるので、まさに野球漬けの日々が送れる環境が整っているようだ。

指揮官独自の練習メニュー練習風景(横浜旭峰ポニー)

 日々の練習の中には、齋藤監督発案の独自のメニューもある。「内野手にわざとエラーをさせ、慌てている中で処理をする練習をさせています」。そして、練習によっては、声を出さないように指示することもあるという。「キャッチボールの時はボールを捕る時の音を聞きたいので、静かにやらせています。あと、試合では観客の声援で選手間の声が聞こえなくなることもありますから、そういった状況を想定して練習することもあります。それからランニングでは一切、長距離は走らせていません。その代わりにスパイクを履かせて15〜20mのダッシュを何本もやらせたり、室内練習場の近くにある坂道を走らせたり。その方が体にキレがでますからね」

 また、試合中は選手を叱ることはない。「普段から『練習で苦しんで、試合で楽をしろ』と、言っています。練習でできないことは試合でもできませんし、できたとしてもたまたまですから、練習ではいろいろと言っていますよ。でも、試合は選手がやるものですから自由にやってもらいたいですし、仮にミスをしても叱るのではなく逆に励ましていますね」。小松主将も「齋藤監督は、練習は厳しいですがやりやすくなりました」と、話している。

 現チームについて、齋藤監督は「まだ点の取り方が下手なので、無駄な失点を与えないようにうるさく指導しています。野球は点を取り合うゲームですが、ウチは失点の防ぎ合いだと思ってミスを減らしていきたいです。あとは考える力が必要ですね。野球は強いチームが必ず勝つ訳ではありませんから、勝つために『5つの約束事』を掲げて、それを守るように指導しています」と、話す。

首脳陣が期待する選手たち左から 赤井 誠那選手、小松 大樹選手、岩堀 夢叶選手(横浜旭峰ポニー)

 そして、期待する選手として「センターの小松は走攻守の三拍子が揃った選手。負けん気が強く、主将になってからはチームを引っ張っていく自覚も生まれてきました。岩堀は両翼100mのスタジアムでもオーバーフェンスできる選手でスイングスピードが速い。赤井 誠那はまだ新2年生ですが、元ベイスターズジュニアで身体能力が高く、すべての面でスピードがあります。どのポジションもこなせる野球センスもあるので、どこまで伸びてくれるか楽しみです」と、3選手の名前を挙げた。

 小松主将は「キャプテンになってからは以前よりもチームのことを見て、試合で負けている時も自分から声を出すようになりました。個人的には、昨季は1番を打っていましたが、今季からは3番を任されているので右方向を狙ったり、外野フライを打ったりして、後ろにつなぐバッティングを意識するようになっています」と、成長を口にしている。また、ベイスターズカップの予選会では「連続出場が懸かっていたので、『途切れさせてはいけない』と気合いが入っていました。結果として、逆転勝ちできたので良かったと思います」と振り返った。

 赤井選手は「今年になってから練習試合で1番を打たせてもらえて楽しくプレーできていますし、打席で粘れるようになってきたと思います。今年は下半身を強化して、ホームランも打てるようになりたいです。小学校時代は通算で30本打ったので、中学では40本塁打を目標にして頑張りたいです」と、抱負を語った。そして、岩堀選手は昨年の秋季大会で2本のホームランを放っている長距離砲。「今は、打つ時に余計な動きが入ってしまっていたのでバッティングフォームを修正しているのですが、監督に細かく指導してもらっているのでボールをミートできるようになってきました。ベイスターズカップは昨年も出場したのですがヒットを打つことができずに悔しい思いをしたので、今年はバッティングで活躍して勝ちたいです」と、リベンジを誓った。

 DeNAベイスターズカップには第1回から5年連続で出場を果たしている横浜旭峰ポニーだが、実は未勝利。それだけに「今まで1勝もできていないので、ポニーの代表として勝ちたい」(小松主将)と、今大会に懸ける思いもひとしおだ。齋藤監督も「ベイスターズカップでアピールし、神奈川に横浜旭峰ポニーの名前を知らしめたい」と意欲を燃やしている。はたして、念願の大会初勝利はなるのか?横浜旭峰ポニーは初戦で湘南ボーイズと対戦する予定だ。

(取材・文=大平 明)

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