岡崎慎司を零封。「キャプテン」吉田麻也のリーダーシップが光り輝く
プレミアリーグ第22節のサウサンプトン対レスター・シティ戦で、吉田麻也と岡崎慎司の日本人対決が実現した。レスターの岡崎は、公式戦3試合ぶりの先発。4−3−1−2のトップ下に入る一方、サウサンプトンの吉田も4−3−3のセンターバック(CB)として、公式戦7試合連続となる先発出場を果たした。
振り返ると、プレミアリーグで日本人選手が同じピッチに立つのは、2013年1月のマンチェスター・ユナイテッド(香川真司)対サウサンプトン(吉田)以来、4年ぶりのこと。あれから香川は古巣ドルトムントへ舞い戻ったが、吉田は今もなお、イングランドで戦い続けている。
この間の吉田は、ベンチを温め続けたり、不慣れなサイドバックとして起用されたりもした。「移籍」の二文字が頭をよぎったこともあったという。しかし、サウサンプトンの門を叩いてから5季目、28歳で迎えた今シーズンほど飛躍を予感させる年はないだろう。力強いパフォーマンスで、チーム内での存在感を高めているのだ。
事実、シーズン前半戦でも確かな手応えを掴んでいた。DFジョゼ・フォンテとDFフィルジル・ファン・ダイクに次ぐ「CBの3番手」だったが、ヨーロッパリーグとリーグカップでは全試合でフル出場。週1回のペースで出番を掴むと、出場した試合で安定感のあるディフェンスを示し、定位置取りをアピールした。
そして12月に入ると、かねてより取り沙汰されていたフォンテの移籍話が再燃。移籍交渉が本格化していくのと並行して、吉田の出番は確実に増えていった。1月22日のレスター戦まで6試合連続で先発を任されていたのは、シーズン前半戦で足場をしっかり固め、クロード・ピュエル監督の信頼を高めていたからに他ならない。
こうして迎えたレスター戦──。岡崎との日本人対決で、眩しい輝きを放ったのは吉田のほうだった。堅牢な守備で最終ラインを支え、3−0の完封勝利に大きく貢献したのである。
試合のなかで吉田が心がけていたのは、「まず守備で安定したパフォーマンスをすること」。レスターの2トップを務めるFWジェイミー・バーディーとFWデマライ・グレイの動きを注視しながら、セーフティ・ファーストのプレーで敵の攻撃を摘み取っていった。
速さのあるグレイが突破を試みれば、安易に飛び込まずドリブルのコースを切る。敵のロングスローを打点の高いヘディングで跳ね返せば、素早いカバーリングでウィンガーのMFマーク・オルブライトンの突破をブロックした。インターセプトできるときは前へ、危ないと感じれば後退し、CBとしての職務を完璧にこなした。
しかも後半開始から10分で、「左CB」のファン・ダイクが足首の故障で交代するというハプニングに見舞われた。代わりに入ったのは、22歳の若いDFジャック・スティーブンス。「彼は左CBが得意じゃないから」との理由で、右CBとしてプレーしていた吉田が左CBにスライド。スティーブンスに右CBを譲った。さらに、この試合がプレミアリーグ出場2試合目というスティーブンスに「シンプルにプレーしよう」とアドバイスを送り、ファン・ダイク負傷のハプニングを無事に乗り切った。吉田の順応性と適応力、リーダーシップも光った一戦だった。
試合後、取材エリアに姿を見せた吉田は「ひさびさに快勝したのでよかった」と笑顔。ファン・ダイクの負傷を機にキャプテンを務めたことに、「緊張した。逆転とかされたらハンパないっしょ!」と言って記者団を笑わせ、次のように言葉をつないだ。
「難しい状況でしたけど、ゼロに抑えられたのは評価できるし、ひさびさに3点獲れたのもチームにとってすごくいいこと。自分のパフォーマンスとともに結果がすごく大事になるので、今日は結果がついてきて本当によかったと思います」
そんな吉田を褒め称えるのが、プレミア挑戦2季目を迎えた岡崎だ。彼もまた、ポジション争いの激しいプレミアに身を置いているからこそ、イングランドで戦う"後輩"として尊敬の眼差しを向ける。
「フォンテもファン・ダイクもいるから控えに回っていたけど、(加入から)2〜3年したころには、もうプレミアに慣れていた。あとは『試合に出続けるかどうか』というところだったけど、その我慢が今、こうやって実を結んだと思う。麻也が、CBとしてチームの中心にいる。日本人として、もっとこういう選手が増えていかないといけないと思う。どれだけすごいことをしているか。褒め称えられるべきだし、今日も称賛されるべき試合だった」
サウサンプトンでは、フォンテの「ウェストハム移籍」が正式に決まり、吉田にかかる期待はさらに高まっている。なかなか出場機会に恵まれない苦しいシーズンも経験してきただけに、吉田は「このチャンスを長いこと待っていた。ここで掴み取りたい。(移籍期間を挟む)半年ごとのテストだと思っているので、この半年、僕のサッカーキャリアをかけて、またひとつ勝負かなと思っています」と語気を強める。
「1試合1試合、大事にこなしていきたい」。そう語る吉田は、これまで逆境も試練も、常に成長の力へ変えてきた。そして彼の言葉どおり、さらに前進するには、この半年が「勝負」になる。2016−2017シーズンを飛躍の年にしたい。
田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke

