「全試合抽選」の是非と問う

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 熱戦の火蓋が切って落とされた夏の甲子園。NHKが「高温注意情報」のL字テロップを表示するほどのうだる暑さにも負けず、球児たちはハツラツとプレーしている。

 そういえば、近年の甲子園ではトーナメント表があまり見られないことにお気づきだろうか?

 2013年から夏の甲子園では「全試合抽選」のシステムが採用されているため、トーナメント表があまり意味をなさなくなっているのだ。

 以前(1995年から2012年)は3回戦までの組み合わせが確定していたので、トーナメント表がドーンと掲載されることも多かったが、現行システムでは空白のマスだらけになる。そのためトーナメント表が見られなくなったのだ。

 施行から4年目、遅ればせながら、その全試合抽選のシステムを紹介しよう。

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■初戦は同都道府県の対戦はなし!

 まずは最初の抽選。今回のような記念大会ではない、通常の大会の場合、初戦(1回戦または2回戦)の組み合わせを決める。このとき、北海道と東京に関しては2チームが出場するため、同都道府県の初戦対決にならないように配慮している。

 かつては同地区での潰しあいが起こらないように初戦は東西対決となるシステムを採用していた時期もあったが、現行はほぼ運まかせ。隣県対決も起こる。

■勝利チームから順次抽選

 続いて、勝ったチームはそのまま次戦の対戦相手の抽選に移る。このとき、大会日程を考慮して、なるべく連戦にならないように調整されている。

 たとえば今年だと、2回戦の組み合わせでは、大会初日に勝ち上がった3校+2回戦から登場する創志学園(岡山)の4校が同グループとなり、対戦はこのなかから決まる。同様に2〜3日目、4〜5日目に1回戦を勝ち抜いたチームがそれぞれ同グループとなり、抽選を行う。

■つまり勝たなければわからない!

 3回戦からはほぼ制約なしの完全抽選(2回戦・最終日の勝者に限り、3回戦も最終日になる)。

 勝者から順次抽選を進めるため、試合前や試合途中で次戦の対戦相手が判明するケースもあるが、基本的には目の前の勝負に勝たなければ、対戦カードが割れないシステムになっている。

■「全試合抽選」の是非

 春のセンバツや夏の地方大会のように1回戦から優勝までの道筋がわかる「一発抽選」とは違い、「全試合抽選」はワクワク感もあるが、やはり大きなトーナメント表が恋しくなるときもあるのではないだろうか?

 連戦を極力防ぐなどの日程的な配慮であれば、むしろ準々決勝以降も含めた「一発抽選」の方がフェアな日程が組めるはずだ。

 一説には、次戦の相手をわからないようにすることで「偵察防止」を意図しているという声もある。しかし、今の時代、甲子園に出場するレベルの学校で、対戦相手のデータ分析をしない学校があるのだろうか?

 チームによってはベンチ外の部員でデータ班を作っていることも多いが、その分析もまた野球の一部ではないだろうか。

 勝ち上がった際の対戦相手を予想できることで、投手陣を中心とした選手のやりくりやコンディショニングもしやすいはず……。

 「公平」を謳った改正であったが、「イレギュラーや不透明さによる公平なのではないか」という意見もあがっている。果たして、選手・指導者にとってはどちらがやりやすいのだろうか。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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