ーあなたが私にくれたもの♬ 白い真珠のネックレス♬ー

JITTERIN'JINNの「プレゼント」という恐ろしい曲をご存知だろうか。

ひたすら「彼にもらったもの」を歌う、1990年に発売されたバブル期の名曲である。

時は移り変わり、2016年の東京。

東京人は恋人にどんなプレゼントを贈っているのだろうか?

自分が恋人の誕生日やクリスマスにプレゼントを贈る際に、悩むことは多いであろう。聞きたいようで、なかなか聞けない男女のプレゼント秘話。その中身を実際に物語と共に披露する。




初対面から意気投合! プレゼントセレクトが完璧な旦那様とは。


「主人とは、友人からの紹介で出会いました。会ってすぐ、『アルハンブラよく似合うね』って言われたのが嬉しかったのを覚えています。」

笑いながらそう話すのは、化粧品会社で営業職につく美緒さん、30歳。大きな目が特徴的なキュートな笑顔の持ち主だ。

美緒さんが社会人になりはじめて購入したブランド品は『ヴァン クリーフ&アーペル』のアルハンブラネックレス。現在の旦那様にはじめて出会った日、お気に入りのネックレスを褒められた美緒さんは、素直に嬉しかったと話す。

その後二人は付き合い始め、ほどなく迎えた美緒さんの誕生日、旦那様は出会った日に身に着けていたあのネックレスとお揃いのピアスを贈ってくれた。

「今までもらったプレゼントの中で一番嬉しかったですね。リクエストしたわけじゃないのに、その時の自分が一番欲しかったものをドンピシャでもらえるなんて。周りの目も気にせず彼に抱きついてしまいました。」

なんとも羨ましい。


もしや、あなたさかなクン? 水族館の年間パスポート。


「今までで一番いらなかった物? 真っ先に思い浮かぶのは水族館の年間パスポートです。」

今では素敵なプレゼントを次々と手中にしている美緒さんだが、旦那様に出会う前は摩訶不思議な贈りものをもらった経験がいくつもあるそうだ。

第一に思い出すのは、社会人になってすぐに付き合い始めた銀行マンからのプレゼント。

「練馬支店に勤める彼にあわせて池袋で会うことになり、何気なくサンシャイン水族館の話をしたら、次のデートで早速連れて行かれたんです。何度も断ったんですけどその場で写真を撮って年間パスポートを作成する流れになってしまいました。」

しぶしぶ受け取ったが、結局この日以外一回も使用することはなかったという。

「水族館とか動物園とか、基本的にあまり好きじゃないんです。4,000円ちょっとの年間パスポートの元をとるために何度も水族館デートに誘う彼のことがどんどん嫌になってしまい、結局半年ほどで別れてしまいました。別れ話を切り出した時、まだ期限が残ってるのに! と彼に罵られた時は、思わず爆笑してしまいました。」

さかなクンとの半年間のお付き合いで残ったのは、ぎこちない笑顔写真付きのカードだけだった。


結果に全くコミットできない! 中古品を贈られた誕生日。


「これは、旦那に出会う前に結婚を前提に2年ほどお付き合いしていた彼からもらったものです。」


スパルタな?彼から送られた衝撃のプレゼントの数々とは?


物置から出てきたのは、ブラック一色の筋トレグッズ。




「彼がいきなりAmazonで送りつけてきたんです。某ジム監修のプロテインと一緒に。」

突然の贈り物に驚いた美緒さんだったが、その後の彼の行動には度肝を抜かれたらしい。彼の唯一の趣味、ボルダリングを一緒に行いたかったらしく、彼は毎週のように美緒さんの家に通い、マンツーマントレーニング指導を始めたというのだ。

「まさかトレーニングも込みのプレゼントだったとは(笑)。最初のうちはダイエットにもなるからと頑張っていたのですが、彼のスパルタさに嫌気がさして、週末が来るのが憂鬱になり……。結局数ヶ月で彼にトレーニングを辞めたいと伝えたんです。」

その後も付き合いを続けていたが、ある出来事で判明した価値観の違いから、次第に美緒さんの気持ちが離れていったという。


「一番のきっかけは、お付き合いして半年くらいで迎えた私の誕生日です。誕生日当日、彼が家に来たのですが、手にしていたものは彼のお古のリモワのスーツケース。誕生日に中古品をもらった経験がなかったので、困惑しましたね。まあ、小さめのスーツケースは欲しかったし、数回しか使ってない美品だったので、実はいまでも愛用しているんですけど。」



物に罪はない……。


「先生」と呼ばれる職業につく彼だったが、勉強とボルダリングしか行なってこなかったゆえ、女心をつかむのは難しかったようだ。

「スペックは高かったので、頑張って合わせられるように努力はしたのですが、やっぱり無理でした。別れ話を切り出した時は揉めに揉め、彼の誕生日に送った世界遺産ジグソーパズルを投げつけられそうになり、最後は喧嘩別れです。」

ちなみに、10,000ピースのジクソーパズルは、彼からのリクエストだった。

「30,000円もしたんですよ。残念ながら中古品はありませんでした。」


オタク系同僚からの「想い」が詰まったプレゼントとは。


誰にでも笑顔を振りまく営業職の性か、変わった男性からも好かれる事も少なくないという美緒さん。結婚が決まるまで、同僚の寡黙なオタク系男子から無言のアプローチを受けていたという。

「会社のフロアが同じだったので、私が友人とランチに出ると彼もこっそりついてくる、プチストーカー状態(笑)。色々な株主優待券を大量にくれるので、遠慮無く頂戴していました。」

上手に彼を利用していたつもりだった美緒さんだが、あるプレゼントをきっかけに彼に恐怖心を感じるようになったという。


オタク君の想いの詰まった重すぎる贈り物とは?!


「ある日朝会社に行ったら、島耕作シリーズ全巻がデスクに置いてあったんです。前日に友人と『読んでみたい』と話していたのを聞いていたみたいなんですが、あまりのスピードとその量に震えましたね。」

哀れにも島耕作は未開封のままブックオフへ。全巻そろっていたのでいい値がついた。

その後もプレゼント攻撃は続いたが、結婚を報告した途端、不思議な関係は終わりを迎えたそうだ。


人生最高のプレゼントは、ダイヤモンドと一枚の紙切れ。


「今までもらったプレゼントで最高のものは、婚約指輪と婚姻届です。」

笑顔でそう答えられる女性が東京に何人いるだろうか。

「頂いた時は、天にも昇る気持ちでした。ディナーのあと、ドレスアップした姿のまま片膝をついて指輪を渡してくれた彼、やっぱり運命だったんだ、って号泣。その後お風呂に入る時外すのが嫌でまた泣いてしまいました。」




婚約指輪はティファニー。美緒さん夫妻を結びつけたヴァンクリではないが、美緒さんはとても気に入っている。

「私の一番好きな映画が、『ティファニーで朝食を』なんです。それを知った彼が毎日ティファニーと朝の時間を一緒に過ごせるように、って選んでくれたみたい。」


贈られ下手な旦那様が喜ぶとっておきのプレゼントとは?


そんな素敵な旦那様だが、意外なことに贈り物を受け取る事が苦手らしい。

「婚約指輪のお返しに、彼の誕生日にパネライの時計を贈ったんですが、彼が異常な位恐縮してしまって……。結局代金は彼が支払うという謎の展開になり、その後高価なプレゼントは拒否されています。」

贈りはすれど、受け取らない。話だけ聞くとなんとも羨ましいようにも聞こえるが、人を喜ばせるのが好きな美緒さんにとっては張り合いがなかったという。

「そこからは、一体何なら受け取ってもらえるのか試行錯誤の日々でした。値段云々よりも、相手が受け取りやすく、ありがた迷惑にならないようなものをプレゼントしたくって。今までにもらったプレゼントを反面教師にして考えました。」

考えた結果、手先が器用な美緒さんは、その手腕を駆使して様々な手作りの品を旦那様にプレゼントしすることにした。今まで女性から手作り品をもらったことがなかった旦那様は爆笑しながら喜んだそうで、特に「応援うちわ」と「写真集」はお気に入りだという。

「うちわは、アイドルのコンサートでよくファンの子が持っているもののアレンジバージョンです。表には彼の名前、裏には『今日も頑張って!』の文字。朝玄関で振って応援しています。写真集は、ファッション好きな彼の毎日のファッションをデジカメで撮ったものをまとめて本にしました。彼はナルシストなので、飛び跳ねて喜んでいましたよ(笑)。」

一般的には理解しがたいプレゼントだが、二人が幸せならそれで良い。

常に笑顔を絶やさない、小動物のようなキュートな魅力を持った美緒さん。贈り手の期待以上のリアクションを常に繰り出してきた彼女には、貰い手としての才能があるのかもしれない。

彼女の未来に幸あれ。

【これまでのあなたが私にくれたもの♬】
vol.1:メルカリに出品中のカルティエのリング♬
vol.2:ジュエリーやバッグより嬉しいモノとは?
vol.3:君島十和子に憧れ揃えたフェラガモの靴と巨大な手作り◯◯◯
vol.4:脚長おじさんからのシャネルヴィンテージ祭り。一方、彼女のプレゼントは予想だにしない300枚の...