憧れ以上、恋未満!? 麗しき少女たちの「エス」の世界
春は新しい出会いもあり、恋の季節でもありますよね。今週(4月19日〜22日)は「日本人の色と恋」をテーマに、日本特有の色々な色恋に関する文化をご紹介したいと思います。1回目は、女性同士の禁断の恋のお話です。
同性の友達や先輩に対して、憧れを持つことは誰にでもありますよね。
そしてその感情が、いつしか「憧れ以上」のものになっていた……そんな経験はありませんか?
特に思春期の女性には、そうしたことがよくあります。
大正時代、女学生の間で流行した言葉のひとつに「エス」というものがあります。
これは「姉妹」を表わす英語の「Sister」の頭文字を取ったもので、「女性同士の特別な関係」を示す言葉でした。
裕福な家に生まれたお嬢様だけが行くことのできた女学校。
当然、異性との交遊は禁止で、女性だらけの中で過ごす少女たち。
彼女たちの胸をときめかせたのは「自分の憧れの女性と特別な関係になる」という、「エス」の行為だったのです。
エスの2人はお互いその関係を約束すると、下級生が上級生を「お姉様」と呼びます。
文通をしたり、2人で遊びに行ったりと、まるで恋人のような強いつながりを持つのです。
靴箱に忍ばせた手紙には、こんなことが書かれています。
「お姉様! あたしのお姉様! お許し下さい。せめて心の中でのみこうお呼びしますことを。ほんとうにこの頃のあたしはどうしたのでしょう。お部屋に居るときは尚更、学校に行って居る時だって、ただの一分間もお姉様が忘れられないのです。」
少女雑誌のお悩み相談には、かなり多くの「エス」に関する悩みが投稿されました。
「エス」は基本的に、卒業と共にその関係が解消されます。
少女たちは皆、現実に戻り、結婚などをしてひとりの女性として生きていくのです。
ですが、その現実に耐えられず、なんと心中をしてしまうエスたちも。
狭い世界の中で、特別な存在だったお互いを失いたくなかった少女たち。
切ない話です。
禁断でありながら、なんだか麗しい「エス」の世界。
彼女たちが残したものがひとつの文化として、日本の創作物のモチーフとなっているのは間違いありません。
*参考文献
「女學手帖 大正・昭和 乙女らいふ 新装版」(弥生美術館・内田静枝/編 河出書房新社)
文/岡本清香
TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「憧れ以上、恋未満。『エス』」として、4月18日に放送しました。
【あわせて読みたい】
★ももクロ × 恐竜くん「恐竜のサイズは、有安さんが何人分?」(2016/4/17) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/PkwLrlLfxW.html
「熊本の皆さん大丈夫ですか」10代ラジオリスナーの声(2016/4/15) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/QLlQLbSBjh.html
★人気のなかった「バス」が都民に浸透した出来事とは(2016/4/15) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/WVvP5rzZLo.html
<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
放送日時 :毎週月〜木曜15:00〜16:50
パーソナリティ:堀内貴之、MIO
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/city/
思春期の憧れが、いつしか恋に……
同性の友達や先輩に対して、憧れを持つことは誰にでもありますよね。
そしてその感情が、いつしか「憧れ以上」のものになっていた……そんな経験はありませんか?
特に思春期の女性には、そうしたことがよくあります。
これは「姉妹」を表わす英語の「Sister」の頭文字を取ったもので、「女性同士の特別な関係」を示す言葉でした。
裕福な家に生まれたお嬢様だけが行くことのできた女学校。
当然、異性との交遊は禁止で、女性だらけの中で過ごす少女たち。
彼女たちの胸をときめかせたのは「自分の憧れの女性と特別な関係になる」という、「エス」の行為だったのです。
エスの2人はお互いその関係を約束すると、下級生が上級生を「お姉様」と呼びます。
文通をしたり、2人で遊びに行ったりと、まるで恋人のような強いつながりを持つのです。
靴箱に忍ばせた手紙には、こんなことが書かれています。
「お姉様! あたしのお姉様! お許し下さい。せめて心の中でのみこうお呼びしますことを。ほんとうにこの頃のあたしはどうしたのでしょう。お部屋に居るときは尚更、学校に行って居る時だって、ただの一分間もお姉様が忘れられないのです。」
少女雑誌のお悩み相談には、かなり多くの「エス」に関する悩みが投稿されました。
「エス」は基本的に、卒業と共にその関係が解消されます。
少女たちは皆、現実に戻り、結婚などをしてひとりの女性として生きていくのです。
ですが、その現実に耐えられず、なんと心中をしてしまうエスたちも。
狭い世界の中で、特別な存在だったお互いを失いたくなかった少女たち。
切ない話です。
禁断でありながら、なんだか麗しい「エス」の世界。
彼女たちが残したものがひとつの文化として、日本の創作物のモチーフとなっているのは間違いありません。
*参考文献
「女學手帖 大正・昭和 乙女らいふ 新装版」(弥生美術館・内田静枝/編 河出書房新社)
文/岡本清香
TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「憧れ以上、恋未満。『エス』」として、4月18日に放送しました。
【あわせて読みたい】
★ももクロ × 恐竜くん「恐竜のサイズは、有安さんが何人分?」(2016/4/17) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/PkwLrlLfxW.html
「熊本の皆さん大丈夫ですか」10代ラジオリスナーの声(2016/4/15) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/QLlQLbSBjh.html
★人気のなかった「バス」が都民に浸透した出来事とは(2016/4/15) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/WVvP5rzZLo.html
<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
放送日時 :毎週月〜木曜15:00〜16:50
パーソナリティ:堀内貴之、MIO
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/city/