2016年3月8日、次のような動画付きのツイートが投稿され、大きな話題となっている。

動画には、1枚の金属の板。「mgn」という文字が浮き上がっている。その文字を人差し指で押すと、スーと下がっていき、やがて消えてしまった。「職人の町、新潟県燕三条の技術。種も仕掛けもありません」というコメントが添えられている。






武田金型製作所のYouTube動画より

種も仕掛けもないとのことだが、いったいどんな技術を使っているのか?Jタウンネット編集部は、燕市に早速電話してみた。

「スーッという押し心地がいいんですよ」


武田金型製作所工場内(mgnウェブサイトより)

新潟県燕三条といえば、洋食器・機械など金属加工が盛んな町として知られている。冒頭のツイートの動画に登場する「mgn(エムジーエヌ)」は、新潟県の燕市で誕生した、高度な金属加工技術を形にするプロダクトブランドだった。

現在、武田金型製作所とその子会社であるMGNET(マグネット)社が、マグネシウム・チタンなど5種類の金属素材を使った、オリジナルな名刺入れを開発し、販売している。編集部はMGNET社・武田修美社長に話を聞くことができた。

「動画で話題となっている金属の板は、ワイヤーカット放電加工機で作ったものです」と武田さんは話してくれた。「ワイヤー線に電流を流し、ステンレスなどの硬い金属も精密に加工する。1000分の3ミリ程度の精度で切り、表面を鏡面に磨いたのが、あの金属板です」。


武田金型製作所工場内(mgnウェブサイトより)

このワイヤーカット放電加工機、使いこなすのがなかなか難しいらしい。「単純な直線や曲線ならともかく、動画のような文字や複雑な形を切るには、やはり熟練の技が必要になる」と武田さん。「例の金属板は、武田金型製作所の工場長自ら加工したものです」とのこと。

通常の仕事では、そこまでの精度は要求されることはめったにないが、ここまでできるぞというデモンストレーションのために作ったという。「一見ムダに見えるかもしれないことこそ、実はおもしろいんです」と武田さんは語る。金型の依頼主から寄せられる、さまざまな要望にも応えられる技術力を誇りにしていることが伺われる。

「映像では伝わらないのですが、指でスーッと押していく押し心地がいいんですよ」と武田さん。


チタニウム製名刺入れ(mgnウェブサイトより)

同社の技術が活かされた製品、「チタニウム製名刺入れ」「マグネシウム製名刺入れ」などの商品は、インターネット通販でも購入できる。