仕事はゴルフに例えて考えなさい 〜部下育成編〜/葛西 伸一
パターで100ヤード飛ばそうとはしないのに、なぜ部下に苦手な事を要求してしまうのか?
上司となって部下を持つと、最初のうちは 「良い上司になろう」 と思うのに、知らず知らずのうちに、部下を無理矢理コントロールしようとしてしまうのは何故なのか?
部下を本当の意味で理解し、その強みを活かして、チームとして成果を上げるにはどうすれば良いのか?
それは、ゴルフとチームマネジメントを重ね合わせて考えるとわかりやすい。
(但し、ゴルフをやったことない方や、ゴルフに興味のない方は、全く面白くないかもしれませんので予めお断りしておきます)
さて早速質問です。〇か×でお答えください。
質問
1.ゴルフのドライバーで飛距離を出す秘訣は、渾身の力を込めて、思いっきり振ることである。
2.パターでも、100ヤードを狙って思い切って打つことがあっても良いと思う。
おそらく、多くの方が1も2も「×」と答えるだろう。もちろん正解である。
そこで大事なのは理由である。理由を尋ねたら、皆さんは何と答えるだろうか?
「ドライバーは、チカラを入れればいいってもんじゃないよ」
「ドライバーは、力むほどスライスしたり、フックしたりでまともな方向にいかないよ」
「パターで100ヤードを打つやつなんていないよ」
と、まぁこんなところだろう。
しかし、それは本質を捉えた表現とは言えない。
本質的な回答は
「クラブの特性を理解し、その状況に合わせ、適合した打ち方をすることで良い結果が出る。よって、状況と合わないクラブは使用しないし、間違った打ち方はしない」
というのが正解だろう。
そう、我々は、ドライバーはパワーを溜めて正確にヒットすれば力いっぱい振らなくても飛距離が出ることは頭では分かっている。
しかし、距離を飛ばそうとすると、どうしても力んでしまう。
それは仕事に置き換えれば
「成果を出させようと思うほど、部下に激を飛ばしたくなる。コントロールしたくなる。」
というのに似ている。
パターは、進む距離こそ短いが精密なパットを行うクラブである。だから繊細さを失くし、乱雑に扱うと、成果が出ない。
これを仕事に例えると、部下を繊細に扱うべき場面で強く接し、成果が出せなくなるのと同じだ。
それは、我々が責任者(上司、マネージャー)になると、成果を出さなければという責任感から、つい力んでしまうからだ。
上司は、チームとして成果を出せないと、心のどこかでつい部下の責任にしてしまうところがある。
「なぜあいつはできないのだ?」
「あいつは使えないなぁ」
「あいつを採用したのは誰だ・・・」
等々。
ショットが悪いと、ついクラブに当たってしまいたくなる心理に近い。
また、スコアを上げたい!からと新しいクラブに買い替える人がいる。
しかし、新しいクラブを買ったはいいが思ったようにスコアが上がらないと
「買ったクラブが悪かったのかな」
「クラブが自分に合ってないのかな」
と一瞬考えてしまう。
仕事に例えると、チームの成績を上げたいから、新しい人材を中途採用し、採用後に期待と実像がかけ離れていたと失望することと似ている。ここまでで、私が言いたいことはご理解いただけただろう。
それぞれの特性に応じて、扱い方を変えるということだ。
ゴルフでは、
クラブの特性(強み、弱み、クセ)をしっかりと理解し、状況を冷静に分析し、その状況に最適なクラブで最適な打ち方をすることで、スコアアップにつながるわけだ。
つまり部下においても同じだ。
部下一人ひとり、クラブのように種類が違うと思った方がいい。
〜ドライバー型〜
たとえば、新規企画や開拓がガンガンできるパワーのある部下はドライバー型。打ち方を間違えると、方向が狂い暴走するが、うまく扱えば飛距離をしっかり稼いでくれる。
〜フェアウェイウッド型〜
繊細だけど一定の成果を上げ続けてくれる部下は、フェアウェイウッド型。繊細な打ち方と方向付けが必要で、距離はドライバーほど稼げないが、安定して稼いでくれる。
〜アイアン型〜
使用頻度が高い。さまざまな環境に耐えて、地道に働いてくれる。標準的な成果を安定して出してくれる。力は入れすぎず、正しい方向性で導き、力の加減も常に気を使う必要がある。
〜パター型〜
アイアン以上に使用頻度が高い。飛ばせる距離が短い為、大きな成果を出すことはできないかもしれないが、毎日忍耐強く、繊細な仕事をこなしてくれる。きちっと仕事を整えてくれる、欠かせない役割のクラブである。
あなたの部下はそれぞれ、どんなクラブに相応するだろうか?
一人ひとりの顔と仕事ぶりを思い浮かべて、その部下に合ったクラブ選択(適材適所)と
打ち方(指導の仕方)を考えてみてはいかがだろうか。
指導は、決して画一的なものではない。
整理をすると、以下の流れは仕事で成果を上げるにもゴルフで成果を上げるにも大事な事だろう。
・クラブ選び(人材採用)
・クラブの特性理解(部下の特性、価値観、考え、弱みの理解)
・適材適所(適切な仕事と役割を与える)
・一つひとつのクラブのショット技術の鍛錬(一人ひとりの部下を研究する)
・コースマネジメント(仕事の戦略を緻密に立て、チームで成果を出すことを考える)
・プレイヤー(上司)自身のメンタルコントロール
・状況に応じたクラブ選択と状況に適合したショット(最適な部下指導)
クラブが1本欠けてもゴルフは成立しないし、ドライバーを14本使っても良い成果は上げられないだろう。
貴方の仕事は、どんなクラブが何本必要なのだろうか?