苦しみながらも1点差の辛勝で興南が3年ぶり28度目のベスト8へ進出

12奪三振をマークした比屋根(興南)

「自分たちの機動力を自分たちで破壊する機動力破壊だよ」試合後の我喜屋監督は、健大高崎の機動破壊になぞらえた自虐的な言葉を並べて苦笑いするしかなかった。

 興南は初回、1番の仲平良颯と2番桃原斎の連続ヒットで一、三塁(直後の一塁走者の盗塁で二、三塁)としたが、クリーンアップの3人がライトライナー、三振、ライトライナーでまさかの無得点。これが負の連鎖の引き金となってしまったわけではないだろうが、その後の攻撃全てが裏目に出てしまう。

 2回は一死から高那 峻に三塁打が生まれるも三振、セカンドフライ。3回は初回同様1、2番に連続ヒットが生まれて無死一、二塁としたが、二塁走者がまさかのサインミスで三盗アウト。さらに一塁走者も牽制で誘い出され挟殺されるミスが続く。4回は一死一、二塁、5回も先頭打者がヒットで出塁したが三塁を踏めず、またその間送りバントも決まらないなど塁上を賑わせながらも、スコアボードにゼロを5つ並ばせてしまった。

 グラウンド整備の間に喝を入れられたナインは6回、一死から4番具志堅 大輝と宮里大湖に連続ヒットが出ると、比嘉遥がライトの頭上を越えるタイムリー二塁打で1点を挙げる。ここで次打席の高那に対しベンチはスクイズのサインを出すが投手前に転がりアウト。一瞬イヤなムードになったが、8番の道祖土(さいど)琉一に2点タイムリー三塁打が飛び出して貴重な3点目を加えたことが、結果として3年振りとなるベスト8進出を果たすこととなった。

 先発の比屋根 雅也は4回、先頭の4番平安郁太に右中間への二塁打を打たれたが、後続を三者三振に斬るなど要所でギアを上げるピッチングを披露し12奪三振で完投。甲子園から帰ってきて、どこか大人びた雰囲気を醸し出すのが印象的でもあった。

 敗れた豊見城南だが、新人中央大会ベスト8の実力を存分に発揮したと言ってもいいだろう。8回には一死一塁から3番大城勇希にレフトへのタイムリー二塁打で1点を返すと、四球を挟んで神山一輝にもセンター前へのタイムリーが出て興南をあわや、というところまで追い詰めた。走攻守全てに、あと一歩レベルを上げることが出来れば来年の春はもちろん、最後の夏でも豊見城南旋風が巻き起こる可能性は十分あることを再認識した試合であった。

(文=當山 雅通)

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