藤平尚真、北村朋也の両エースが分けたもの

北村朋也(東海大相模)

 横浜vs東海大相模。 全国を代表する黄金カードが準々決勝で実現した。このカード見たさに試合開始2時間前の8時。チケット売り場の前は長蛇の列が。二列折り返しから、その後、ライト後方の奥まで列が伸びており、いつも混む保土ヶ谷だが、この出入りは例年以上だ。

 この試合の注目は両チームのエース。横浜は藤平 尚真。東海大相模は北村 朋也。ともに最速145キロを超える速球を投げ込むエースであり、来年のドラフト候補として注目される。そんな2人の現状を把握すべく、キャッチボールから見ていった。

 藤平は1球1球丁寧に投げ込み、球筋を確かめるタイプ。どのようにして投げたいのか、その意図が感じられる。藤平の投球のきめ細かさはキャッチボールから伺える。

 一方、北村は、1球1球、強く投げるタイプ。50メートル〜60メートルぐらいの距離で、ライナー性のボールを投げ込む。失速せずに綺麗なスピンがかかった強いボールを投げ込むことができており、キャッチボール姿で惚れ惚れとさせられる。この投手がなぜ140キロ以上を投げられるのかが良く分かる。

  そして1回表、北村の立ち上がり。北村はコンスタントに140キロ台を計測。3番公家に対し、この日最速の144キロを2球を計時したが、公家も粘って、139キロのストレートを打ち返して二塁打。さらに藤平も、敵失で出塁し、二死一、二塁となったが、5番石川 達也を打ち取り、まずは無失点に切り抜ける北村。

 藤平は常時130キロ後半〜142キロ(最速145キロ)のストレート、スライダーをコンビネーションで三者凡退に抑える立ち上がり。藤平は、2回以降、常時130キロ後半のストレート、135キロ前後のカットボール、やや球速が遅い120キロ前後のスライダー、これが実に訊いており、東海大相模の右打者がことごとく空振りを繰り返す。制球力の高さはもちろんだが、強いボールと抜くボールの使い分けが上手く、ピッチングのコツを心得ている投手だろう。ストレートの勢いは本人からすれば、まだベストではないかもしれないが、常に内外角へピンポイントに投げ分けができており、ここぞという場面で低めに決まる140キロのストレートは絶品である。

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藤平尚真(横浜)

 北村は毎回走者を出しながらも粘り強く抑えていたが、横浜は5回表に一死満塁のチャンスを作り、3番公家の適時打で1点を先制すると6回表には二死二塁から福永の適時二塁打で2点目。その裏、東海大相模は無死満塁のチャンスを作るが、4番戸崎は遊ゴロ、5番佐藤は左犠飛。この間に二塁走者がアウトになり、1点止まり。

 7回表、横浜は一死満塁のチャンスを作り、5番石川が走者一掃となる左越えの適時二塁打で1対5と点差を広げる。ここで北村は降板した。北村の課題はボールのアクセントを付けること。鋭い腕の振りから投じる勢いあるストレートは絶品であり、1学年上のエース・吉田 凌の当時よりストレートのスピード、勢いはある。ただ吉田と違うのは、変化球の精度。吉田はウイニングショットとなる縦スライダーがあり、緩急をつける意味でカーブをうまく投げられたからこそ、調子が悪いなりに試合を組む立てることができる。北村は勢いで押せる相手ならばいいが、このレベルになると、空振りが奪えない。細かな制球力がなく、ストレート以外で抑える引き出しがないので、四球が多くなりやすい。

 北村はスライダー、チェンジアップを投げるが、まだ自信にしているとはいえず、横浜の打者がしっかりと見切っていた。夏までの1年間は投手としての幅を広げることが課題となるだろう。来年も引き続き見ていきたい右腕であることは変わりない。

 これで勢い付いた横浜は8回表にも一死三塁から2番遠藤の適時打で1対6と点差を広げる。なおも一死一、二塁から藤平の左前適時打で、7対1。そして二死一、二塁から6番村田の適時打で8対1へ。その後も打線の勢いが止まらず、10対1とした。そして藤平が最後の打者を空振り三振に締め、10奪三振、無四球の1失点完投勝利で、横浜が東海大相模をコールド勝ちした。

 藤平は立ち上がりから試合終了まで緩急自在の投球。ストレートは力の入れ加減をしつつ、8回はねじ伏せに行くつもりで全快のストレートで圧倒した。藤平の良さは投球に意図があり、考えて投げていること。投手としての完成度の高さはこの世代でもトップの投手であることを示した。

 野球の勝敗は投手が7割〜8割握っているといわれるが、この試合は両エースの投球の完成度が違いが試合を分ける結果となった。また東海大相模は守備のミスが目立った。まだチームはスタートを切ったばかり。来年は横浜と死闘を繰り広げるべく、走攻守すべてにおいて成長した姿を見せてもらいたい。

(文=河嶋 宗一)

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