日本人はなぜ「かわいい」を好むのか?

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 あなたは、一度会ったことのある人の顔をどのくらい覚えているだろうか。
 以前、仕事で会った相手が自分のことを覚えていてくれたら嬉しいものだが、一度ではなかなか難しい。顔を覚えることは、コミュニケーションをとる上で役に立つ能力だ。他にも、雑踏の中から知り合いを見つけるといった人の顔の認知について人一倍優れた能力を保持する人を「スーパーレクナイザー」と呼ぶ。
 こういった「顔を読む」能力、「読顔術」について明らかにしたのが、『顔を忘れるフツ―の人、瞬時に覚える一流の人』(山口真美/著、中央公論新社/刊)である。
本書では、顔にまつわるエピソードや余談をまじえながら、さまざまな角度から「顔」を探求していく。

■「かわいい」が日本人にウケる理由
 「かわいい顔」や「こわい顔」といった顔の魅力についても書かれている本書。顔についてよく比較されるのが、「美人」と「かわいい」だろう。これは、それぞれのお国柄で事情も違うが、日本ではどうだろうか。日本で暮らすならば、「かわいい」を選択する方がお得なような気がすると著者の山口氏は言う。
 まんまるの丸顔は、年齢を重ねてもそれなりにかわいいおばあさんになる。反対に、目鼻立ちの整った美人は、年を取ると「ふけ顔」になりがちだ。疲れただけでも、ふけたように見えてしまう。一方、「かわいい」は、劣化しにくいようにも見えるのだ。
 ただし、日本以外の海外では、欧米や韓国を含めて、「美しい」は賛美であっても、「かわいい」は必ずしも賛美ではない。多少の軽蔑や否定が含まれるところもあり、「かわいい」と言われると、いつまでも子ども扱いされる不満を伴う気持ちにもさせられるという。

 そもそも、なぜ、日本では美人より「かわいい」方がウケるのか。
 例えば、同世代の女の子が憧れるバービー人形とリカちゃん人形の違いにそれが現れているという。バービー人形は、生意気なティーンエイジャーという雰囲気があり、大人の女性の一歩手前のような姿かたちをしている。対するリカちゃんは、バービーと比べると、姿かたちは子どもっぽく見える。
 欧米の女の子たちは、やや大人な風貌を持つバービーを手にし、日本の女の子たちは、子どもの顔をしたかわいい風貌のリカちゃん人形を手にする。小さい頃から、異なる容貌の人形をかわいがることは、それぞれの好みを決定する重要な要因かもしれない。

 「かわいい」は、日本が発信するサブカルチャーのひとつだ。キティちゃんといったかわいいもので溢れるメディアや商品は、日本特有といえる。「かわいい」が日本の文化として根付いたところがあるのも、そういった背景があるのかもしれない。

 「かわいい」の他にも、「大きな目」というのも、日本人特有ともいえるだろう。外国人との顔に対する好みの感覚の違いを見ていくというのもおもしろい。他にも、人の顔を覚えるためのノウハウや良い印象のつくり方など、顔にまつわるさまざまトピックを読むことができる一冊だ。
(新刊JP編集部)