器具なしでもできるトレーニング

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 秋らしく過ごしやすい時期となりましたが、皆さん体調など崩さず元気に過ごしていますか。この時期は、台風や大雨の影響などで週末ごとの試合予定が順延になるケースも増えていることと思います。試合日だけではなく練習日においても、雨によってグランドでの練習ができなくなり、空いている教室やトレーニングルームなどでフィジカルトレーニングを行うこともあるのではないでしょうか。今回はこうした室内で行うフィジカルトレーニングの考え方や工夫などについてお話をしたいと思います。

器具なしでもトレーニングはできる

 ダンベルなどのトレーニング器具やマシンなどを使ったものを一般的に「ウエイトトレーニング」と呼びますが、体を鍛える・強化するためのトレーニングはこの限りではありません。自分の体一つでいくらでも体力要素を鍛えることは可能です。自分の体を使ったトレーニングを「自重トレーニング」と呼びますが、自分の体を支える、バランス感覚を養う、敏捷性を高めるといったことは器具なしでも行うことができます。

 まずは自分の体を姿勢良く保ち、効率のいいフォームでプレーできるようにするための土台作りを行うようにしましょう。たとえば足を前に一歩踏み出すランジ動作を、できれば鏡を見ながら行い、左右ともにバランスを崩さずに行えるかといったことをチェックするだけでも、下半身強化・バランス改善につながります。

負荷を段階的にかける

段差などを利用すると負荷を増やすことができる

 自重トレーニングに段階的に負荷をかける方法の一つとして傾斜を利用することが挙げられます。一番わかりやすいのは坂道を使ったもの。同じランジ動作を行うにしても、平らな面で動作を繰り返すよりも傾斜のあるところで行うとより下肢や体幹に負荷が加わります。上り下りによっても体に与える刺激は変わりますが、下り坂は膝や足首など荷重関節(体重を支える関節)に負担がかかりやすいので、運動量を調整しながら行うようにしましょう。

 また段差を利用することも負荷をかけることに役立ちます。階段のステップ幅を活かしてランジ動作をする、つま先立ちでふくらはぎの筋肉を鍛える、片足で一段ずつ上がるといったように、トレーニングのエクササイズはいろいろと考えられますね。ジャンプ動作を繰り返すと瞬発力の養成にもなります。段差を利用する場合にはしっかり足元を見ながら、踏み外してケガをすることにないように気をつけましょう。

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[page_break:いつもと違う動きを取り入れる / さらに負荷をかけてトレーニングをするには]いつもと違う動きを取り入れる

自分の体を支え、自在に動くためのトレーニングを行おう

 私たちはいつも前を向いて歩いていますが、例えば後ろ向きに歩いてみるとどうでしょうか。いつも使っている筋肉が逆の方向に作用するため、いつもはあまり意識しない筋肉を、意識して使わなければならなくなります。結果、太ももの裏側のハムストリングスやお尻の筋肉などをより多く動員して体を動かすことになります。歩くことが楽に出来るようになれば、傾斜で少し負荷をつけたり、走って加速することによってさらに体の後ろ側の筋肉に刺激を与えることが可能です。

 後ろ向きに走る場合は、十分なスペースを確認した上で転倒に注意して行うようにしましょう。逆立ちなども普段行わない動作であり、手関節や肩関節が一時的に荷重関節として体を支えることになるため、筋力やバランス能力、関節の支持能力などの向上が期待できます。

さらに負荷をかけてトレーニングをするには

 自重トレーニングがバランスを崩すことなく行えるようになると、さらに負荷をかけてより体力レベルを向上させたいところです。このような場合は、背丈や体重が同程度の選手とペアを組むことも、器具を使わずに行うことの出来るトレーニング方法です。相手の体重を負荷としておぶった状態でスクワット動作やランジ動作を行ったり、相手に適切な負荷をかけてもらっての徒手抵抗トレーニングなどが挙げられます。

 また敏捷性を高めるエクササイズとしては相手の動作を同じように真似して動く、ミラードリルなどもオススメです。あらかじめ先攻・後攻を決めておき、自分が主導で動く選手と、それをミラーのように真似する選手を決めて行います。切り返しやストップ動作、ジャンプやランニングなどさまざまな要素が求められるため、短い時間(30秒程度)でもかなりの運動量が期待できます。ウォームアップなどに行っても良いですね。

 フィジカルトレーニングは器具やマシン、トレーニング施設がない環境でも工夫次第で十分に行うことが出来ます。スペースをとらなくてもできるエクササイズもたくさんありますので、チームや個人でぜひ取り入れてみてくださいね。

【器具なしでもできるトレーニング】・自体重を使った「自重トレーニング」は体力要素を向上させる・段階的に負荷をかけるには傾斜や段差を利用しよう・いつもと違う動作は、普段あまり使わない筋肉を刺激する・より負荷をかけたいときには背丈・体重が同程度の選手とペアを組む・向かい合って行うミラードリルは切り返し・ストップ等、敏捷性を鍛える

(文=西村 典子)

次回コラム公開は9月30日を予定しております。

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